アオハル! オーストラリアの女子高生と名門和太鼓部...涙の友情と絆:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

和太鼓に魅せられた女子高生

今回ご招待したのは、オーストラリア・メルボルン郊外に住む 高校生のジェーンさん(18歳)。

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築40年のお宅に母親のバーグさんと2人暮らしをしているジェーンさんが愛してやまないニッポンのものとは...。

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祭りや伝統芸能に欠かせない和太鼓。ジェーンさんは、週3回、日本人が運営する「和太鼓りんどう太鼓教室」に5年前からお母さんと一緒に通っています。

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6歳から70代まで総勢100人以上いる生徒の中でも、ジェーンさんの腕前はトップクラス。教室の練習だけでは足りないと、知り合いから250ドル(約1万6000円)で太鼓を譲ってもらい、家でも演奏しています。

最初はお母さんのバーグさんが和太鼓に興味を持ち、近所に教室を見つけたそう。音楽好きでドラムをやっていたジェーンさんもバーグさんと共に教室へ行き、その音と響きに感動し、すっかりハマってしまったといいます。そんなジェーンさんには気になる和太鼓がありました。「一番好きな和太鼓は、桶胴(おけどう)太鼓です」とジェーンさん。和太鼓には、大きく分けて長胴(ながどう)太鼓、桶胴太鼓、附締(つけしめ)太鼓の3種類があります。

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長胴太鼓が大きな欅(ケヤキ)の木などをくり抜いて作られるのに対し、桶胴太鼓は細長い板を貼り合わせて作られるため、長胴太鼓に比べて軽く、肩から担いで叩く演奏スタイルが主流です。

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古墳時代の埴輪にもその原型があるとされ、踊りながら太鼓を叩いて舞う「鹿踊(ししおどり)」など、様々な行事で古くから親しまれてきました。「桶胴太鼓は担いで叩けるので、音色だけでなく、様々な表現ができるのが魅力です」と話すジェーンさんですが、実は大きな悩みがありました。

ジェーンさんが通う和太鼓教室には桶胴太鼓を専門に教えられる先生がおらず、これまで特別授業で数回叩いたことがあるだけ。ニッポンにはまだ行ったことがないジェーンさん。夢はニッポンで桶胴太鼓の打法を教わり、和太鼓が持つ表現力を学ぶこと。

実はジェーンさんが2歳の頃、両親が離婚。母子家庭でギリギリの生活の中、1万円以上の月謝を払って和太鼓教室に通うのにはある理由がありました。「片親だったせいもあって少し塞ぎがちだったジェーンでしたが、和太鼓と出会って、楽しそうな顔を見せるようになったんです」と話す、母親のバーグさん。

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「仲間たちと太鼓を叩く姿を見るのが嬉しい。ニッポンに行く夢を叶えてあげたいのですが、今の生活では厳しくて...」ということで、桶胴太鼓を学びたい、作るところも見て見たい! というジェーンさんをニッポンにご招待!

名門校で目の当たりにした圧巻の演奏と表現力

ジェーンさんとバーグさんが向かったのは、大阪府高槻市。創部25年の和太鼓部がある大阪府立芥川高等学校は文化部の甲子園といわれる「全国高等学校総合文化祭」に15回出場。日本一に輝いたこともある名門です。前アメリカ大統領夫人、ミシェル・オバマさんが来日した際、演奏を披露。「プロを超えるアマチュアたれ」を合言葉に、国内外で年間60回以上の公演を行なっています。"桶胴太鼓を本気で学びたい"という熱意を伝えたところ、快く受け入れてくださいました。

「同世代の子の練習を見られるなんて嬉しい!」と興奮気味のジェーンさんを笑顔で出迎えてくださったのは、名誉顧問の山下勉先生(70歳)。

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「生徒たちも楽しみに待っています」と、早速練習場へ。1〜2年生合わせて46名の部員がおり、明るい笑顔と拍手で出迎えてくれました。山下先生が「じゃあ『フェスタ』をやるから演奏隊形に」と声をかけ、早速演奏を見せていただきます。祭りをテーマに生きる喜びを表現する楽曲「FESTA(フェスタ)」。その演奏の中心を、桶胴太鼓が務めます。

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軽やかに舞う桶胴太鼓が祭りの楽しさや華やかさを表現。ジェーンさんは「すごいエネルギーを感じてビックリしました。本当に素晴らしいです!」と興奮。

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バーグさんも「素晴らしかったです。これが私たちのためだけの演奏だなんてもったいないです」と、感動した様子。すると山下先生が、ジェーンさんとバーグさんに「何か一曲聴かせてもらえますか」と尋ねます。「2人だけだと恥ずかしいですが...」とはにかむジェーンさんでしたが、バーグさんの「やらせてもらいましょう!」という一言で披露することに。

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息が合った2人の演奏に、山下先生から「素晴らしい! 勉強するよりも私たちに教えてください」とお褒めの言葉が。「これは何という曲ですか?」と聞かれ、「『ダンショウ』です」と答えるジェーンさん。「どういう意味ですか?」と通訳さんが尋ねると、ジェーンさんもバーグさんも「分からない」と肩をすくめ黙ってしまいました。オーストラリアの和太鼓教室で習った「断章」という曲。ジェーンさん、曲の意味までは考えたことがなかったそう。「私たちは曲の意味、何をテーマにしているかということをすごく大切にしていて、それを表現する練習をしています」と話す山下先生。

そこでもう一曲、「日本的な雰囲気を出すためにやります」といって始まったのは、「WASABI」という曲。大地を揺るがすような低い音色が体の奥まで響き渡る作品。

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「さっきの曲とは違い力強さを感じました。どうしたらここまで変わるのか? 信じられないくらいです」と驚くジェーンさん。山下先生は先頭で太鼓を叩いていた松田大樹くんを呼びます。演奏中とは打って変わって穏やかな表情の松田くんに秘訣を聞くと、「男子の力強さと覇気を見せたいので険しい顔をしたり...」とのこと。曲に合わせて表情も変えているのです。

「私はいつも演奏に夢中で表情まで意識したことはなかったです」と語るジェーンさんに、「この曲はこういう曲なんだっていうのを演奏者がわかっているとしっかり伝わる」と山下先生。太鼓は音階や旋律がない楽器。だからこそ叩き方だけでなく、表情や体全体を使って曲の意味を表現しなければ、聴き手の心に伝わらないそう。

いよいよ、念願だった桶胴太鼓の練習を始めます。一緒に練習するのは、桶胴太鼓パートの1年生。入部して3ヵ月は筋トレが中心なので、みんな桶胴太鼓を始めて半年ほどです。まずは基本的なリズムを打つ練習から。口頭でリズムを確認し、実際に叩いていきます。
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桶胴太鼓は我流のジェーンさん、その割には様になっているように見えますが...。山下先生は、あっさり一言「不合格」。その理由は、叩き方に強弱のアクセントがついていなかったから。「強弱つけなかったら楽しくならない」と山下先生。コーチの中塚咲さんにお手本を見せてもらいます。

強弱をつけることでメロディーのような抑揚が生まれる桶同太鼓。さらに手首のスナップを効かせて叩くことで太鼓の表面だけでなく胴の中で振動する より響く音になることも教えていただきました。練習すること1時間...。最初と比べると音色に抑揚が出てきました。山下先生からも「すごく良くなった」と褒められ、この日の部活は終了。

これぞ大阪の味! 初めての「たこ焼き」に挑戦

音声翻訳機を使ってすっかり打ち解けたジェーンさんと部員の皆さん。仲良くなった小西風(ふうい)さんのお宅に桶胴太鼓のメンバーと一緒にお邪魔させてもらうことになりました。ハグで大歓迎してくれた風さんのお母さんが準備してくださったのは、大阪名物たこ焼き。初めてのこたつとたこ焼きにジェーンさんもバーグさんも感動!

たこ以外にもウインナーやこんにゃくなど9種類の具材が用意されており、たこ焼きパーティーの開始です。「日本人はみんなこの機械を持っているんですか?」と尋ねるジェーンさんに、「大阪は一家に一台あるやんな?」と風さん。「あるある!」と全員が同意し、「うちも買わないと!」というジェーンさんにみんな爆笑。初めてのたこ焼きに挑戦。
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初めてとは思えない竹串さばきでくるりとたこ焼きを返すことに成功。「ジェーン、上手い! プロフェッショナル」などの声も上がり、パーティーは大盛り上がりに。たこ焼きの味は「グッド!」とのことで、ジェーンさんもバーグさんも、たこ焼きが気に入った様子でした。

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ジェーンさんがみんなに和太鼓部に入ったきっかけを聞くと...。「先輩の演奏を見て、したいと思ったからです」「高校生でここまでできるんや、みたいな」。さらに「演奏している時、服が小刻みにグワーって揺れとってん」「お尻がガタガタガタって。(太鼓の)振動! みたいな」と笑顔で語り、先輩たちの素晴らしい演奏と体の奥まで鳴り響く太鼓の振動に心を動かされたからだと教えてくれました。

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ジェーンさんも、「初めて和太鼓教室を見学に行った時、体に直接伝わる振動にビックリしました」と皆さんの話に同意します。その後は女子高生らしく、ジェーンさんのイケメンボーイフレンドの写真を見たり、ガールズトークがさく裂。小西家にみんなで泊めていただけることになりました。

コンサートでまさかのセンター!

翌日、練習前に山下先生が「3月1日(日)に太鼓の練習場でコンサートをやります」と発表しました。部内で発表会が催されるとのこと。実は、3月1日に和太鼓部が出演予定だったイベントが新型コロナウイルスの影響で中止に。さらに政府の要請を受け3月2日から休校が決定したことから、山下先生が練習を積んできた部員のために発表会を企画したのです。しかも...。

「ジェーンも含めて『FESTA』を演奏します。ジェーンはよしのに代わってメインのポジションでやります」とのこと。なんとジェーンさん、腕を見込まれ、桶胴太鼓のリーダーである2年生のよしのさんが担当しているセンターを任されることになったのです!

練習期間はたった3日。早速、「FESTA」の練習に参加させていただくことに。「FESTA」は、桶胴太鼓、長胴太鼓、笛、チャッパによる合奏曲。まずはパートごとに練習し、最後に全体で合わせます。

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「『FESTA』は全体を分けると11通りになるんですけど、1つずつ分けてリズムを覚えていきます」とよしのさん。11パターンのリズムが盛り込まれた「FESTA」。楽譜は使わず、足を手で叩いて体にリズムを染み込ませる「手打ち」と呼ばれる練習法を使います。

「オーストラリアでは、最初から太鼓を叩いて練習していました」と話すジェーンさん。手打ちは太鼓がなくても練習できるので、和太鼓部ではこの練習方法でリズムを覚えるそう。楽譜がない古来から、和太鼓のリズムは口唱歌(くちしょうが)と呼ばれる方法で伝承されてきました。リズムを体に染み込ませたら太鼓を担いでの練習。さすがジェーンさん、飲み込みが早く、初めての練習法でもすぐにリズムを覚えたようです。

「よし、うまいな。いい感じだね。じゃあ少し膝を使って、ノリながら打ってみる?」と山下先生。
和太鼓の演奏には指揮者がいないため、太鼓のリズムだけでなく、体の動きをそろえることで一体感が生まれるといいます。

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「桶が動くと体だけじゃなく、太鼓も踊っているからね。だからお客さんは楽しくなってくるよね」との山下先生の言葉にジェーンさんも大きく頷きます。これこそ担いで叩ける桶胴太鼓ならではの演奏。リズムに合わせて太鼓も踊らせることで他の太鼓にはない表現力が!

3時間かけて一通りリズムを教わったジェーンさん、なんとか動きはついていけるようになりました。「すごいです。本当にすごいと思います」と驚くよしのさんですが、「全部覚えている自信はないです」と不安気なジェーンさん。それもそのはず、部員の皆さんは完璧に演奏できるまで3ヵ月はかかったそう。それを3日間で身につけようというのだからとんでもない挑戦です。「とっても濃い3日間になりそう。この曲が演奏できるようになれば、すごい成長だと思うわ」とバーグさんに話すジェーンさん。

練習を再開すると、山下先生はあることが気になります。「これ何回もあるやろ? これやるのはなんでかというとね、お客さんはバチをよく見てるからこのバチを上げると顔を見る」。

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曲の意味を伝えるのに欠かせない表情。バチを上げる時は特に意識しなければいけないのだと教えてくださいました。ジェーンさんもやってみますが、どうしてもリズムの方に気を取られ、硬い表情になってしまいます。

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太鼓を叩いていないときは自然に出る笑顔も演奏を始めるとなかなかうまくいきません。本番まで残りわずか。ジェーンさん、笑顔で演奏することは出来るのでしょうか?

桶胴太鼓の老舗を訪問

部活が休みのこの日、ジェーンさん親子が向かったのは、愛知県岡崎市。来日の際「りんどうの先生が使っている三浦太鼓店の桶胴太鼓が素晴らしい音で、どんな風に作られているのか見てみたいです」と話していたジェーンさん。155年前、初代・三浦彌市(やいち)さんが創業した「三浦太鼓店」にやってきました。

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六代目・和也さん(40歳)が作る和太鼓は、アメリカ、デンマーク、オーストラリアなど世界各国から注文が来るほどの名品。去年行われたラグビーワールドカップの入場式でも使用されました。実は去年、オーストラリアで和太鼓を教わっている坂本先生の還暦の記念に、生徒たちが三浦太鼓店の桶胴太鼓をプレゼントしたそう。

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桶胴太鼓の値段を尋ねると、標準的なタイプで15万円くらいするそう。ジェーンさんたちにはとても手の届かない値段です。「叩いてみる?」と三浦さんに促されたジェーンさん、新品の桶胴太鼓を叩かせていただくことに。担いでみたジェーンさんの感想は「とても軽いです」。「桶胴太鼓は担いで使う楽器なので出来るだけ軽く作っています」と三浦さん。バーグさんが「『FESTA』を演奏して!」とお願いすると、「えーっ!」と言いながらも、冒頭部分を演奏しました。

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「とても良い音ですね! 高い音がそこまで高くなくて」とジェーンさんがいうと、バーグさんも「明るい音だけど耳障りじゃない。とにかく心に響きました」とのこと。「2人が言ってくれた通りで、良い音というのは心に響きます」と三浦さん。

心に響く桶胴太鼓の音...一体どのように作られているのでしょうか。その要となる桶作りの工程を見せていただけることになりました。一枚一枚の板を重ね合わせて成形する桶。使用するのは、密度が高く音の反響が良い秋田杉。一枚一枚の板をタガと呼ばれる竹を使って組み合わせます。「これをはずしてみて下さい」と三浦さんが渡したのは、小ぶりの桶。すると...

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「わー!」バーグさんの桶のタガが外れ、板がバラバラに散らばってしまいました。胴に使われるのは杉の木と竹のみ。何十枚もの板をタガだけで束ねているので、タガを外すとバラバラになってしまうのです。「秩序が失われること」を意味する"タガが外れる"とは、この状態を表したもの。

「なぜ接着剤を使って留めないんですか?」というジェーンさんの質問に、「接着剤は板と板の間で音を吸収してしまう」と三浦さん。良い音を出すために、接着剤を使用しないのです。桶胴太鼓の音は、牛の皮で出来た打面を叩くと桶の中で音が反響して増幅。それが反対の面を震わせ、より大きな音色になるのです。

形にも良い音を生み出す仕組みがありました。太鼓の丸みに合わせ、外側と内側を順番に削っていきます。まっすぐな杉の板の両面を丸鉋(がんな)と呼ばれる道具で削り、アーチ状に。ジェーンさんも鉋に挑戦しますが、全然削ることができません。

三浦さんは板の側面を削り、太鼓のカーブを作っていきます。このわずかな膨らみを持たせることで内部の体積が大きくなり、反響する音に深みが生まれるそう。

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続いて、仮輪と呼ばれる鉄製の輪に板を並べていきます。徐々に輪を狭め、絞り上げるようにしていくと太鼓らしい膨らみが。仮輪を竹でできたタガに付け替えると...

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桶の完成です。バーグさんも「接着剤なしでこんなものができるなんて」と感動。ここに塗装を施し、牛の皮で出来た打面をつけ、完成するのは1ヵ月後。

バーグさんがお礼の品を手渡して「三浦さんの太鼓にかける情熱に感銘を受けました」と言うと、三浦さんから「ここから先は僕たちが預かってキレイにして、プレゼントしようかなと思っています」との言葉。思いもしなかった大きなプレゼントに、ジェーンさんは「え? 本当ですか?」と信じられない様子...。あまりの嬉しさに大粒の涙がこぼれます。

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「次回はオーストラリアで会いたいと思っています」と話す三浦さんに、「ぜひ来て下さい!」と返し、ジェーンさん親子は笑顔で別れを告げました。

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いよいよ、コンサート本番! 「いつまでもゲスト扱いではアカンと思う」

大阪に戻って来たジェーンさん。本番まであと1日となりました。部活以外の時間も、手打ちで練習を続けます。うまくできそうか尋ねると、「そうなるといいんですが。まだ確実じゃないところがたくさんあって...」とやや不安そう。ジェーンさんが担当するのは、桶胴太鼓のセンター。全体のリズムをリードしなければいけないポジションなのでミスは許されません。

演奏の復習からスタートしますが、手打ち練習では覚えていた動きが実際に太鼓を担ぐと飛んでしまうよう。ジェーンさんがミスをすると、全員の演奏も止まってしまいます。山下先生から「ジェーンが止まったり間違ってストップしたら曲は止まるからね。絶対にストップしたらダメね」と厳しい注意が入ります。その後も、笑顔を意識すると演奏が飛び、演奏に集中すると硬い表情になってしまい、センターの役目を果たせないジェーンさん。

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ところがそんなジェーンさんによしのさんがかけた言葉は「ジェーン、ベリーグッド」。誰もジェーンさんのミスを指摘しません。部活終了後、山下先生がジェーンさん以外のメンバーを集めました。

山下先生「明日本番があるやんか。ジェーンは完璧にやれると思う?」
部員「いや まだ完璧には...体に染みついてなかったりするので」
部員「完璧にするのは私でも難しいので...。無理って言ったらダメなんですけど、少し難しいかなと思います」
山下先生「それでジェーンは満足して帰るか? (いつまでも)ゲスト扱いではアカンと思う。ジェーンはめっちゃこっちへ向かって来てるで。勝負していると思う」
部員「教えている側より一生懸命やっているのを見て、それは感じます」

みんな、ジェーンさんの努力を知っているからこそ、それ以上は求められなかったのです。

山下先生は「部員として何かを感じて帰ってもらわないと。ゲストとして帰ってもらったらアカン。これが和太鼓部のやり方なんや!」と部員たちになげかけます。

最終日。本番は夕方4時からですが、練習場には朝早くから桶胴太鼓のメンバーが集結していました。

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「今日早く集まってもらったのには理由があって。今日の演奏会は絶対に成功させたい。ジェーンに失敗してほしくないなって。やっぱり間違えたら後悔すると思うので。私たちはジェーンに絶対後悔してほしくないので、完璧な演奏するために今日は今から本番までみっちり練習していきたいなと思っています」とよしのさん。体験に来たお客さんではなく、同じ部員として完璧を目指してもらう...桶胴太鼓のみんなで話し合い、そう決めたのです。しかしそこに山下先生の姿はありません。

「言うこと言うたらあとはもう生徒に任せているので」長年指導してきた先生らしい言葉。指揮者も楽譜もない和太鼓演奏。ジェーンさん、動きはそろうようになったものの、まだ表情が追いついていません。

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「楽しんでやってます。でも次の動きのことを考えて集中すると真剣な顔になってしまいます」3ヵ月分の練習を3日で仕上げるのだから当然といえば当然です。「みんなの顔見てたら笑顔で見てくれるので、そうしたらつられて笑顔になります」と風さん。他の桶胴のメンバーも、笑顔が出るアイデアを出してくれました。

迎えた本番。演奏直前に仲間と円陣を組み、心をひとつにします。

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本番が始まると、強弱もしっかりつけ課題だった表情もクリア!

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見せ場でも、ジェーンさんはセンターでみんなを引っ張っていくことができました。最後は自信に満ちたこの表情。

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山下先生からも「素晴らしいです。今日を含めて4日しか練習していないんですけど絶対やってやるぞっていう気持ちが伝わってきました。本当に感動的な演奏でした」と嬉しい言葉をいただくことができました。

「私が学んだのは"曲の背景や込められている感情を考えてそれをお客さんにどうやって伝えるか"ということです。それを表現するには仲間の存在がなければ何も出来ません。みんなが『もっと笑顔で』『すごい』といつも声をかけてくれたから最後までやり遂げることができたのだと思います」とジェーンさん。技術だけでなく、仲間の大切さも学んだようです。

別れの時。和太鼓部全員がメッセージをくれた寄せ書きと、部員だけに配られる特別な帽子、山下先生の奥様手作りの桶胴太鼓の肩掛け紐をプレゼントしていただきました。

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ジェーンさんも感謝の手紙を読み上げます。「和太鼓部の皆さん、本当にありがとうございました。皆さんのことをまるでずっと昔からの友だちのように感じます。私は皆さんに単なる技術だけでなく、和太鼓の本当の価値を教わった気がします。私が『FESTA』を覚えられるように一生懸命教えてくれたことを忘れません。そしてオーストラリアに戻っても笑顔で桶胴太鼓を演奏することを忘れません。和太鼓を一緒に演奏できる信頼し合える仲間が出来たことが私には何より嬉しいです。いつかオーストラリアで会える日を楽しみにしています」。静かに聞いていた和太鼓部のメンバーでしたが、最後はハグと涙の嵐になりました。

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ジェーンさん、バーグさん、またの来日お待ちしています! そして今回お世話になった皆様、本当にありがとうございました!

さらに番組では、"ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった!スペシャル"と題し、約4年前にご招待した「如雨露(じょうろ)」を愛するイタリア人男性・サルバトーレさんのその後も紹介。なんとサルバトーレさん、4年の歳月をかけて如雨露の新作を作り上げ、世界最大級といわれる「ミラノ国際見本市」に出展。ヨーロッパの如雨露業界が誇る期待の星になっていました!

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そして今夜8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」は...。

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約4年前にご招待した「折り紙を愛する」グアテマラ人男性。その際には50年間望んでいたニッポンで折り紙の技術を、感激のあまり涙しながら学びました。さらに約3年前、おりがみ会館に講師として招待され、再来日。3日間のべ 97人に折り紙を教えました。そんな彼から感動のビデオレターが! 愛するニッポンのために彼が送ってきたものとは...

新たにご招待する「羊羹を愛する」ハンガリー人女性も。旦那さんがパリから取り寄せた「とらや」の羊羹をきっかけにその虜になった彼女はニッポンの職人さんから羊羹と錦玉羹の作り方を学びたい! と来日。創業500年以上、室町時代から続く名店、とらやの赤坂店で羊羹を堪能。さらに福島県二本松市にある玉嶋屋で江戸時代から変わらない伝統製法を見学し、挑戦します!

どうぞお楽しみに!

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