▲写真提供:東京ドーム
ボクシングやプロレスの聖地として知られる東京・後楽園ホール。昭和37年(1962)の開業から58年を迎えるこの老舗ホールが、これほど長きに渡って愛用されてきた理由は何か。意外と知られていない後楽園ホールの詳細に迫った。
格闘技だけでなく『笑点』の収録も!
▲写真提供:東京ドーム
ボクシングやプロレスなど、格闘技の聖地として名高い後楽園ホール。東京ドームシティ内に建つビルの5階にあるこの施設はスポーツだけでなく、長寿番組『笑点』や、過去には『スター誕生!』などの収録にも活用されてきた。
稼働率114.5%(※2019年1月発表)とまさに引く手あまたのこの多目的ホールだが、意外と施設としての詳細を知る人は少ないのではないか?
そこで、後楽園ホールがこれほど繁盛する秘密を、同施設を運営する株式会社東京ドームに聞いてみた。
後楽園ホールはなぜ興行主にとって使い勝手がいいのか
「後楽園ホールの開業は昭和37年(1962)。当初は『後楽園ジムナジアム』という名称で、日本初の遮光式ホール、つまり窓がない空間として話題を呼びました。外の光が一切入らず、目的に応じて自由な演出ができるスポーツ用の貸しホールは、当時は珍しかったんです」
そう語るのは、株式会社東京ドーム・広報IR室の其田鯉宏さん。最初からボクシングを中心とするスポーツ会場としての用途が念頭に置かれ、1962年4月16日のこけら落とし興行もやはりボクシングだった。以降、後楽園ホールはプロレスやキックボクシングなど様々な興行に活用されることになる。
▲写真提供:東京ドーム
後楽園ホールが興行主から人気なのは、多目的ホールとして多くの利点を備えているからだ。
まず特筆すべきはアクセス面。JR水道橋駅から歩いてわずか2~3分の好立地は集客に都合が良く、東京ドームというランドマークがあるから、地方からやって来た人にもわかりやすい。
そしてもちろん、ハードとしての利便性の高さも後楽園ホールの大きな売りだ。
「南側(オレンジのシート)を除く三方の座席は可動式で、収容人数はその配列によって変動します。たとえば全席をオープンにして使うボクシング興行の場合は、定員2005人(立ち見を含む)。プロレス興行やテレビ番組の収録に用いる際は、必要に応じて座席を格納し、フロアスペースを広く取ることができます」(其田さん)
四方の座席がひな壇状に設計されているのも特徴で、最後方のシートからでも中央のリングが見やすい構造も、後楽園ホールのメリットの1つだろう。
▲写真提供:東京ドーム
「また、東西の2階部分にはバルコニー型のスペースがあり、こちらも使用者の裁量で立ち見スペースとして開放できます。中継が入る場合はここにテレビカメラが置かれることもあります」
「後方の座席よりもかえって見やすい」と、好んでこのバルコニーに陣取るファンも少なくない。これも後楽園ホールならではの光景と言える。
リングを所有しているのが大きな強みに
そして何より、ボクシング興行を催すプロモーターにとって、後楽園ホールを使う最大のメリットは、リングを完備している点だ。
「他の施設でボクシングの興行を行なう場合、自前でリングを手配し、設営しなければならないのが一般的です。しかし後楽園ホールはリングそのものを所有し、その設営を含めたパッケージ料金で提供しています。2000人規模のホールでこうした条件を備えた施設はあまりないでしょう」
さらに付け加えるなら、場内の案内係も後楽園ホール側が手配している。
「そのため極端に言えば、プロボクシングの興行については、興行主の方は試合当日に身ひとつで後楽園ホールへ来ていただければ、興行が成立するわけです」
ハード(会場)の準備が省力化できれば、その分、企画やマッチメイクといったソフト面に専念できる。これは興行主側にとって代えがたい魅力だろう。
最後に、其田さんからちょっとしたトリビアが。
「後楽園ホールでは年に十数回ほど、ダンスの競技会も行なわれています。そのためよく見ていただくと、足元の床板が競技ダンス仕様になっているのがわかるでしょう。つまり後楽園ホールは大きなダンスホールでもあるんです」
ボクシングやプロレスの試合を観戦に訪れる機会があれば、そんな知られざる後楽園ホールの機能美にもぜひ目を留めてみてほしい。
【取材協力】
後楽園ホール