ナゼむせる? 誤嚥防止には舌の筋トレ「パ・タ・カ・ラ」が効果的!:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

医師や病院の選び方のコツ、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える、知的エンターテイメントバラエティ「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)。番組では2006年にレギュラー放送開始以来、第一線で活躍する医師たちがテーマに沿った最新情報をわかりやすく解説しています。

さて、今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、最近、食事をするとむせやすくなったという50代の方からのお悩みです。さっそく同番組のレギュラー・中山久德医師に相談してみましょう!

からいものの食べすぎと早食いには気をつけて

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Q:50代男性です。このごろ食べ物が気管に入ってむせやすくなって困っています。なるべくゆっくり食べるように気をつけてはいるのですが、大好きな激辛系の麺類やごはんものなどを食べると必ずといっていいほどむせてしまいます。40代まではそんなことはなかったので、これも老化の一種なのでしょうか。改善する方法や治療の必要性などがあれば教えてください。

── 先生、なぜ食事中に急にむせてしまうのですか。加齢に伴う現象なのでしょうか?

「食事をしていてむせるというともっと高齢の方を想像しますよね。我々は普段、何も意識せずに空気を吸い、食べ物を飲み込んでいますが、じつは絶妙な体の動きで両方の動作を行っています。食べ物や飲み物と空気は途中まで通り道が同じで、食べ物などは口から入って食道を通って胃へ、空気は鼻や口から吸って気管を通って肺に行きます。

人は四六時中何かを食べているわけではないので、通常は呼吸するために気道が使われているのですが、食べ物が入ってくると喉頭という部分が閉じて気管に入る道をシャットアウトし、食べ物を食道へ振り分けます。ちょうどターミナル駅などで見かける電車の線路を切り替える分岐器のような仕組みです。

それがうまくできなくなり、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうことを「誤嚥」といい、誤嚥したものを元の通り道に戻そうとする反射がいわゆる "むせ" です。肺のほうまで異物が行かないように激しく咳き込んで外に出そうとするわけですね。

この相談者の場合は食べ物が気管に入ってむせていますが、もう少し年齢が高くなるとむせるという反射自体も弱まってきます。すると、食べ物や飲み物が気管に入っているのにそれに慣れてしまう、あるいは普段から唾液がダラダラと気管のほうに流れ込んでしまうことで、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるんですね。誤嚥性肺炎というのは高齢者が命を落とす原因となる大きな病気の一つです」。

── からい食べ物が好きというのもむせに関係がありますか。

「激辛系の麺類などを食べたときによくむせるのであれば、その刺激でむせやすくなっているのでしょう。普通の人でもからいものを食べればむせ返りますが、大好きなものであっても体に合わないということも考えられますよ(笑)。

食べないと命に関わるものではないので、あまりむせるようであれば少し控えてもらったほうがいいかもしれません。

50代男性ということですから、大食いであったり、よく噛んでいなかったり、からいものの食べすぎだったりすることも少なからず影響しているように思います」。

まずは食事の前に舌の筋トレを10回!

doctor_20200909_02.jpg画像素材:PIXTA

── 食事のときにむせやすい条件というのはあるのですか。

「相談内容にもある早食いのほかに、噛まずに飲み込むことでむせやすくなります。話しながらの食事も会話で空気が入ってくるタイミングで飲み込むことになるので、やはりむせやすくなりますね。

食べ物がうまく飲み込めるのは、じつは無意識のうちに舌が巧みな動きをしているからです。噛んだ食物を唾液とうまく混ぜ合わせて塊にし、喉の奥のほうに押しやって飲み込ませる、ということをしているのです。

この舌の動きが悪くなってくると普通にしていることが思うようにできなくなり、飲み込みがうまくいかずにむせることがあります。とくに歳を重ねるとそういった機能低下が起きやすくなるのですが、牛タンを思い出してみるとわかるように、舌は筋肉なんですね。つまり筋トレができるのです。むせが気になってきたということであれば、舌を鍛えるトレーニングを開始してみてくだい」。

── 舌はどうやって鍛えたらいいのですか。

「いろいろやり方はあるのですが、私が患者さんに勧めているのは舌や口の筋肉を鍛える『パタカラ体操』です。"パー・ター・カー・ラー" と伸ばさずに、"パッ・タッ・カッ・ラッ" と1音1音はっきりと発音します。これを繰り返します。

パ・タ・カ・ラという言葉には意味があって、舌や口の動きがそれぞれ全部違うんですね。"パ" は口を閉ざしてから発声する音。"タ" は舌が上顎に当たって発声します。"カ" は舌の根元が強まって、喉が締まります。"ラ" は舌の先が前歯の裏に当たり、舌を丸める動きになります。

この4つの動きで飲み込む力を回復させて誤嚥を予防するのが目的なので、1音ずつはっきりと大きめの声で、日ごろから訓練することが大事です。食事をとるときにちょくちょくむせるという人は、食事前にパタカラを何回か唱えてから食事をするといいでしょう。

筋トレといってもスクワットのように疲れるものではないので、むせ具合にもよりますが、10回くらいをこまめに行うのがおすすめです。しっかり声を出して舌の体操をして、よく噛んで食べるようにしましょう」。

── 中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

※この記事は中山久徳医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った中山先生も出演する主治医が見つかる診療所SP【新型コロナ重症化を防ぐコレステロール&認知症】(9月10日木曜夜7時58分)。

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