カニはファッショ二スタだった!? カニはなぜ着飾るのか?

公開: 更新: テレ東プラス

カニといえば、お祝いの席で食べる高級食材ですが、ファッショニスタでもあることはご存じでしょうか? 実は、イソギンチャクのポンポンをもったり、貝やウニ、海綿などをかぶったりして、アーティスティックな装いで生きるカニたちがいるのです。

カニを研究して45年の動物学者・武田正倫先生とともに、カニたちのかわいいファッションとその理由に迫ります。

kani_20200225_01.jpg▲武田正倫先生

「カニは、地球に暮らす生き物の中でも非常に特殊な存在で、ハサミを使うのがとても上手です。その特技を十分に生かした装いが見られるかもしれませんね!」と武田先生。さあ、どんなカニファッションを見られるのでしょうか?

帽子がステキな「カイカムリ」

kani_20200225_02.jpg画像素材:PIXTA

ファーストルックを飾るのは、アバンギャルドすぎるサンゴ製の帽子をかぶった「カイカムリ」です。

「カイカムリの仲間は1〜2cmの小さなカニで、常に何かに隠れていたいタイプ。よく海綿やホヤをかぶっている姿を見かけますよ。かぶっている海綿を取り上げて、かわりにスポンジを置いておくと、ハサミで自分が気に入ったサイズに加工してかぶっています」(武田先生)

まさにテーラーメイドの帽子屋さん。続いては、持っているアクセサリーがおしゃれなモデルさんの登場です。

両手のポンポンに注目!「キンチャクガニ」

kani_20200225_03.jpg画像素材:PIXTA

キンチャクガニは、体長2cmほどの小さなカニ。両方のハサミに小さいイソギンチャクを持ち、危険を察知すると、サッとイソギンチャクを掲げて戦闘モードに。

「実験で、複数のキンチャクガニのハサミからイソギンチャクをとりあげたことがあります。すると、イソギンチャクを持っている他のカニから横取りしようとしたり、ひとつのイソギンチャクを割いて2つにしたり。またいくつかのイソギンチャクを目の前に置いてみると、足でたくさん抱えこんだこともあるんです。カニたちにとってイソギンチャクは貴重品。いくつでも欲しいようです」(武田先生)

また、自然のイソギンチャクがどんどん大きくなるのに対し、カニについているイソギンチャクのサイズの変化はないんだとか。つまり、餌の量を加減し、大きさの調整をしている? まるで"飼育"、あるいは"盆栽"のようです。でも、カニがイソギンチャクをどこから入手してくるのかは謎のまま。ミステリアスなカニたちなのです。

ほかにもオシャレなカニがいっぱい!

kani_20200225_04.jpg▲本当にカニ?モダンアートな「モクズショイ」 画像素材:PIXTA

kani_20200225_05.jpg▲背中のマジックテープに海藻をペタペタ「イソクズガニ」

「モクズショイの装いは、海の中に漂うさまざまな生き物の幼生や藻がカニの体にくっついて育ったものです。一方、イソクズガニは、背中にマジックテープのカギのような毛が生えていて、自分でちぎった海藻を一度噛んで、せっせと背中にくっつけています。みんなタイプが違って面白いですね」(武田先生)

天然のファッショニスタたちが装う理由は?

kani_20200225_06.jpg
海の中のオシャレなカニたち。武田先生、なぜカニたちは装うのでしょうか?

「装うカニはみんな小さいカニたちです。つまり、彼らのファッションは、基本的には人間でいうところの迷彩服。まとっているのは本能による行動ですが、結果的にカモフラージュの役目を果たしています。ただ、カニの天敵である魚類は視覚ではなく嗅覚でエサを探すものが多いため、効果のほどは未知数。いまだ知られざるカニなりの理由があるのかもしれませんね!」(武田先生)

過酷な環境を生き抜くために"装い"の知恵を身につけた小さな命が、今日も豊かな海の中を闊歩しています。がんばれ、天然のファッショニスタたち!

【取材協力】
武田 正倫(まさつね)先生
1942年、東京都生まれ。国立科学博物館名誉館員、名誉研究員。磯やサンゴ礁から深海までにすむさまざまな海産無脊椎動物の分類、生態、発生に精通。『カニは横に歩くとは限らない』(PHP研究所)、『世界で一番美しい海のいきもの図鑑』(創元社)など著書多数。

PICK UP