「あのコに自分のダメなところを正してもらいたい」山里亮太にとっての妄想とは?:あのコの夢を見たんです。

公開: 更新: テレ東プラス

「自分の妄想がこんなにたくさんの人を動かしてしまった。すごいことになってしまった!」。原作者であり、ドラマの脚本監修も務める山里亮太南海キャンディーズ)も驚きを隠せないドラマ24 第60 弾特別企画「あのコの夢を見たんです。」(毎週金曜深夜0時12分放送)が、テレビ東京系にて10月2日(金)よりスタートする。

山里が実在する人気女優やモデル、アイドルたちのイメージから妄想によって生み出した物語をドラマ化。山里役を仲野太賀、ヒロイン役を中条あやみ芳根京子飯豊まりえ山本舞香池田エライザ、など名だたる人気女性陣が本人役を演じることで話題沸騰となっている。

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今回は山里さんを直撃! 物語を書くことによって培われた妄想力や青春時代の切ない思い出、「みなさんがなぜ引き受けてくれたのかわからない」と驚喜するドラマについてたっぷり話をうかがった。

妄想とは前向きな逃げ技

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――ご自身の妄想短編小説が映像化されますが、山里さんにとって、妄想とはどういうものですか?

「自分の中だけでできる一番お得な遊び、罪悪感のない現実逃避というか前向きな逃げ技ですかね。

誰かに嫌なことを言われた時、恨み節を口にしたり、"こう思われてるんだ"と自己否定したりしている時間が長くなればなるほど、その嫌な人に時間を奪われていることになるじゃないですか。そういうウジウジしている時間を終わらせるために、7~8年前からノートに妄想を1日1個、書き殴り始めたんです。1個大体2~3行くらい、長い時は1ページに及ぶこともありましたけど、書いていくうちに雑誌『B.L.T.』さんからお声がけいただいて連載することになって。それが本になって、ドラマ化されたというところですね」

――妄想のアイデアは、どこから湧いてくるんですか。

「妄想の相手は女優さんだったり、アスリートだったり、偶然テレビに出ている人を見て書こうと思ったりと様々ですが。書く人が決まったらその人に言ってほしいセリフを考えて、"これを言ってもらうためにはどんなシチュエーションが必要なんだろう?" "自分に対する戒めを好きな人とか素敵な人に言ってもらうにはどうしたらいいんだろう?"と考えていく感じでしたね。あと、"無駄に壮大な話を書くには?"とか、"全力で小さいことにこだわったらどうなるんだろう?"とかテーマを決めて膨らませていってました」

――ノートに書く以前から、妄想することはありましたか?

「小さい頃から妄想は結構してたと思います。記憶にあるのは、学校帰りに先生から傘を持って帰りなさと言われた時に、『ガンダムが迎えに来てるから傘はいらない』と言い返したこと。先生が『どこにガンダムを止めてるの?』って聞いても、『どうやってガンダムを手に入れたんだ?』って聞いても、僕がずーっとスラスラと嘘をつくから心配だって、親が呼び出されたことがあったんですよ」

――幼い頃からそんな壮大な妄想をされていたとは(笑)。ドラマの中、特に青春もののエピソードが描かれている時、物語の中にいる山里さんはナイーブで繊細で気弱な部分が見える造形が多い印象ですが、ご自身を書く上で意識していたことはありましたか?

「なんだろう? 自分が自分に思うダメなところを全部出しているような気がしますね。妄想の中でそういうダメなところをヒロインに正してもらったり、肯定してもらう。だから、強い自分っていうのは出てこないんじゃないですかね」

妄想小説は叶わなかった青春時代の想い!?

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――大学時代、割と華やかな友人関係の渦中にいたとうかがったことがあります。そんな経験をしながらも、女性に自分自身を正してもらうような、守ってもらうような物語を描くのはなぜですか。

「大学では学生寮に入っていたので、女の子とスノボに行ったり華やかな生活が強制的にできていたんです。それまでもいわゆる一軍と呼ばれるところに身を置くことはあったんですが、小学生の頃はめちゃくちゃ足の速い友達がいたから女の子に話しかけてもらえていたし、中学生の時はバスケ部だったから女子バスケ部の子が話しかけてくれていて、という感じで。いずれも人気者の近くにいたから強制的に体験させてもらっていただけで、僕が輪の真ん中にいたわけではなかった。なりきれてない偽りの一軍だと思っていたので、自分を底辺のほうに置いてしまう物語を書いてしまうのかもしれないですね」

―― 一軍になりきれなかった青春時代、印象に残っているエピソードはありますか?

「高校生の頃、好きだった子が圧倒的なマドンナで。ほかの学科の子が休み時間に見に来るくらいキレイで、分け隔てなく僕らにもしゃべってくれる性格のいい子だったんです。

当時、薬剤師になりたかったので理系に進まなければいけなかったんですが、彼女は文IIに行くと聞いて。理系と文系では修学旅行の日程がずれるんですよ。だから理系を捨てて文Iを選んだんですけど......結果、人数調整で彼女のいる文IIは理系と同じ日程になっちゃって。

修学旅行で告白しようと思ってたのにできなくなったので、ある夜、彼女の家まで行って呼び出したんです。ドリカムが好きな子だったので『未来予想図II』の歌詞にある"ア・イ・シ・テ・ル"のサインを原付バイクのブレーキランプでやろうと思って。そしたら、うちの兄ちゃんが勝手にパットをきつく締めてて。いつもの感覚でキュッてブレーキを踏んだらコケて事故っちゃったんです」

――それは大変(笑)。

「彼女にしてみれば、わけがわからないですよね。呼び出されて目の前を通り過ぎていった僕が事故ったんですから(笑)。結局、入院したんですけど、お見舞いに来た彼女から修学旅行でサッカー部のエースから告白されて付き合ってることを知らされました。まぁ、僕が告白しても絶対に無理だとはわかってたんですけどね」

――無理だとわかっていながらの告白。その勇気ってどこから出てきたんですか?

「告白しなきゃ後悔するなって。優しい女の子だったので、トドメを刺されないと諦められない。ちゃんと振られて、脳みそから"彼女が好きだ"という気持ちを全部出さないと、このあとの高校生活をゾンビみたいに生きることになるなと思ったんです。けどまぁ、文系に進んだから薬剤師の道を諦めたので、あのままスムーズに理系へ進んでいたらひょっとしたら今の僕はなかったのかなと思いますね」

傷つくことは笑いに必要な武器となる

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――山里さんは傷つくことを恐れないというか、表に出しにくい"傷ついた思い"をちゃんと言葉に出して笑いに変えられていますよね。

「妄想を書くのと同じですね。傷ついていることを被害者としてずっと抱えていると、ほかの楽しいことができなくなるじゃないですか。お笑い芸人の何が素晴らしいかって、傷ついたことが武器になる。これは先輩方が脈々と作ってきた世界で、傷ついたことは笑いに必要な武器を手にしたと強引にでも切り替えてさらけ出すことによって、傷を治している感覚なんです。

それに、マイナスなことも見せ方によってはショーになるんですよ。友達であるプロレスラーの男色ディーノとスーパー・ササダンゴ・マシンが『エンタメを作る上で、傷つくことが実はかっこいい武器になるんだよ』と教えてきたので、傷つくことに対してもネガティブな感情が少ないのかもしれないですね」

――女性陣が自分自身を演じるのも今作の楽しみですが、ネガティブな気持ちを抱えやすい人には山里さんを演じる仲野さんの自分自身を投影しながら観ていただいてもいいのかなと感じました。

「物語の僕は、僕自身というよりも人見知りだとかみんなが思う自分自身の嫌なポイントの集合体というか、ネガティブな妖精みたいな存在なのかもしれない。そんな山里亮太という役に、自らを投影してみたら名だたる女優さんたちが目の前にいるという夢のような体験ができるのが、このドラマなのかもしれないですね」

――ご自身の役を仲野さんが演じること、そして豪華女性陣が自分自身を演じることについてはどんなふうに思われていますか?

「超実力派俳優の太賀さんに演じていただけるなんて、めちゃくちゃありがたいです。モノマネとは違うので、あえて僕に寄せることはしないようにしているとおっしゃっていました。あと、オムニバス形式の物語なのでその都度、出てくる主人公を演じないといけないのが大変だったと。大変なことでもやり遂げられる方ですし、太賀さんが引き受けてくださって本当に感謝しかないですね。

女優さんたちにも感謝でいっぱいです。元々、連載や小説のときは妄想された物語を一方的に送りつけられるという半ば怒られても仕方がないようなことをやってきたのに返信というかたちで感想をいただけただけでなく、ドラマに本人役で出ることを了承してくれた。もし出てくださったみなさんとお会いする機会があれば聞きたいですね、『なんで引き受けてくれたんですか?』って。本当にすごいことです!

僕の描いた妄想を監督さん、スタッフさん、脚本家さん、演者さん、それぞれの才能を研ぎ澄ませて映像化してくださっていることに感謝しかないです。才能ある方々が磨き上げてくださったおかげで、僕の妄想がより素晴らしいことになっていて本当にありがたいなという気持ちでいっぱいです」

原作のエピソードに加え、ドラマのための新作書き下ろしも! ヒロイン役が決まってから執筆したため「より緊張した」と山里さん。妄想から生まれた物語......これを見ればあなたの妄想もスパークするかも!?

(取材・文/高本亜紀)

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【プロフィール】
山里亮太(やまさと・りょうた)
1977年4月14日生まれ。千葉県出身。AB型。コンビ、ピン芸人を経て、2003年、"しずちゃん"こと山崎静代と南海キャンディーズを結成、翌年の2004年「M-1グランプリ」で一躍人気者に。「スッキリ」(日本テレビ系)の天の声「土曜はナニする!?」(関西テレビ/フジテレビ系)、「東大王」(TBS系)、「ねほりんぱほりん」(NHK Eテレ)、10月からレギュラー化の「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)などレギュラー番組多数。2020年「ABCお笑いグランプリ」の司会を務めた。「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)をはじめラジオでも熱心なリスナーを持つ。現在ソロライブ「山里亮太の140」を全国にて公演中。著書に、本作の原作「あのコの夢を見たんです。」(株式会社東京ニュース通信社)、「天才はあきらめた 」(朝日文庫)など。

ドラマ24 第60弾特別企画「あのコの夢を見たんです。」(毎週金曜深夜0時12分放送)は、テレビ東京系にて10月2日(金)スタート。(10月9日(金)放送の第2話は、放送日時が変更となる場合があります)
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分より放送。

第1話「追いかけたいの!」のヒロインは、中条あやみ。

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学校一のモテ女子・中条あやみは、次から次へと来る告白の嵐に、一度でいいから"追いかけられる恋"より"追いかける恋"をしたいと思っていた。そんな矢先、失恋を体験できるというアプリ『振られ屋』から連絡が来る。最初は疑心暗鬼だったあやみだが興味本位で登録してみると、次第に様々なシチュエーションで失恋を体験できるこのアプリにのめり込んでいく。

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【出演者】
山里亮太...仲野太賀
中条あやみ...中条あやみ
加藤諒...加藤諒

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