人とテクノロジーが融合する未来のモノづくり──日本最大の工具箱「トラスコ中山」数見篤さんに聞く

公開: 更新: テレ東プラス

ITとアイデア──。モノづくりの現場を陰から支えるプロツールの専門商社「トラスコ中山株式会社」取締役 情報システム本部長 数見 篤氏はそう語る。全国に多数の拠点を持つ「トラスコ中山」。ITとアイデアの組み合わせで飛躍的な利便性をつくりたい、そのアイデアを生み出す仕掛けが大事だと。

企業のトップなど、今、会いたい人をフィーチャー。MCの田村淳が鋭く斬りこみ、トークセッションから新たなビジネスの創造を目指す「田村淳のBUSINESS BASIC」(BSテレ東 毎週日曜よる11時)。今回番組では、シリーズ「地方創生ビジネス最前線!」と題し、地方で変革を起こそうとしている「あすびと福島」「オイシックス・ラ・大地」「トラスコ中山」「SAP」をフィーチャー。4社のキーマンが登壇し、地方創生について語った。

【番組出演時の書き起こし記事はこちら

そこで「テレ東プラス」は、全国のモノづくりを裏から支える「トラスコ中山」の数見さんを取材。企業理念や、ホワイト企業として認定されている「トラスコ中山」的企業文化、企業づくりについて話を伺った。

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他社と同じ道に成功の文字はない「独創経営」

全国に営業拠点68ヵ所・物流拠点26ヵ所を所有し、豊富な品揃えと独自の物流システムで地方のモノづくりを支える「トラスコ中山」。「がんばれ!! 日本のモノづくり」という企業メッセージを掲げる同社の特徴は、膨大な数の取扱商品だ。特筆すべきは約40万アイテムに上る豊富な在庫と、独創的な商品開発力だ。

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「モノづくり現場のユーザーの方は、現場で使用するスパナ、ドライバーなどの工具は『このメーカーのこの材質のこれでないと絶対ダメ』というこだわりを持っていることが多い。年に一度しか売れないものもあり、資産不良だという話もあるが、我々は逆転の発想で在庫は成長のエネルギーと考え、受注した商品をすぐにお届けできるよう在庫を拡充し、他社が置かないものも在庫する。この考えがお客様にも浸透していき『トラスコに聞けばたぶんあるだろう』という信頼につながった」(数見氏 以下同)

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業界最後発である同社が現在の地位を築けたのは、プロツールサプライヤーとして様々な方法で利便性を追求し供給力を高めてきたからだと話す。「これからはテクノロジーの力を駆使して、よりお客様のニーズに合うものを選択することが大事。しかし、効率化に目が行き過ぎると、どの会社も品揃えは同じになってしまいます。商品の何割かは、人が持つユニークさを生かし独自の選び方をする必要がある」と数見さん。

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成長の原動力である"地方のモノづくり"をこれからも助けていきたい

番組に出演した感想を尋ねた。「あのような番組に出る機会は初めてだったので、とても緊張しました」。一緒に登壇した異業種3社(「あすびと福島」「オイシックス・ラ・大地」「SAP」)からは、大いに刺激を受けたという。「各社の方とお話して思ったのは、志のすごさ。皆さんは自分の利益の追求ではなく、地域や人を幸せにしたいと魂をこめて話されていました」と収録時の感動を振り返る。異なる立場から社会貢献を模索することで"新たなビジネスが生まれる予感"もあったという。

淳さんの印象は「とても頭がいい方」。それぞれの活動内容などをシンプルにまとめあげる"言葉のプロ"の力量に舌を巻いたそうだ。「普段からしっかりとした持論を持ち、私たちが話すことを自分ごととして捉えていらっしゃる。当社の場合、皆さんまずは約40万の在庫数に驚かれますが、田村さんは、"なぜ在庫を抱えるに至ったか"という思想や背景に気づかれておられたので、感心しました」。

番組では、まだ東日本大震災の爪痕が残る東北にスポットがあてられた。「トラスコ中山」では、宮城県仙台市にある物流センター「プラネット東北」を紹介。同センターは、今年1月に増築が完成し、同社で最も規模が大きい「プラネット埼玉」(埼玉県幸手市)同様、最新鋭の物流機器を導入し、人工知能やロボティクスを駆使して、地域のモノづくりをサポートしている。

bb_trusco_20200217_05.jpg▲物流センター「プラネット東北」

また現在の取り組みで期待されているのが、同社の調達サービス「MRO(メンテナンス・リペアアンドオペレーションの略)ストッカー」だ。いわゆる「置き薬」の仕組みで、工場内の生産現場や建設現場などに隣接したロケーションに、軍手やブルーシートなどの工場用副資材を取り揃え、ユーザーは棚から使った分だけの料金を支払う。

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さらに使ったものや量もすべてコンピュータで管理し、最適な在庫の運営を行う。この取り組みにより、これまで納品に時間がかかっていた地方の問題を解消。同サービスは工場が密集した地域よりも不便な地方で活躍するのでは、と数見さん。「首都圏よりも、地方の人口減少が加速しているのが現実。だが日本にはモノづくりがある。成長の原動力である地方のモノづくりをこれからも助けていきたい」と熱弁する。

「トラスコ中山」は、取扱商品や在庫商品の拡充、物流・情報システムの強化を戦略的に行うことで顧客の利便性向上に努めている。

人を大切にする企業文化

人のアイデアがすべての屋台骨となる──。どれだけAIが進化しようが、ロボティクスが発達しようが、「トラスコ中山」が一貫して大切にするのは従業員だ。

こんな話があった。同社は営業本部から物流部をはじめ、物流センターにある託児所の保育士や食堂の料理人も、すべて正社員だ。昔から派遣社員は雇わず、正規雇用を行っている。

「コストでいえば正規よりも派遣社員の方が安いですし、必要なければ契約を解除することもできます。それでも派遣社員を雇わないのが、弊社トップ(代表取締役社長・中山哲也氏)のポリシー。働く人が安定して豊かな暮らしができるようにするのが企業の務めだと考えています」。

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異なる部署で社内副業ができる「ハイブリット勤務制度」や、社内外問わず、配偶者の転勤があった際はその転勤エリアについていき、勤務を続けることができる「おしどり転勤制度」など、社員を第一に考えた人事制度も多い。「ハイブリット勤務制度」では、社内副業を通して社員の知見や視野が広がり、それがさらなる社の栄養に。社員の金銭面も豊かになり、会社も潤う...まさに一石二鳥だ。

「基本は人。結局は人なんです」。人々が生き生きと働く未来のために──。今日も「トラスコ中山」は、地方のモノづくりを支援している。

(取材・文:森田浩明)

トラスコ中山 プロフィール】

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1959年創業。機械工具や物流機器、環境安全用品等の卸売企業。「がんばれ!! 日本のモノづくり」を企業メッセージとし、日本の製造業発展のため、機械工具などの工場用副資材(MRO)を中心に、プロツールを早くスムーズに安定して届けるほか、自社ブランドTRUSCOの企画開発も行っている。

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