骨折しやすい人は注意! 糖尿病や甲状腺の病気との気になる関係:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

テレ東の長寿番組「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、今話題の健康法から、いざというときの医師・病院選びのコツまで、医療に関するさまざまな情報をお届けする知的エンターテイメントバラエティ。

さて、今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」には、繰り返し起こす骨折と骨粗鬆症の関係について疑問が寄せられました。早速、同番組レギュラー・中山久德医師にお聞きしましょう!

骨密度が高くても、骨質が劣化していると骨折を起こしやすい

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Q:30代男性です。趣味でフットサルをやっているのですが、1年に2回くらい骨折します。しっかり準備体操をしてストレッチもしているはずなのに、いつも骨折するのは利き足の右足です。骨粗鬆症を疑ったのですが、検査の結果は異常なしでした。それでもこれだけ頻繁に骨折するということは、将来的に骨粗鬆症になるリスクが高いのではと心配です。その可能性はあるでしょうか?

── 先生、年に2回の骨折は多くないですか。

「実は私も昨年、テーブルの脚に足の指をぶつけて骨折したのですが、足の指の骨のような小さな骨に非常に強い力がかかってしまったら、男性でも骨折することはあります。ただ30代の男性で、しかもシューズを履いて蹴り込んだり、誰かと接触したりして、足の指よりももっと中心に近い太い骨を年に2回も骨折するとなると、ただごとではない感じがしますね。

同じところばかり骨折するのであれば、その部分が十分に治りきらないうちに、また強い力が加わってしまったことが考えられます。通常、骨はシーネでしばらく固定しておけばつくのですが、痛くないからと、途中で固定をやめてしまうとぐらついた状態(偽関節)のままになり、そこに力がかかればその部分が再び折れやすくなります。もし、そうではなく完治した後で骨折を繰り返すのだとすれば、原因をきちんと調べておいたほうがよさそうですね」。

── 検査では骨粗鬆症は否定されたようです。

「骨粗鬆症というのは、骨の強度が低下して骨折しやすくなる疾患です。骨の強さ(骨強度)を決める要因には2つあって、よく知られている "骨密度" と、骨密度以外のものを全部ひっくるめた "骨質" があります。おおよそ骨の強さは7割を骨密度が規定していて、残り3割くらいを骨質が決めているといわれています。

つまり極端なことをいうと、骨密度が高い人であっても、骨質が非常に衰えている人は骨折を起こしやすいということです。この相談者のいう骨粗鬆症の検査が骨密度の測定を指すのであれば、骨密度は保たれている一方で骨を弱くする何らかの要因がほかにあり、骨強度全体が落ちている可能性があります。

ちなみに、骨質にはいろいろな概念があるのですが、最近よくいわれているものにコラーゲン架橋があります。骨を鉄筋コンクリート構造の建物に置き換えて説明すると、コラーゲン(タンパク質)が鉄骨、ミネラル(カルシウム)がコンクリート、コラーゲン架橋は梁(はり)に相当する部分です。

梁があることで鉄骨同士が強固に結びつき、しなやかさで丈夫な構造になるのですが、その梁が軟弱であれば鉄骨同士の連結が弱まり、グラグラになって倒壊してしまいます。だから骨質の劣化によって骨はもろくなるんですね」。

── 骨密度はどのような検査で調べるのですか。

「骨密度は体のどこで測るかによって検査方法に違いがあります。いちばん全身の骨折を起こすリスクを調べるのに適しているといわれているのが、腰骨と足の付け根(大腿骨近位部)です。

腰椎と大腿骨近位部の骨密度を調べて骨密度が低かった場合には、骨折した部位に関係なく全身のどこかで骨折を起こしやすいということになります。ただし、この骨密度測定装置は当院のような骨粗鬆症を多く診ているクリニックや、比較的大きな病院でないとなかったりします。

簡易的な測定法として、手のレントゲン撮影やかかとの超音波検査などで骨密度と似たものを測定し、解析する方法もあります。測定部位や測定法によっては、その検査だけではわからない骨強度の低下が隠れていることも考えられます。」

── 相談者の場合は足の骨折ですから、かかとでの検査をされているかもしれませんね。

「かかとでの測定は、足を機械に入れるだけなので非常に簡便に行えます。ただ、それは骨密度に似通った指標を見るだけのものであって、厳密には骨粗鬆症の診断には使えないのです。

かかとで測った骨の評価指標の値が低い場合には、しっかりと骨粗鬆症の精密検査を受けたほうがいいでしょう。数値が高いからたぶん大丈夫だといわれても、実際に骨折を起こしているのであれば、もう少し掘り下げて検査を受けておくことをおすすめします。

でも、そんなにたびたび骨折しているとなると、気になるのは先ほどもいったように骨密度以外の要因があるのではないかということですね」。

糖尿病などが原因で骨折しやすくなることも

shujii_20200708_02.jpg画像素材:PIXTA

──骨折しやすくなる病気や生活習慣などもあるのですか。

「いちばんよくいわれているのは糖尿病ですね。糖尿病の人は、骨密度は低くないかむしろ高めであったりするのに、実際には骨折することがよくあります。こうした骨折の起こしやすさは1型糖尿病の方が顕著ですが、2型糖尿病でも同様の傾向がみられます。

また、関節リウマチや腎臓の機能が落ちている人、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患の患者さんでは骨密度が低下し骨折を引き起こしやすくなります。

さらに、喫煙や過度の飲酒も骨折の頻度を高めるので、こうした生活習慣がある方は注意が必要です。

── やはり今後のために骨粗鬆症の精密検査は受け直したほうがいいでしょうか。

「通常の骨粗鬆症を考えると、一般的には女性に多く、閉経後から骨密度が低下していきます。また、男性であっても50歳ぐらいから徐々に骨がもろくなってくるんですね。30代でしかも男性だとすると、通常の骨がもろくなる経過以外の力が加わらないとそんなに脆弱になることはないはずです。

糖尿病が隠れていたり、他にも骨折をひき起こしやすくする病気が潜んでいたり、何かしら他の原因がないかを調べたほうがいいと思いますね。なんでこんなに骨折してしまうのかということを手がかりに、もっと大きな病気が見つかるかもしれませんよ」。

── 中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

※この記事は中山久徳医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った中山先生も出演する主治医が見つかる診療所【(秘)芸能人からSOS! 認知症検査に完全密着】(7月9日木曜夜7時58分)。

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