手首が痛い! 腱鞘炎? それとも関節リウマチ? まずは心当たりのある原因を探して:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

毎週木曜夜7時58分から放送の「主治医が見つかる診療所」は、皆さんが知りたい医療の疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティ。毎回、病院の選び方のコツや今すぐできる健康法などを、最新情報を交えて発信しています!

今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」では、同番組のレギュラー・中山久德医師に、慢性的に続く手首の痛みは腱鞘炎? もしかしたら関節リウマチ?という視聴者の疑問に答えていただきました。

パソコン作業や家事が腱鞘炎の原因になることも

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Q:20代男性です。小学校から高校までずっと吹奏楽部でチューバを演奏していました。当時は慢性的に手首が痛く、腱鞘炎(けんしょうえん)に悩まされる日々でした。今はほとんど演奏する機会はないのですが、それでもいまだに手首あたりがだるく、痛みを感じることがあります。

そこで腱鞘炎の治療方法を検索していたら「関節リウマチ」というワードが出てきました。腱鞘炎と関節リウマチの症状の違いはどんなところにあるのか、教えてください。

―― 先生、腱鞘炎とはどんな病気ですか。

「私たちの体は骨と骨の境目である関節が動くようにできていますが、骨自体が動いているわけではありません。筋肉が伸びたり縮んだりする動きを骨に伝えて、関節が曲がったり伸びたりするのです。腱は、この筋肉と骨を結びつけているひものような組織。さらに腱の周りを包むトンネルのような組織を腱鞘といいます。

腱鞘炎とは、まさにこの腱鞘が炎症を起こしている状態。原因の多くは関節の使いすぎなどによる外的な刺激が原因となって炎症を生じます。通常、腱鞘の中は滑りが良くて、筋肉の収縮・弛緩に合わせて腱がスムーズに動くのですが、ある関節を使い過ぎるとそこに繰り返し強い刺激が加わってしまうんですね。

なかでも有名なのが、"ばね指" と呼ばれる指に起こる腱鞘炎。指を伸ばしたり曲げたりする動きがスムーズにいかずに、突っ張って急に伸びる、急に曲がるという動きになります。これは傷んだ腱や腱鞘が炎症を起こし、腫れてしまうことでトンネル(腱鞘)の通りが悪くなり、腱が引っかかっているうちはなかなか通らない、通らない......そのうち引っかかりがとれると、あ〜通った!...という感じになるため。やはり背景には同じ指関節の使い過ぎがあります。

また腱鞘炎は女性のほうが起こりやすい病気です。女性は筋肉の量が男性に比べて少ないので、曲げ伸ばしのときに腱にかかる負担が大きく、腱鞘炎を起こしやすいといわれています。家事で同じような動きをすることが多いこと、さらに女性ホルモンとの関係も疑われています」。

―― この相談者の場合、腱鞘炎になった原因はチューバの演奏にあるようですが、腱鞘炎はそんなに長く痛みや違和感が続いたりするのですか?

「そうですね。この方は学生時代にずっとチューバを吹き続けていて、手や手首を使い過ぎて腱鞘炎を起こしていたのかもしれません。ただ、今は演奏する機会はあまりないようですよね。昔の楽器による負荷だけでなく、そのあとも手関節に同じような負荷がずっと加わって、今の痛みを起こしているのではないかと思います。

というのも、腱鞘炎は通常その原因となる動きを制限すればよくなるからです。この相談者の場合、原因がチューバの演奏にあるのであれば治っていてもおかしくありません。それが治まっていないのなら他に同じような腱への負荷があると考えたほうがいいでしょう。何かしら心当たりがあるのではないでしょうか?

原因が日常的に繰り返される動きであることはよくあることです。たとえば、仕事で何時間もパソコンのキーボードを打っているなど。それが引き金になって昔の腱鞘炎をぶり返してしまっているのかもしれませんね」。

関節が耳たぶよりやや硬い程度に腫れていたら関節リウマチを疑って

shujii_20200520_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 長く続く痛みは関節リウマチの可能性もあるのでしょうか。

「関節リウマチも関節の炎症なのですが、こちらは内的な炎症で、背景には免疫の異常があります。よく動かしたから起こるということでもありません。腱鞘炎と違って、放置しておくと関節が壊れて変形していってしまいますので積極的な治療が必要となります。

一般的には30〜50代で発症することが多く、関節リウマチの患者さんの割合を男女比でみると、おおよそ女性は男性の4〜5倍。圧倒的に女性に多い病気です。もちろん男性にもいますが、年齢を考えても20代というのは関節リウマチとしては若いですよね。そう積極的に関節リウマチを疑う必要はないでしょう。

また、関節リウマチには関節の腫れ方に特徴があります。骨ばって腫れるのではなく、耳たぶよりもやや硬いくらいにムクムクっと腫れてくる。心配なようならば、今痛いところを触ってみてください。そのような比較的柔らかい腫れがある場合には医療機関を受診して免疫異常がないかを調べると安心ですよ」。

―― 手首の痛みが腱鞘炎なのかどうかを自分で見分ける方法はありますか。

「この方も恐らくそうだと思うのですが、手関節で多いのが手の親指側に起こす腱鞘炎です。ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)というのですが、それかどうかを自分で調べる簡単な方法があります。親指を中にして4本指で隠すように握り、手を小指側に傾けます。これで親指の付け根から強い痛みが走るようならドケルバン病である可能性が高いです。

こうした検査法を試してみて、たしかに痛みがあるということなら、普段の生活で同じ部位に負荷がかかるような動きをしてないか、見直してみるとよいでしょう。心当たりがあればそれを控える、仕事でやめることができないのであれば休み休み作業をするよう心がけてください。

痛み止めを服用する、湿布を貼る、あるいは部位を守るためにテーピングをするというのも有効です。

いったん原因となる動きをやめても、同じようなところに負荷のかかる動きが繰り返されることで、他の部位より腱鞘炎が起きやすくなるということは十分に考えられます。腱鞘炎を慢性化させないようにしてくださいね」。

―― 中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

※この記事は中山久徳医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った中山先生も出演する主治医が見つかる診療所【コロナの疑問!徹底解明&主治医からの一斉検定SP】(5月21日木曜夜7時58分)。

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