堀江貴文に前澤友作...ビジネスマンたちが「宇宙」に夢中になるワケ

公開: 更新: テレ東プラス

jinkoeisei_20200305_00.jpg画像素材:PIXTA

宇宙事業に乗り出しているホリエモンこと堀江貴文さんが「日本が世界に勝ち得るのは宇宙とロボティクス」と2019年の夏に講演で発言されるなど、世界のビジネスマンが熱視線を送っている宇宙ビジネス。

日本でも、宇宙ビジネス起業家が夜な夜な集まるイベントがあったり、賞金の出るアイデアコンテストが定期的に開かれたりと、いよいよ盛り上がりを見せています。その最先端をゆくメディア『宙畑(そらばたけ)』編集部に、宇宙ビジネスにまつわる "基本のキ"から、近い将来の未来予想図までをまるっと聞きました!

jinkoeisei_20200305_01.jpg▲左から、『宙畑』編集員・牟田梓さん、編集長・中村友弥さん、編集員・田中康平さん。

2030年には70兆円になる!? 宇宙ビジネスの市場規模

世界における「宇宙ビジネス」の市場規模はいまやウナギのぼり。2010年に約27兆円だったものが、2017年には約38兆円になり、2030年代には約70兆円以上に達するとの見方もあります。

「今までは宇宙開発といえば政府や国の機関が行うものでしたが、技術の進歩によって民間でも衛星を独自に打ち上げられるようになってきたのです。この動きを世界では"ニュースペース"と呼んでいて、このニュースペースが進んだのがここ10年なんですよ」(編集長・中村さん)

jinkoeisei_20200305_02.jpg▲これは宙畑編集部がまとめた「宇宙利用業界マップ」。天気予報や衛星放送、防災、資源探査、株価予測、保険、宇宙旅行など、幅広い分野で広がっていることがわかります(画像提供/宙畑編集部)

「宇宙ビジネスは、大きくわけて3つの分野があります。それが【インフラ】【利用】【宇宙探査・旅行】。各分野について、カンタンにご説明しましょう」(中村さん)

【1.利用】
人工衛星のデータ利用、測位衛星を使った位置情報サービス、リモートセンシング(物体が反射・放射する波長を宇宙から計測し、物体の形状や性質などを識別する技術のこと!)など宇宙空間を使うビジネス。今、宙畑が最も注目している分野!

【2.インフラ】
ロケットの製造・打ち上げ、人工衛星の運用など、宇宙での利用を支えるビジネス。国内では、堀江貴文さんが率いる、ロケットの開発や製造、打上げまでを手がける「インターステラテクノロジズ」は、最近名前を聞くことが増えているのではないでしょうか。

【3.宇宙探査・旅行】
人類が宇宙空間へ活動エリアを拡げていくためのビジネス。2018年、前澤友作さんが「SpaceX」創立者イーロン・マスクさんと月旅行計画を発表。

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今、最も盛り上がっているのは?

「やっぱり【利用】分野ですね! とくに目覚しいのは通信衛星です。たとえば、AmazonやSpaceXが地球の低軌道に大量の人工衛星を打ち上げ、地球のおよそ95%にネット回線を提供する動きを進めています。アフリカなど、地球上でまだインターネットにつながっていない人口は30億人とされており、この人数が新たにネットにつながれば世界は激変するはずです。」(中村さん)

名だたるビジネスマンたちが宇宙ビジネスに夢中になる理由

堀江貴文さんやイーロン・マスクさんといった著名なビジネスマンたちが次々と参入している宇宙ビジネス。その魅力って?

「宇宙ビジネスのいいところはたくさんありますが、たとえば宇宙はまだ誰も勝者がいない分野で、アイデア次第で一番になれる可能性を誰もが平等にある点も魅力の一つ。とはいえ、資金力が必要な分野ですから、世界的なビジネスマンや大企業の参入が目立つのでしょう」(田中康平さん)

jinkoeisei_20200305_04.jpg(画像提供/宙畑編集部)

「また、IT系のプレイヤーが増えてきているのは、ITと宇宙の相性が良いからです。ビッグデータや5G、ネットワークどれをとっても、宇宙を通して整備していくことで国内だけでなく世界をターゲットにできる。宇宙はまさに未来を担うインフラの基礎となる部分なのです」(田中さん)

『宙畑』編集部3人が選ぶ!いま注目の宇宙ビジネス

では、今、とくに注目の宇宙ビジネスって? 『宙畑』編集部のみなさんがそれぞれ答えてくれました。

注目の宇宙ビジネス(1)
:宇宙系の広告社設立、ガンダムが宇宙から五輪を応援。宇宙空間に広告を出す時代が来る!

「個人的には、宇宙を利用した一般目線のビジネスが盛り上がり始めているのが面白いですね! 2019年10月には宇宙空間を活用する日本初の広告会社『スペースバジル』が設立されましたし、今年の東京オリンピックではガンダムとシャアザクを搭載した人工衛星が宇宙空間に放出される予定だそうですよ」(中村さん)

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「また、2019年5月に堀江さんが打ち上げたMOMO3号機には、相模原名物の『とろけるハンバーグ』が積み込まれ、宇宙に進出して話題になりました。これからは宇宙空間を使った広告や遊びを目にする機会が増えるかもしれませんね!

あとは手前味噌ですが、衛星データも一般の方が楽しめる活用事例がどんどん産まれるのでは? と期待しています。例えば、実は富士山が見える旅館、100万ドルならぬ1億ドルの夜景が見える場所探し、海釣りに行く前に衛星データを見ることが当たり前になるなど......楽しそうです」(中村さん)

注目の宇宙ビジネス(2)
:その伸び率たるや、もはやモンスター級! 中国が大バケする日は近い!?

「私は中国が面白いですね! 中国は2019年にはアメリカやロシアに次いで三番目に月面着陸を成功させました。宇宙の有人飛行はもちろん、宇宙ステーション建造なども着々と進めていますよ。国が一丸となって民間で宇宙ベンチャーを作ることを推奨していて、投資の数もド級です。さすがは大国、もはや何が起きるかわかりません!」(牟田さん)

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「例えば、日本と中国といった国家同士では安全保障の関係で見せられなかった情報も多いのでしょうが、官から民へくだったことで、国を超えた連携も取りやすくなりました。中国とコラボするスタートアップも増えてきていますよ」(牟田さん)

中国が力をつけるのはちょっと怖い気もするけれど、宇宙の技術を今以上に躍進させてくれるのはきっとこの大国。ワクワクしますね。

注目の宇宙ビジネス(3)
:2020年、宇宙の旅! 広島で人工流れ星が輝く? 宇宙のエンタメが本格化しそう

「バージンギャラクティック社を始め、民間企業の何社かが宇宙旅行サービスの提供を開始しようとしています。ついに始まるんだ! というワクワク感がありますね」(田中さん)

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「さらに、昨年は国内の宇宙ベンチャー企業の小型衛星もいくつか打ち上がりました。例えば、小型衛星から粒を発射することで、人工の流れ星を演出しようとしている企業もあるんですよ!」(田中さん)

人工流れ星だなんて、世界初、いや人類初のプロジェクト。2020年中に出現する予定というから楽しみです。

宇宙ビジネスが見せてくれる未来

宇宙ビジネスが隆盛したら、その先にはどういうことが待っているのでしょうか。中村さんは、誰もがしたいことにチャレンジできる未来を夢見ると言います。

「たとえば、ぼくがトウモロコシを作りたいとします。でも、今は何かしらのスキルや経験がなければなかなか飛びこめません。でも、衛星データを活用した畑の管理、測位衛星を活用した自動運転農機など、技術が進化することでチャレンジする際のハードルがどんどん下がっていくはず。アフリカにいる30億人がインターネットにつながれば、アフリカの人が日本の畑に設置するロボットを動かして作物を育ててくれるなど......彼らの力も加わることで、これまでは夢と思われていたことがどんどん現実になっていくでしょう」

そうなれば、海外の人も、小学生も、高齢者も、みんな一緒にトウモロコシを作る日が来るかもしれない。きっと、今まで以上に自由なコミュニティがたくさん出てくるはずです。

「したいと思った時にできる環境が整うのです。できることの種類も増えていって、『それいいね、やってみようよ』と、今までよりももっと気軽にモノやサービスを生み出すことが普通になる日が来る感もしれません。ワクワクしますよね」(中村さん)

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「宇宙技術を使ったビジネスを、ただの憧れで終わらせたくない。若い世代にも『面白そうだから、起業してやってみたい!』と思ってもらえるような情報を僕らもたくさん発信していきたい。逆説的ですが、いつか僕らのメディアがなくなることが宙畑のゴールかもね、とよく話しています。なぜならその時、宇宙ビジネスが当たり前になったときですから。メディアとして啓蒙する役目を終えたら、僕らは解散するんです」(中村さん)

まるで広大な宇宙を旅し、役目を終えて大気圏突入とともに光となって消えていった「はやぶさ」を思い出してしまいました。でも、宇宙ビジネスをめぐる私たちの歩みはまだまだ始まったばかり。興味がわいた人は、ぜひこの宇宙ビジネスメディア『宙畑』で最新ニュースをチェックしてみてくださいね!

【取材協力】
『宙畑』編集部

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