もしもピザを切る小人がいたら?......ヨシダリュウタの癒し系作品、その誕生の裏側

公開: 更新: テレ東プラス

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Twitterで12.3万人のフォロワーを持つ、新進気鋭のクリエイター・ヨシダリュウタ。先日に代官山で行なわれた初の個展は、多くの来場者を集めました。

ヨシダさんは身近にあるものをモチーフに、それを少しズラした視点で切り取った作品を創作しています。その視点とは、"もしも~だったら"というもの。今回はTwitterの投稿作品などについて、一体どんな発想から生まれたのか本人に聞いてみました。

タピオカが上手く吸えなかった、驚きの理由

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タピオカドリンクを飲んでいると、「なかなかタピオカが吸えないなぁ」って思うことがありますよね。普通ならイライラしそうなものですが、ヨシダさんの目にはこんな光景が浮かんでいるようです。

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さらに、綺麗に割れないことも多い割り箸には、こんな理由が!

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実はヨシダさん、割り箸を割るのがとても苦手なのだとか。上手く割れない理由を日々考えているなかで、この作品を思いついたそうです。

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絡まることの多いイヤフォン、実はこんな理由があったようです。

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うーん、思わずほっこりしてしまいますね。絡んだコードをほぐしていると、何だか悪いことをしているような気がしてきました。

ヨシダさんの頭の中には、まだまだ作品化されていないないアイデアがたくさんあるそうです。

「例えば、コンビニのお弁当でおかずの下に敷かれているスパゲッティ。『彼らはどう思ってるんだろう』と気になりませんか? "揚げ物の油を吸う"という立派な役割があるわけですが、日の目を浴びることがないので可哀想だなぁと(笑)。他にも気になるのは、信号機の黄色ですかね。『俺だけ出番が少ない!』と怒っていそうです。とはいえ、彼の出番を増やしてあげたら、街ゆく人やドライバーはみんな困っちゃいそうですが(笑)」

ハライチの岩井も嫉妬する初イラスト集

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ヨシダさんは2018年、数多くの書き下ろし作品を収録した初イラスト書籍『もしもアンテナ』(KADOKAWA)を出版しました。帯には「ハライチ岩井、嫉妬!?」とありますが、その発想力には岩井も思わず唸ったようです。

本の出版後、ヨシダさんのもとには、読者から「おもしろい」「癒される」といった声が寄せられました。中でも、ヨシダさんが特に嬉しかったのが、子どもを持つ親からの反響だったそうです。

「『(ウチの子どもが)色々な言葉の意味を考えながら読んでいます』という話を聞いたときは、本当に嬉しかったです。全くそんなことは考えずに作っていたので、言葉の勉強にも役立つというのは驚きでしたね(笑)」

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そんな言葉の意味について特に深く考えさせられるのが、胃もたれを表現したこのイラスト。「胃もたれ」は身体の不調を指す言葉なのに、この作品では胃が体のことを気遣っているようで、「食べ過ぎないでね」という優しさが伝わってきます。次に胃もたれになったときには、「胃が俺のことを考えてくれてるのかな」とプラスに考えられそうですね。

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ヨシダさんは言葉をきっかけに作品を思いつくことも多いそうです。その一つが、リップクリームを文字った「立腹クリーム」。「リップクリームはどういうときに怒るんだろう?」「何をされたら怒るのかな?」と考え続け、「蓋を閉めないまま、放置されたら怒るよね」という結論に至ったのだとか。

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ちなみに、書籍の中でも特に人気だったのが、「ピクルス抜き」という作品です。これはピクルスを苦手な人が多く、ハンバーガー店で抜かれてしまう光景からインスピレーションを得たそうです。一つだけ取り残されてしまったピクルス。何だか可哀想に思えてしまいます。

「可哀想という感情は人の心をドキっとさせます。特にそれが自分に結びつくときほど、強く心を動かされてしまうと思っています。ピクルスを抜いている人や苦手な人は多いので、よりドキッとする確率が高いのではないでしょうか」

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ヨシダさんのイラストからは、物の気持ちに寄り添うような、あたたかさや優しさが感じられます。普段から使っている物にも、深い愛情を注いでいるのでしょうか?

「一つのものを使い続ける方なので、物持ちは良いかもしれません。ただ、物を大事にしているというより、『買い替えなくても使えるしなあ』という感じです。壊れたとき、失くしたとき以外には、新しい物に替えることはないですね。中1ぐらいのときにおばあちゃんからもらった財布は、つい昨年まで使っていました。10年弱ぐらい使い続けていたので、かなりボロボロでしたね(笑)」

大行列の個展では"ただの割れたコップ"を作品化

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ここまではイラスト作品を紹介してきましたが、ヨシダさんは立体的な展示作品も手掛けています。2019年に開催された個展では、身の回りの些細なことを事件化した「身の回り事件簿」が、来場者から好評だったようです。

yoshidaryuta_20200227_14.jpg▲「身の回り事件簿」より「コップ氏 転落死」

こちらは「コップ氏 転落死」。コップがテーブルから落ちて割れた様子を事件化し、サスペンスとユーモアを融合させた展示となっています。

yoshidaryuta_20200227_15.jpg▲「身の回り事件簿」より「ピン9人倒される」

ボウリングのピンが一本だけ残ってしまう、そんなあるあるを題材にした作品も。添えられた新聞記事の見出しは、「ピン9人倒される 巨大球衝突、生存者1名」でした。

yoshidaryuta_20200227_16.jpg▲「身の回り事件簿」より「納豆パック氏 刺殺」

中でも、特に来場者の共感を得たという作品が「納豆パック氏 刺殺」。ヨシダさん自身が大の納豆好きで、混ぜているときによくパックを箸で刺してしまうそうです。

「タレが漏れるのではないかと、いつも心配になるのですが、意外と耐えるんですよね(笑)」

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次から次へと作品を生み出し続けるヨシダさん。大変さや焦りは無いのか聞いてみると、急に不思議そうな表情に。しばらく考え込むと、こんな答えが返ってきました。

「『アイデアが出てこないな』ということはあります。でも、焦りというのはあまりないかもしれませんね。良いアイデアが思いつかない日はありますが、思いつかなかったらもっと考える。それで出なかったらしょうがないなと思い、また違う日に考えます。使えなかったアイデア、いわば"お蔵入りのアイデア"を入れるために『オクラ入りゴミ箱』を作ったこともありますよ。穴が小さくて非常に使いにくかったのですが(笑)」

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気負いやプレッシャーを感じることなく、常にフラットな状態で創作に取り組む。それが多くの共感に繋がっているのかもしれませんね。最後にこれから創りたい作品や方向性についても聞いてみました。

「前にアニメーションを学校の課題で創ったことがあるのですが、今後はアニメーションと曲を組み合わせるなど、今までやったことがないチャレンジをしてみたいです。例えば、キャラクターのテーマソングを作ったり。僕にはデッサン力がないので、へなちょこなアニメーションになると思うんですけど(苦笑)」

【プロフィール】
ヨシダリュウタ
1996年大阪生まれ。多摩美術大学卒業。「おもしろさの仕組み」をテーマに、立体物やイラストを制作する。Twitterでは、身近にあるものをモチーフとし、"視点をずらすおもしろさ"を表現した作品を発表。『もしもアンテナ』(KADOKAWA)を出版するなど各種のメディアで活躍しながら、「妙に癒やされる」作品をSNSや個展で公開。

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