新型コロナで生まれ変わるニッポンの旅...2.5キロの「着るロボット」が新たな旅を提案:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。8月25日(火)の放送では、withコロナ時代の到来とともに変化する旅行業界を特集。最新テクノロジーを使い、「新しい旅」を提案する企業を追う。

階段や砂地などで、足の負担を最大3割軽減

観光バスの募集人数は通常の半分以下、旅先のお店の接客係はフェイスガードを着用...。新型コロナは旅行のあり方を一変させた。

感染防止のため3密の徹底やソーシャルディスタンス確保が求められる中、奈良市のベンチャー企業「ATOUN」は、自社で開発したパワードウェアを応用し、"新たな旅"をつくり出そうとしていた。

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重い荷物の積み下ろしを支援し、腰の負担を軽くするパワードウェアは、建設や物流の現場で活躍している。藤本弘道社長は、「各都道府県には登り坂が続くところがある。歩行を助けるための装置がないか」と思い立ち、体の不自由な人やお年寄りはもちろん、誰でも気軽に旅を楽しむための「着るロボット」を考えた。

その名も「HIMICO(ヒミコ)」。重量は2.5キロで、リュックのように背負う小さな本体には、歩幅や歩く速さを分析するコンピューターが搭載されている。本体から伸びるワイヤーを膝につけ、足の動きをアシスト、階段や砂地などで、足の負担を最大3割軽減するという。

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4月上旬、桜の名所として知られる奈良・吉野町で「HIMICO」の実証実験が始まった。協力したのは50代以上の3人の女性で、花見をしながら長い山道を進む。急な階段も難なく上り、女性のひとりは「いつもだったら途中で止まる。(普段なら)膝が笑うけど、なりませんでした」と話した。

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藤本さんは「坂道や悪路が続くところでパワードウェアの効果が出ると思う。それが全て旅行資源になり得る」と、手応えを口にした。

そんな「ATOUN」のロボット技術に目をつけた企業がある。近畿日本ツーリストなどを傘下に持つ「KNT-CTホールディングス」(東京・新宿区)は、新型コロナの影響で、今年4〜6月期の最終赤字が約100億円。グループ事業戦略本部の安岡宗秀さんは新たなニーズを模索し、歩くことに自信を失くした人にもう一度旅を楽しんでもらおうと、「ATOUN」と連携した。

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藤本さんと安岡さんは、7月上旬、四国を代表する観光地・金刀比羅宮(ことひらぐう)がある香川・琴平町に向かう。通称「こんぴらさん」の階段は本宮まで785段。参拝客を乗せて石段を上る「石段かご」は、今年1月、担ぎ手の高齢化で廃業しており、新型コロナの影響で琴平町の観光客は5割減に(※2020年7月時点)。藤本さんと安岡さんは、歩行ロボット「HIMICO」を売り込むチャンスと捉え、琴平町の重鎮たちにプレゼンを開始した。

しかし反応は薄い。琴平町の片岡英樹町長は、「いきなりここで話を聞いても『うさんくさい話をもってきたな』と思う...。ごめんなさいね」と苦笑する。

「それならば!」と試してもらうことになり、体重約100キロの片岡町長が「HIMICO」を身につけて向かったのは「こんぴらさん」の階段。果たして、プレゼンの結果はいかに──。

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「ピンチだな」羽田空港で世界初の自動運転

老若男女コンディションを問わず、いろいろな人が移動を自由に楽しくできたら──。そんな理念を掲げ、電動車いすを開発・販売する会社がある。2012年創業のベンチャー企業「WHILL(ウィル)」は、これまで12の国と地域で電動車いすを販売してきた。

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同社のあるモデルは、1台45万円で最高時速6キロ。免許は不要で、「WHILL」システム開発本部の白井一充本部長は、「自転車や車ではない近距離のモビリティー(移動手段)として、新しい乗り物のカテゴリーを生み出していきたい」と話す。

前輪は24個の小さなタイヤを組み合わせてつくられ、それぞれが回転するので小回りが利き、最大5センチの段差を乗り越えることができるという。このパーソナルモビリティーが快適な旅を手助けする乗り物として、ある場所で進化を遂げようとしていた。

東京・羽田空港。全長800メートルの国内線第一ターミナルでの移動に同社の電動車いすを使う話が持ち上がったのだ。

計画は、保安検査場の脇にある出発地点から搭乗ゲートまで、客が電動車いすを操作して向かい、帰りは無人のまま自動運転で出発地点まで戻るというもの。繁忙期は車いすをカウンターまで戻す時間が惜しく、自動で戻るメリットは大きい。空港で自動運転が実用化できれば世界初の快挙となる。

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だが、去年11月に行われた初の運用実験は散々なものだった。車いすには空港の地図情報を登録し、センサーで現在地を判断。カメラが人や障害物を認識して自動停止するはずだった。ところが、混雑する羽田空港で車いすはルート判断を誤り、歩行者がいる方に向かってしまう。「全然ダメ」「結構ピンチだな」、実験に立ち会った白井本部長は肩を落とす。

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「WHILL」の研究施設では、思い悩む白井さんの姿があった。羽田空港への導入をかけたテストが迫る中、エンジニアと試行錯誤を重ね、完璧な自動運転を仕上げていく。

その矢先、羽田空港に衝撃が走った。新型コロナの影響でほとんどの便が欠航。まるで空港がゴーストタウンのように変わってしまったのだ。そして羽田空港から、開発の大きな変更依頼が。それは、コロナ時代の旅に対応する技術だった──。

7月に政府の観光支援策「Go toトラベル」事業が始まるも、新型コロナの感染は収束する気配を見せない。新しい生活様式と向き合い変わりゆく旅行業界を、今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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