「店を追い出されることも...」食物アレルギーで直面する現実と”命をあずかる”レストラン:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

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"食"で 命を守るレストランの挑戦

「一つ間違えたら死んでしまうので...」本来人生を豊かにするはずの食事が、命の危険を及ぼすこともある。近年増加傾向にある食物アレルギーは、じんましんや嘔吐、呼吸困難の末に命を落とすこともあり、子どもだけでなく大人になってから発症するケースも増えている。アレルギー症状を引き起こす食品は多岐にわたり、アレルギーを持つ人は、周囲の想像以上に不安な生活を強いられている。

食物アレルギーや病気による食事制限に悩まされる人々の実情と、そうした人々に向き合いながら"食"で命を守るシェフの挑戦を、ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(テレビ東京系列 毎週火曜夜10時~)で取り上げた。

テレビ東京ビジネスオンデマンドで配信中。

卵アレルギーを持つ小学5年生の能勢和彩(なぎさ)さんは、以前誤って食べた際に咳が止まらず、病院に運ばれた経験を持つ。和彩さんが通う小学校では、児童約580人のうち20人の生徒が食物アレルギーを持っており、給食の調理工程を分けて対応している。和彩さんの給食メニューは他の児童と違ってラップがかかり、誤って食べないように区別されている。中身を慎重に確認して食べる和彩さん。ランドセルにはアナフィラキシーショックを緩和する注射薬を準備し、万が一症状が出た場合は太ももの内側に注射するという。こうした不安を常に抱える和彩さんが「一度でいいから食べてみたい」のがバニラアイス。アイスクリームには卵が含まれているため、一度も食べたことがないという。

gaia_20200215_ka.jpg和彩さんのようにアレルギーなど食に悩みを持つ人々を救おうとするシェフがいる。東京・元麻布にあるレストラン「エピキュール」オーナーシェフの藤春幸治さん(43歳)だ。「エピキュール」にメニューはなく、藤春さんはアレルギーや病気など、食事制限がある客一人一人に対応した料理を提供している。体に優しいだけでなく、美味しく食べられる工夫が施された料理を求め、食事制限の必要がない客も多く訪れる。

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gaia_20200216_fu.png毎日アレルギーや食事制限がある客に料理を提供するが、それは命をあずかるのと同じこと。糖尿病をはじめ、カリウムが摂取できない腎障害や心臓病の患者もいる。試作と試食を繰り返し、自ら血糖値を測定して食材の効果を確かめ、医師にアドバイスを求めるなど、日々妥協を許さない。

gaia_20200215_ti1.jpgらに開店前のミーティングでは、その日の客のアレルギーや使用できない食材を細かくチェックし、調理器具や食器も料理ごとに分けて使用するなど細心の注意を払う。

神戸から来た夫婦は、ご主人が20年前に糖尿病を患って以来、糖質を制限する食生活になった。この日のコースメニューは、藤春さんが自ら収穫した菊芋のスープから。菊芋には血糖値の上昇を抑える効果があるという。

gaia_20200216_image04.jpgラの白子には小麦粉の代わりに高野豆腐の粉をまぶし、豆乳で作った特製バターで味付け。タンパク質を豊富にし、糖質を抑えた。ご主人が「最後まで宝石のようなお皿」と評したこの日のコースは、全6品で1万972円。家庭では味わえない手の込んだ料理が、客の感動を呼ぶ。

gaia_20200216_image05.jpg春さんのこうしたメニュー作りの原点は、30歳のときの苦い経験からだった。24歳の時にフランスに渡り本格的に腕を磨いて帰国。結婚式場で料理長を務めていた際に、糖尿病を患っていた新郎を迎えることに。その結婚式で新郎に提供したのが「ロース肉のしゃぶしゃぶ」だった。「高砂に座る新郎に悪いことをしてしまった。今でも忘れられず、つらい」と語る藤春さん。知識不足だった当時の悔しさから今の道に進む。

藤春さんは、客の希望の料理を形にすることもある。卵アレルギーを持つ8歳の齋田陽穂(はるほ)くんの憧れの料理はオムライス。以前卵を食べて呼吸困難になったことがあるという。その陽穂くんの母親からのリクエストで、今回のメニューに加えることになった。米粉を豆乳で溶いた生地にターメリックで味付けして卵を再現、味も本物に近づけた渾身の作。

gaia_20200216_image06.jpg陽穂くんは、人生初のオムライスにそわそわしていたが、一口食べると笑顔に。

gaia_20200216_image07.jpgそれを見た母親は「お店を追い出されることが何度もあって...。アレルギーで責任を取るってすごく大変なことだと思うんです。一つ間違えたら死んでしまうので。それを考えて背負ってくださる...一緒に」とこれまでの苦労を吐露し、涙ぐむ。

gaia_20200216_image08.jpg「食事制限がある人もない人も、家族みんなで同じ料理を楽しんでもらいたい」と藤春さん。そんな藤春さんには長年の夢があった。それは、卵や乳製品のアレルギーを持つ子どもが食べられるアイスを作ること。

そこで藤春さんの思いに賛同した「日進乳業」(愛知県北名古屋市)が商品開発に着手。大手メーカーのアイスなどを下請けで作っている会社だが、開発に一年を要したという。本来アイスクリーム作りに欠かせない卵と乳製品だが、同社が試行錯誤の末に代用としてたどり着いたのは、豆乳、おから、こんにゃく粉。藤春さんが長年夢見た"夢のアイスクリーム"が完成した。

gaia_20200216_image09.jpgその"夢のアイスクリーム"が、卵アレルギーを持つ能勢和彩さん(前出)のもとに届けられる。

gaia_20200216_o1.jpg友達と一緒に食べる初めてのアイス...。「みんなと同じものが食べられるのですごく嬉しいです」と笑顔になる和彩さん。

和彩さんが喜んでいた様子を伝えると、藤春さんは「嬉しいわ...感慨深いですね。やったね!」と安堵。"命をあずかるレストラン"の挑戦はまだまだ続く。

この放送は、テレビ東京ビジネスオンデマンドで配信中です!

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