「港区女子はセリーヌが好き」データでここまで分かる!新時代のシェアサービス:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。2月18日(火)の放送では、モノやサービスを個人間で共有する「シェアリングサービス」に特化したビジネスを特集。変化する価値観に合わせた新たな商売を追う。

裕福な社長に訪れた転機「こんなにモノを持っていたのか」

所有から共有へ──。エコが叫ばれる昨今、新しい形のシェリングサービスが続々と誕生している。「ピーステックラボ」(東京・渋谷)が運営する「アリススタイル」は、美容器具やキッチン家電など約4000アイテムを倉庫に持つシェアリングサービス。そのほとんどは個人の持ち物であり、個人間でモノを貸し借りする仲介役を「アリススタイル」が請け負っている。

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まず、出品者は貸したいモノを「アリススタイル」に預ける。借り手が現れたら「アリススタイル」が発送する。出品者は料金を設定し、売り上げの50%を受け取る、という仕組みだ。同サービスは2018年10月に開始し、登録者数は15万人を突破する勢いだ。

「『モノによって生まれる体験』を貸している」。そう語るのは「ピーステックラボ」の村本理恵子社長(64)。「パン焼き器をレンタルし、子どもの誕生日にパンを焼いたら、『家族でおいしいパンを食べた』という体験が実現できると話す。

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村本さんは、貧しいシングルマザーの家庭で育った。空腹を満たしてくれたのはパンの耳。コレクションしていたバービー人形の数々は、裕福への願望の表れだったという。苦学の末、東大を卒業後は「時事通信社」に入社。専修大や法政大で教授を務めた。その後、動画配信サービスを立ち上げて成功し、貧しかった頃から一転、モノに囲まれた生活を手に入れた。

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そんな村本さんに突然転機が訪れる。2011年3月11日の東日本大震災。揺れがおさまり、床に散乱するCDやDVDを見た村本さんは、「モノに囲まれる生活」を改めて考え直した。「こんなにモノを持っていたのか...。本当に必要があるのかなみたいな。でも持っているものは捨てちゃったらもったいないので、シェアできたらいいなと...」と村本さん。

現在は、シェアハウスで最低限のモノしか持たない生活を送る。バービー人形は友人宅に預け、あらゆるモノを処分した。共有のクローゼットにも個人の服はほとんどなく、多くの服やバッグは住居者間でシェアするという。「ここ(共有のクローゼット)が『アリススタイル』の出発点ですね」と村本さん。もちろん「ピーステックラボ」の本社もシェアオフィスだ。

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そんな中、村本さんが新たなプロジェクトを企画した。それは誰もが手ぶらで海外旅行に出かけられる「手ぶら旅」のサービス。現地で旅行者に「アリススタイル」の品を貸し出し、より身軽に旅を楽しんでもらうというものだ。

この「手ぶら旅」にANAが注目した。現在強化しているハワイ路線で「手ぶら旅」の導入を検討したいというのだ。スーツケースやトラベルグッズをはじめ、美顔器から子どもの遊び道具まで、衣類以外のほとんどを貸し出す新サービスは、果たして空の旅を身軽なものに変えることができるのか。

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「港区女子はセリーヌ好き」分析を生かしたシェアビジネス

一方で、高級ブランドバッグに特化した個人間レンタルも急成長している。「ラクサス・テクノロジーズ」(広島県広島市)が運営するシェアサービス「Laxus(ラクサス)」は、5年前から、エルメスやルイ・ヴィトンなどのバッグ約3万点を、月額6800円(税抜)で個人に貸し出すサービスを展開。また会員は、所有するバッグを「ラクサス」に預け、それを他の会員が借りた場合、月最大で約2000円を得ることができる。

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会員数は約2万人、ユーザーの継続率は95%に達し、人気のバッグは90人以上の予約待ちだという。40万回以上の貸し出し履歴をビッグデータとして蓄積・活用し、利用者の満足度を高めているのが急成長の秘密だ。

「いつ、誰が、どのバッグを借りたのか」というデータに加え、アプリで許可をもらったユーザーの行動データも収集。「行動範囲の広い人がグッチを好む」「百貨店よりショッピングモールに行く人はヴィトンを好む」「港区女子はセリーヌ好き」などの傾向を導き出し、ユーザーごとにオススメ品を提案する。同社の児玉昇司社長(43)は、「これが他社にはマネができない強みだ」と胸を張る。

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児玉さんは、かつて英語教材やサプリメントを扱う通信販売の会社を経営していた。しかし「売れればいい」という商売に疑問を感じ、アメリカで生まれたシェアリングエコノミーの概念に強く共感。バッグをシェアする仕組みを作り、大量消費社会に一石を投じたいと考えるようになった。

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児玉さんが取り組む新たな課題は、個人間だけでなくブランドから直接バッグを仕入れる方法だが、ブランド側はなかなか関心を示さない。そんな中、大手ブランドが希少価値を保つため、売れ残りを大量に焼却している事実が発覚し、社会問題にまで発展。これを受け、フランス政府は2023年までに廃棄を全面禁止する方針を発表。売れ残ったブランドバッグが行き場を失う可能性が出てきたのだ。

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この追い風に乗って、児玉さんは動いた。2月上旬、ブランドに絶大な影響力を持つファッション誌「VOGUE(ヴォーグ)」の編集部を訪れ、「ブランド側に、ラクサスが売れ残り品の受け皿になることを働きかけてほしい」と提案したのだ。ブランドが抱える廃棄問題の解決にもつながると訴える児玉さん。そして「ヴォーグ」側は、「ラクサス」独自のビッグデータに興味を示す。果たして異例の提案は通るのか。

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環境問題が取り沙汰され、サステイナビリティ(持続可能性)の重要さが叫ばれる昨今、消費の価値は大きく変わろうとしている。本当に必要なものとは何か...シェアビジネスを通して問題提起する「ガイアの夜明け」は、今晩10時から放送。どうぞお見逃しなく!

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