桜や金魚、お殿様に献上した「本練羊羹」まで...奥深い羊羹の魅力

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

小豆から2日がかりで羊羹を自作するハンガリー人女性

スタッフが今年1月に向かったのは、ハンガリー南部。2000年以上前のローマ時代から続く、古都・ペーチに、ニッポンのあるものを愛してやまない女性が。ペーチ大学で広報を担当するマリアンさん(36歳)を訪ねると、にこやかに出迎えてくれました。

ニッポンのどんなものが好きなのか尋ねると、「準備するので待っていてください」と別室へ。30分後、着物姿のマリアンさんが現れました。「着物」かと思いきや、マリアンさんがハマっているのは、なんと「羊羹」!

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焼き菓子が一般的なハンガリーでは、羊羹のような菓子はとても珍しいそう。

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ニッポンには一度も行ったことがないマリアンさんですが、9年前から始めた茶道がきっかけで、様々なお茶菓子を手作りするように。そんな中、ご主人がパリから取り寄せた「とらや」の羊羹で、羊羹が大好きになったそうです。

羊羹を作ってくれるということで、材料を買いに行きつけのアジア食材店へ。この日は珍しく糸寒天があったので、マリアンさんは「美味しくなるわ!」と大喜び。糸寒天はハンガリーでは手に入りづらく、いつもは粉末ものを使っているとのこと。

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家に帰り、早速準備を始めます。マリアンさんが見せてくれたのは、昨日から10時間水に浸けていた小豆。なんと、夜中の2時、朝5時、そして午前中にも水を換えたのだといいます。その小豆を、灰汁を取りながら茹でていきます。

翌朝、夜中の12時半まで煮込んだ小豆はちょうどいい軟らかさに。こうして苦労して作ったあずきから「あんこ」を作り、型に流して寒天で冷やして固めたら、2日がかりでマリアンさんの羊羹が完成。

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さらにマリアンさん、たくさん手に入れた糸寒天で、もうひとつ大好きなお菓子を作ってくれました。潰したブルーベリーを溶かした寒天に混ぜ、冷やして固めたら花の形に型抜きします。そこに寒天を注ぎ、上から閉じれば、美しい「錦玉羹(きんぎょくかん)」の出来上がり。錦玉羹は、寒天に色をつけて季節を表現した、お茶に合わせて四季を楽しむニッポンならではのお菓子です。

ところが、固めていた器から取り出そうとすると、表面の層が剥がれてしまいました。

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「もっと勉強が必要です」とマリアンさん。

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「いつかニッポンで羊羹と錦玉羹の作り方を職人さんに教えてもらいたいです。その技術をハンガリーに持ち帰り、みなさんに振る舞いたい」と語るマリアンさんを、ニッポンにご招待!

憧れの名店で7種類の美しい羊羹と出会う

マリアンさんがまず向かったのは 東京にある「とらや」赤坂店。創業約500年。長きに渡り皇室の菓子御用を務めていた名店です。3階のティールーム「菓寮」で出迎えてくださったのは、店長の玉井峰子さん。

マリアンさんが「訪れることができて光栄です。私はとらやさんの羊羹と出会ったおかげで羊羹を作るようになり、こうしてニッポンに招待してもらうことができました。その感謝をどうしてもお伝えしたかったんです」と挨拶すると、玉井さんも「私たちもその話を聞いてすごく嬉しかったです」と笑顔で返し、開店前に店内を案内してくださいました。

「本当に信じられない!」と感激するマリアンさんの前に運ばれてきたのは、7種類の美しい羊羹。定番・夜の梅をはじめ、赤坂店限定・虎柄の羊羹や季節限定の華やかなものまで。

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マリアンさん、まずは、練り羊羹「夜の梅」をいただきます。

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「完璧です。絹のようになめらかでとてもおいしいです。

ここで、玉井さんがあることを教えてくれました。「菓寮」では、羊羹を八分(約2.4センチ)の厚さに切って出しているとのこと。これが美味しい食感を感じる厚みなのだそう。「たしかに食感が最高でした」とマリアンさん。すると玉井さん、「八分という単位をこれで測ることができます」と、なんと「とらや」の職人さんが使う竹尺をプレゼントしてくださいました。

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「ありがとうございます。何とお礼を言えばいいか...。ここに来られた喜びや気持ちを胸にこれから羊羹づくりに励みたいです」と感謝を伝えるマリアンさん。

全国菓子大博覧会「名誉総裁賞」に輝いた名店

独学で羊羹を作っていたマリアンさんには、「昔と変わらぬつくり方を続ける古き良き羊羹屋さんに行き、職人さんの手仕事を学びたい」という夢がありました。そこで向かったのは、福島県二本松市。会津若松と並ぶ城下町として栄えたこの町に、全国菓子大博覧会の最高賞「名誉総裁賞」に輝いた羊羹の名店があります。創業は江戸後期。200年以上愛され続ける羊羹の名店「玉嶋屋」。八代目社長・和田雅孝さん(65歳)と奥様の典子さんが出迎えてくださいました。

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「江戸時代とほとんど同じ作り方で作っています。どうぞお召し上がりください」といって出してくださった羊羹がこちら。

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かつて二本松藩のお殿様にも献上された「本練羊羹」。私たちが知る羊羹とは、少し見た目が違います。その味は...?

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「素晴らしい味です」というマリアンさんに、和田さんも顔がほころびます。「外側のシャリっとした歯触りがとてもよくて、中はすごくなめらかです。どうすればこんな風に...」初めての食感と美味しさに驚いた様子。

この食感が昔ながらの羊羹の特徴。江戸時代は羊羹を保護する方法がなかったので、表面を糖化させて中身を保護していたのだといいます。「玉嶋屋」の羊羹は、竹の皮で直に包む昔ながらのスタイル。

現在主流のアルミなどの真空パックではありませんが、糖分が空気に触れることで結晶化し、周りをコーティングすることで中はいつまでもしっとりして、風味は損なわれません。江戸時代は1年以上持つお菓子として、参勤交代のお供にも重宝されたといいます。マリアンさんは「自然の力をそのまま使って伝統を守っていらっしゃるのはとても素晴らしいことだと思います」と「玉嶋屋」の伝統に感心。果たして、味と品質で日本一の評価を受けた羊羹の秘密とは? お店の奥にある工場で、本練羊羹の製法を見せていただけることに。

大正7年に建てられた歴史ある建物の奥で、職人さんたちが羊羹を作っていました。「玉嶋屋」では昔ながらの製法にこだわり、ガスではなく薪で火を焚いています。材料も、小豆と砂糖、寒天のみ。シンプルなだけに、炊き方が重要。まず、一晩水に浸けた寒天をお湯で溶かします。「寒天はハンガリーでは手に入りにくいので、とても興味深いです」と観察するマリアンさん。この寒天が、羊羹に欠かせない弾力と透明感をもたらします。

大鍋の寒天が溶けたら、すぐに砂糖を入れます。グラニュー糖と上白糖をミックスすることで、キレのある甘みとしっとり感がバランスよく出るのだそう。砂糖が溶け、沸騰したら2人がかりで鍋を持ち上げ、ふるいでこして細かいカスを取り除きます。

ここからが羊羹作りの真髄。樹齢20年以上の楢(なら)の木を乾燥させた薪を追加し、火力を一気に上げます。グツグツと沸き立った寒天に、小豆の水分を搾り取った「呉(ご)」と呼ばれる生餡を投入。焦げつかないように、「閻魔べら」と呼ばれる巨大なへらで、11キロもの羊羹をまんべんなく練り上げます。

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マリアンさんが「こんなに強い火で炊くのですね」と驚くと、
「小豆の風味が残り、甘さがあっさり仕上がる」とご主人の雅孝さん。

「玉嶋屋」の味は、ガスより強い薪の火力なくしては作れないそう。気温や湿度によって変わる羊羹の状態を見ながら、練ること20分。釜から鍋を降ろし、工場長が、香りや見た目、手に伝わる感触を頼りに最終確認します。しっかり練ることですべてが一体となり、つやとなめらかさが生まれるのです。

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雅孝さん、マリアンさんがハンガリーに帰ってもできるようにと、羊羹の練り上げに挑戦させてくれました。

「へらを立てた状態で全体に回るように」とコツを教えていただき、早速挑戦。練り始めると、その鼻腔をくすぐる甘い香りに自然と笑みがこぼれてしまうマリアンさん。「フフフ」と何度も嬉しそうな声が出てしまいます。「香りがたまりません。羊羹の蒸気を浴びるのは最高です」と心から楽しんでいました。

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煮詰まると焦げつきやすくなるので要注意。仕上げは職人さんに手伝っていただき、今度は羊羹を型に流していきます。ここでマリアンさんは木製の型にビックリ!

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すると雅孝さん、「表面の漆が適度に水分を保持する」と教えてくださいました。「昔の日本人の知恵ですね」とマリアンさん。代々続く漆塗りの木型に羊羹を入れて冷まし、このまま一晩寝かせます。そして、固まった羊羹を型から出し、いよいよ切り分けます。

ここにも細やかな職人技がありました。ひとつ230グラムになるように切り分けていきますが、その厚みは2.2~2.3センチ。型に流した時点で羊羹の高さが微妙に違うため、0.1ミリ単位で切る厚みを微調整しないと同じ重さにならないのです。

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雅孝さんが切った羊羹を見て「切り口を見ただけで滑らかさがわかります」とマリアンさん。特別に切りたての羊羹を試食させていただきます。じっくり味わったマリアンさんは「本当に美味しくて、この一口で人生を感じます。味も口当たりも素晴らしいです。もうここに住みたいぐらい!」。

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切り分けられた羊羹は、すべて手作業で包装。殺菌効果がある竹の皮で羊羹を直接包みます。

1日に120本。ひとつひとつ心をこめて包むのが、今も変わらぬ「玉嶋屋」の精神。竹皮には適度な通気性があるので、一日経てば表面にうっすらと砂糖の結晶ができます。

作業が一段落したところで、工場の裏にある休憩所で職人さんたちとお茶休憩。ドライフルーツやナッツをのせたお酒に合う羊羹や、カステラの間に羊羹を挟んだ「シベリア」などをいただき、職人さんと楽しい時間を過ごさせていただきました。

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再び工場に戻り、「玉嶋屋」から全国に広まった人気の羊羹を見せていただくことに。それは、ゴムの容器に入った丸い羊羹「玉羊羹」。

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羊羹が固まらないうちにゴムの容器に入れていきます。「ということは熱いんですか? 信じられません...」と驚くマリアンさん。釜から上がったばかりの熱々の羊羹を専用の機械に入れ、素早く水風船のように詰めていきます。

玉羊羹が生まれたのは、昭和12年、甘いものが貴重だった時代。県知事から「戦地の兵隊さんにおいしい羊羹を届けたい」との依頼を受け、先々代の又吉さん(雅孝さんの祖父)が考案しました。これが後に大ヒット商品となり、全国各地に広まったといいます。

マリアンさんが玉羊羹を食べるのはもちろん初めて。爪楊枝で刺せば包装のゴムがつるりと剥けると雅孝さんが教えてくれました。恐る恐る爪楊枝を刺すと玉羊羹がコロリ! あわててキャッチした玉羊羹を口にすると、「ホントにおいしいです! 本練羊羹と比べるとつるんとした食感ですね。おいしいものをありがとうございます」と、大変気に入った様子。

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その夜は、マリアンさんのために、和田さん一家が歓迎会を開いてくださいました。テーブルに並ぶのは、雅孝さんの妻・典子さんが腕によりをかけた福島の郷土料理。

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「ざくざく」というお祭りの時やお正月に作る二本松の郷土料理の汁物や和田家特製焼きおにぎりも!薪を焚いた後の炭を再利用して焼いているので香ばしく、マリアンさんも感激の味でした。

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雅孝さんの母・光子さんが「はるばると遠いお国からおいでくださいまして、いかがですか?」と聞くと、マリアンさんは「ニッポンはすべてが興味深くすべてが美しいです。大好きな日本映画の中に自分が迷い込んだ気分です」と満面の笑みで返します。

そして、2日間お世話になった「玉嶋屋」のみなさんと別れの時。マリアンさんは「和田さん、お世話になりました。私を受け入れてくださってありがとうございました。本当に貴重な経験になりました」と感謝の気持ちを込めて、ハンガリーの小皿やお菓子の詰め合わせをプレゼント。

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「遠くからきていただいて、こんなに羊羹喜んでいただけるとは思わなかったので、私もとても嬉しいです。これからも羊羹作りを頑張ってください。これに羊羹を流していただければ...」と、雅孝さんは羊羹の型をプレゼントしてくださいました。

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「必ず、作った羊羹の写真をお送りします」と感激するマリアンさん。

最後に、光子さんが「楽しいお話をたくさんしていただきありがとうございます。お体を大事にお過ごしくださいませ」というと、マリアンさん、「おばあさまもどうかお体にお気をつけて、お元気で...」と目から涙があふれてしまいました。マリアンさん、光子さんとハグを交わします。

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「一生忘れませんから...」と、光子さんも涙を浮かべていました。

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「どうかこの先もこの美しいお仕事が何世代も続きますよう願っております。またお会いましょう!」と、「玉嶋屋」の皆さんに思いを伝えました。

日本の四季が感じられる、美しい「錦玉羹」の真髄を学ぶ

「錦玉羹を使った季節感のある羊羹に興味があります」と話していたマリアンさん。錦玉羹とは、寒天と砂糖で作る透明感がある菓子で、羊羹と合わせて季節感を表現します。日本人は昔から素材に趣向を凝らし、羊羹の中に季節を表現してきました。

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マリアンさんもハンガリーで錦玉羹作りに挑戦していましたが、層がうまくくっつかないなど、たくさん分からない点がありました。そこでやってきたのは、島根県松江市。城下町として発展した松江は、全国でも有数の茶の湯文化が根づく町として知られ、江戸時代から和菓子作りが盛んです。今も和菓子店が多く、京都、金沢と並ぶ「日本三大菓子処」といわれています。今回マリアンさんの訪問を快く受け入れてくださったのは、美しい和菓子作りで知られる、創業146年の「彩雲堂」。

六代目社長・山口周平さんと会長でもある母・美紀さんが出迎えてくださいました。

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周平さんに店内を案内してもらうと、なんと飾られている花や鳥、すべてお菓子で作られていました。

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驚くマリアンさんに、「もち米と砂糖を練り合わせた生地を加工してお花そっくりに作っています」と周平さんが教えてくださいました。こちらは、今年の工芸菓子展で最高賞を受賞した作品 (写真は一部のみ掲載)。

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台の上にあるものは 器を含め、すべてお菓子でできています。この作品を作った凄腕の職人さんが、マリアンさんに錦玉羹作りを教えてくださるそう! 工場に向かうと、製造部長の田中紀幸さんと先程の作品を作った苅田真俊さんが待っていました。

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こちらの工場では、季節ごとに約20種類の和菓子を手作りしています。全国和菓子協会が優秀な職人を認定する「選・和菓子職」に選ばれた苅田さん。季節を題材にした繊細な表現力は、全国トップクラスです。

「本当に光栄です。今日は何を作るんですか?」とワクワクするマリアンさんに、「錦玉羹と羊羹を合わせたもので春と夏のお菓子を作りたいと思います」と伝える苅田さん。今回は特別に、下が羊羹、上が錦玉羹、中に季節の装飾を散りばめたお菓子を作ってくださいます。

まずは錦玉羹作りから。銅鍋に寒天と水を入れ、熱して完全に溶かし、純度の高い白ザラ糖を加えます。苅田さんが取り出したのは、甘さをはかる糖度計。実は糖度には重要な意味がありました。
「錦玉羹と羊羹は、糖度を合わせることでくっつきやすくなる。片方の糖度が低かったら離れます」と苅田さん。マリアンさんは「くっつかなかった原因がわかりました」とノートにメモを取ります。

糖度計に寒天を数滴垂らして、糖度の見方を教えていただきました。

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味や食感を考えて最適な糖度を判断し「今日は62度であげたいと思うので」と水飴を加えていく苅田さん。水飴を初めて見たマリアンさんは、「こんなの見たことないです!」とビックリ。「錦玉に入れると弾力が出る。食べたときに歯ざわりが良くなる。見て下さい」と再び渡された糖度計を見ると、なんと62度ピッタリ! これぞ熟練の技!

錦玉羹ができたら羊羹作りに移ります。今回は白餡を使って寒天の比率を多めにし、つるっとした食感の羊羹にするそう。糖度は錦玉羹と同じ62度に調整します。ベースとなる羊羹と錦玉羹が出来上がったところで、お菓子を彩る季節のモチーフ作り。

苅田さんが取り出したのは、色を付けた羊羹を型に薄く流して固めたもの。基本の5色を調合することで、あらゆる色が作れます。

まずは春のモチーフから。「ピンクで桜。ニッポンの春はやっぱり桜なので」と苅田さん。濃いものと薄いもの、2色の桜を抜き型で作ります。

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大小の桜を使うことで遠近感が出るそう。続いては夏のモチーフ。朱色の羊羹をしぼり袋に入れ、水玉のようなものを次々と作ります。水玉の上から白い羊羹を流し入れました。

興味津々で眺めていたマリアンさんに「何かわかります?」と聞く苅田さん。10分後。苅田さんが型で水玉模様の薄い羊羹を抜いていくと...なんとそこに現れたのは可愛らしい金魚!

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さらに、赤い金魚や緑のハスを作り、下準備は完了。いよいよ、季節の風景を作る最も重要な工程に入ります。まずは錦玉羹を型に流していきます。「最初は薄く流します。ゆっくり」と苅田さん。続けて春のモチーフとなる、先程作った桜の花びらをのせていきます。「決まった配置は考えなくていい」と、花びらを全体に散らします。ここで苅田さん、マリアンさんに固まり始めた錦玉羹の感触を指で確認してもらいます。柔軟らかい部分と固くなってきた部分が混在している、固まるか固まらないかの状態を"半止まり"というと教えてくださいました。

この半止まりの状態で、再び薄く錦玉羹を流すのがポイント。少しでも早いと層が混ざり合ってしまい、遅いとくっつかないので、タイミングの見極めが重要なのです。そこに今度は、色が濃い桜を散らしていきます。

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ここでも職人技が! 餅を蒸して乾燥させた粉「上南粉」を錦玉羹と混ぜた「上南羹」。それをしぼり袋で花びらの上に流したら、その上に急いで透明な錦玉羹を流します。そして上から箸で軽くなぞると、ある自然現象を表現することができるのだといいます。これがいったい何なのか、それは出来上がりまでのお楽しみ。

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ここで、土台となる羊羹に刻んだ本物の桜の葉をほんの少し入れて香りづけ。五感で春を感じられるように、桜色に着色して最後に上から流し込めば「春」が完成。同じように夏のお菓子も作ります。

果たして仕上がりは!? 翌日、固まった錦玉羹を型から取り出してみると、川に桜の花びらが流れる様子を表す見事な「花筏(はないかだ)」が出来ていました。箸でなぞった白い上南羹は、幻想的な川の流れになっていました。

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繊細な美しさに、思わずこの表情。

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夏のお菓子は「涼水」。

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水辺の涼やかさ、色とりどりの金魚が泳ぐ様子を錦玉羹にしています。

さらに、紅葉を表現した「錦秋」。

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冬の雪を花に見立てた「雪花」。

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苅田さん、ニッポンの季節を感じて欲しいと、こっそり秋と冬のお菓子も作ってくれていました。「素敵すぎて言葉になりません」とマリアンさん。さらに苅田さんが、もう一本型を持ってきました。実は昨日、マリアンさんも錦玉羹を使ったお菓子作りに挑戦していたのです。1時間がかりで作った力作の出来栄えは?

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マリアンさんはニッポンの春を、二色の桜と可愛い蝶で表現。この錦玉羹に「春風」という名前をつけました。あまりの出来栄えに、「信じられません。先生のおかげです!」と嬉しそうなマリアンさん。苅田さんも拍手を送ります。

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ここで「彩雲堂」のみなさんからウェルカムサプライズ! 美しいお菓子を食べる特別なシチュエーションをと、お店の中にあるお茶室で、社長が歓迎のお茶会を開いてくださいました。ハンガリーで9年前から裏千家の茶道を習い、茶の湯を通じて羊羹と出会ったマリアンさん。ニッポンで本物の茶会を体験することは長年の夢でした。マリアンさんが大の着物好きと聞いた美紀会長は、貸衣装のお店まで手配してくださいました。着物に着替えたマリアンさんはとても嬉しそうです。

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「彩雲堂」では和菓子作りに活かすため、定期的にお茶の稽古を受けるそう。マリアンさんが茶室に入ると、お茶の先生・田平宗青(そうせい)先生も駆けつけてくれていました。自らが作ったお茶菓子をいただいた上に、これまでハンガリーで9年間打ち込んできたお茶のお点前を先生に見ていただき、色々な夢が一度に叶いました。「この出会いは一期一会だと思います」とマリアンさん。

そして3日間お世話になった「彩雲堂」のみなさんと別れの時。「一生忘れないと思います」と周平さん。マリアンさんがお礼にハンガリーのお土産を手渡すと、苅田さんからもみなさんで考えたというプレゼントが...。なんと糖度計をいただいてしまいました! 「これを持っていたらプロの職人みたいです。苅田さん、本当にありがとうございました」。マリアンさんは「彩雲堂」のみなさんに感謝の気持ちを伝えました。

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羊羹を通じ、様々な出会いを経験したニッポン滞在。帰国を前にマリアンさんは「この出来事が本当に私の身に起きたことなんだと理解するのにまだまだ時間がかかりそうです。そのくらい素晴らしい体験でした。私はみなさんの教えや想いと共に生きていきます。羊羹や日本文化の素晴らしさをハンガリーで伝えていきたいです」とメッセージをくれました。

マリアンさん、これからも羊羹と錦玉羹作りを頑張って下さいね。またの来日お待ちしています!
そして今回お世話になった皆様、本当にありがとうございました!

また、番組では、2016年に出会い、ニッポンにご招待した「おりがみ」を愛するグアテマラのオットーさんのいまもご紹介しました。ニッポンご招待の後、グアテマラ中を飛び回って子どもたちに無償でおりがみ授業を行っていたオットーさん。新型コロナウイルスの影響で外出できなくなった世界中の子どもたちのためにと、室内でも楽しめる折り紙教室の動画を送ってくださいました。

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そして今夜8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」は...。

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約2年前にご招待した「メロンパンを愛する」ジョージア人男性。その時は、熊本県荒尾市で1日6000個メロンパンを販売するふくやまベーカリーで、念願の指導を受け、秘伝のレシピまでプレゼントされた! 帰国後もそのレシピを元にパン作りを続けていた彼が再来日を果たす! 再び修行に励む彼に店から粋な計らい...そして彼から驚きの報告が!

また新たにご招待する「切り絵を愛する」ブルガリア人女性も。偶然訪れたワークショップで切り絵に魅了され虜になった彼女は、切り絵の作り方を学びたい!と来日。滋賀県米原、切り絵作家・早川鉄兵さんの元へ。制作に1年間費やしたという障子18枚分の巨大な切り絵作品に感涙!
そして驚きのサプライズが...。また、憧れの切り絵作家・福田理代さんに出会い大感動!

どうぞお楽しみに!

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