イタリア生まれ・人間国宝級のYOUが継承した「筑前琵琶」づくりに密着! 「寂しい」と語る理由は?:YOUは何しに日本へ?

公開: 更新: テレ東プラス

日本を訪れる外国人たちを空港で勝手に出迎えてアポなしインタビュー! そのまま密着取材を行う「YOUは何しに日本へ?」(毎週月曜夜6時55分~)。今回は「祝! 300回! 8年目突入 型破り 国宝級 超ラッキーガール 旬のYOU満載春のフルコース2時間SP」ということで、300回記念にふさわしい最旬のYOUを求め、全国の空港で突撃取材を敢行。果たして今回はどんな 面白YOUに出会えるのか?

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福岡空港で声をかけたのは、イタリア出身で、現在は福岡で日本人の奥様と暮らすYOU。「イタリア会館」という施設でイタリア語を教えつつ、イタリア文化や観光をプロモーションするため雑貨販売やイベント開催も行っているそうだ。

4月には、日本古来の楽器・琵琶のイベントもやると教えてくれたので、どうしてイタリアなのに琵琶なのかと質問。すると、件の施設の館長さんが、もともとは語学講師ではなく、琵琶の職人さんだというではないか! 1974年に筑前琵琶職人の弟子になって、師が亡くなった今では最後の後継者でもあるという。

そんな貴重な人間国宝級のYOUがいるなら、ぜひお会いしてみたい! と思ったら、YOUから「イタリア会館に遊びに来てください♪」と誘ってもらえたので...。

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さっそく福岡は天神駅にある「イタリア会館」に、アポなしで遊びに来ちゃいました! 駅から徒歩10分ほどの場所にあるおしゃれな建物に入っていくと、福岡空港でインタビューしたYOUがいてびっくりされた(笑)。しかし、噂の館長さんはまだ来ていないようだ。

そこでYOUが連絡を取ってくれたので、電話で直接お話できたチャンスをいかして取材の申し込みをしたところ、お笑いやバラエティ番組の取材はNGという。

ここはきっぱり「(8年続く)ドキュメンタリー番組です」と伝えると、とりあえず会ってから決めると言ってくれたので、5時間後にもう一度イタリア会館に出直しだ。

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5時間後、イタリア会館に戻ると館長さんが登場! 白髪にハット、そしてドット柄のシャツが似合う、めちゃくちゃ上品な男性だ。さっそく「筑前琵琶の職人さんとお聞きしたんですけど...」と聞くと、「そういうこともやってます」と、控えめな自己紹介。

館長さんの名前はドリアーノ・スリスさん。「なぜ琵琶の職人を?」と質問すると、「なぜ日本人が琵琶のことを知らない?」と、逆に怒られてしまった。そして取材を迷うドリアーノさんに、真面目なドキュメントとして密着すると拝み倒すと、どうにか熱意が伝わったようでOKをいただけた! ただし、取材を許してもらえたのは1日だけ。

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指定された日、再びイタリア会館の外で待ち合わせをして、いよいよドリアーノさんの工房にお邪魔することに。かけがえのない取材の1日は、奇しくも大雨。カメラを回して背中を追いかけながら質問を繰り出すが、雨音がひどくて声が届かないようだ...。

会話もないまま、ドリアーノさんが45年間お住まいのご自宅へ到着。中から奥様の一枝さんが、共に暮らす猫を抱えて出迎えてくれた。おふたりは奥様が1970年に初めて行ったイタリアで出会ったそうだ。

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ちなみに筑前琵琶とは、明治時代に福岡で誕生した一般の琵琶より小さめのもの。音色が軽くて柔らかく、女性の間で流行したという。床の間に飾られた筑前琵琶は1800年半ばのもので、白い部分が象牙でできており500万円は下らないそうだ。

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そしていよいよ、御自宅に併設された工房へ。中に入ると、琵琶用の大量の道具がところ狭しと並び、これから琵琶になっていく前段階のバラバラの部品もぎっしりだ。左は手作業で削り始める前の板で、中を削っていくと右のようになる(上の画像)。この工程を経て琵琶が完成するまでには、なんと3カ月もかかるのだそう。

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とはいえ取材は1日しかないので、まずは作業中の様子を録らせていただいた。

主な仕事は壊れた琵琶の修復。昔の職人さんが作ったパーツは形が非常に複雑なので、何カ月もかけて、色・形・材質などを壊れたパーツとまったく同じように作り替えていくのだ。

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奥様とイタリアで知り合った後、1974年に結婚して来日したドリアーノさん。1975年当時、聴いていたラジオから、聴いたこともない楽器の音色が流れてきて興味を持ち、軽い気持ちで琵琶作りを始めたのが、現在に至るきっかけだった。

筑前琵琶職人・吉塚元三郎氏(当時82歳)に弟子入りしてからは、どんどんハマっていったという。後継者となってからの5年間は毎日給料なしで修業をしたが、日本語がまだよくわからなかったドリアーノさんは、師匠が話す博多弁によく悩まされたと懐かしそうに笑う。

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こうして人生の大半を日本で過ごすドリアーノさんだが、ほっとひと息つけるのはやっぱりイタリア料理を出すお店。

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筑前琵琶に魅せられ45年、後継者はまだいない。ドリアーノさんは、自分が教えてもらったことを誰かに伝えられないのは寂しい...と言って、こんな本音を口にした。

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4月に開かれる琵琶展では、全国に筑前琵琶の魅力をPRしたいと伺ったところで1日が終わり、約束通り密着は終了。どうか素晴らしい後継者が見つかりますように!

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