地方創生ビジネス最前線! 田村淳が絶賛する売上げ20億超えの”サヴァ缶”とは?

公開: 更新: テレ東プラス

企業のトップなど、今、会いたい人をフィーチャー。MCの田村淳が鋭く斬りこみ、トークセッションから新たなビジネスの創造を目指す「田村淳のBUSINESS BASIC」(BSテレ東 毎週日曜よる11時)。東京オリンピック・パラリンピックの開催により盛り上がりを見せる一方で、少子高齢化や人口減少などの目的に直面している地方。都会と地方の格差は広がるばかりだ。しかし、「ピンチはチャンス!」と変革を起こそうとする人たちもいる。今回の登壇企業は、「あすびと福島」「オイシックス・ラ・大地」「トラスコ中山」「SAP」の4社。2月2日(日)の放送では、「オイシックス・ラ・大地」の活動を深掘りした。

【オイシックス・ラ・大地:高橋大就(たかはし だいじゅ)さん】

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安心・安全で良質な食材を全国から取り寄せることができるサービスを提供し、利用者は累計270万人を突破。生産者はコンスタントに収入を得ることができ、「オイシックス・ラ・大地」の活動は、地方活性化の手助けとなっている。

高橋「農業や漁業、日本の生産者の方々が作るものって、本当に素晴らしいんです。でも、必ずしもそれが選ばれない、もしくは伝わっていないというのが現実で、産業としてはかなり厳しい状況」

現場で聞こえる様々な声に耳を傾け、ビジネスに繋げてきた高橋。作り手ではない「よそ者」だからこそ、客観的に見ることができるという。

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地方の弱点は、その土地でとれる食材の本当の価値に気がついていないこと。そのため「オイシックス・ラ・大地」では、生産者に顧客の感想や要望を伝え、ある種の通訳者となることで、食材の新たな価値を生み出している。それこそが高橋が考える"ヨソモノのチカラ"だ。

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「オイシックス・ラ・大地」の大ヒット商品が、料理に必要な食材とレシピがセットになった「ミールキット」。毎週20以上、年間では400近いメニューを提案している。利用者にとっては、下ごしらえなどの手間が省かれ、美味しいメニューが作れる便利な食材セットであり、生産者にとっては、自分の育てた作物が食卓を飾る誇らしい商品でもある。

高橋「生産者の方に消費者の声を届けるというのはすごく大事。彼らが一番嬉しいのは、とにかく"美味しい"と言っていただけること。それを返してあげると、じゃあ次は新しいことに取り組んでみよう、もっとお客様に喜んでもらいたいという良い循環が回ってくる」

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だが、こだわりが強く頑固な生産者も多い。元々は「白なす」という名前で販売していたという「トロなす」。生産地では、色が薄いものを「白い」と言う風習があり、生産者にとってはこだわりがある名前だったが、「白なす」では全く売れなかったそう。

顧客の声に耳を傾けてみると、「他のなすに比べてとろけるように柔らかく濃厚な味わい」との声が寄せられていた。そこで農家を説得し、商品名を「白なす」から「トロなす」に変更。爆発的なヒット商品となった。

「商品としては何も変わらないし、作る時のこだわりも変わってない。ブランディングが入ったから売れたわけですね」

この他、消費者の声を反映し、生産者と一緒に新しい品種を開発したパターンもある。

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「生で食べられるカボチャが欲しい」という声を聞き、開発された「かぼっコリー」。従来のカボチャを通常より早く収穫することで、新感覚のサラダ用食材として売り出した。生産者と食卓を繋ぐ「ヨソモノのチカラ」は、新たな生産方法や意識改革を促し、地方の活力を生み出している。

高橋は、もう一つ重要な活動を行なっている。東日本大震災で被害を受けた食の生産者たちを支えるため、ビジネススキルの伝授などを行う「東の食の会」だ。

高橋「震災は、東北の食産業がなくなってしまうのではというくらいの衝撃でした。それを何とかしようと作った団体です。取り組みは大きく言うと4つ」

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1、「販路を創る」
東北の生産者と販売を行う企業を繋ぎ、新たな販路を開拓する。これまで約2000件の取引を繋いできた。

2、「商品を創る」
生産者とクリエイティブチームがタッグを組み、これまでにない商品開発を目指す。商品に付加価値をつけ、新たなモデルケースを生み出す。

3、「ヒーローを創る」
農家や漁師の中から、みんなの憧れとなる"ヒーロー生産者"を誕生させる。生産者のやる気を引き出し、若い世代に刺激を与える。

4、「コミュニティを創る」
生産者を招き、ビジネススキルを伝授するためのイベントを開催。地域全体を盛り上げる。

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東北の一次産業を元気にさせるには爆発的なヒット商品が必要と考え、岩手県の企業と「東の食の会」で、「サヴァ缶」という缶詰を共同開発。2018年の日経トレンディ「ヒット商品ベスト30」にもランクインした。

高橋「"サヴァ"はフランス語で"元気ですか?"という意味。岩手から全国へ向けて"元気ですか?"と声をかけるイメージで名づけられました。累計600万缶、売り上げは20億円を超えています。当時、東北で買い叩きみたいな状況がある中で、むしろ3倍以上で売れるものを作ろうと。日本のサバ缶は味噌煮と水煮しかないんですよ。洋風(のサバ缶)が丸々あいているなと気づいて、オリーブオイル漬けにしました」

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スタジオでは淳が「サヴァ缶」を試食。

「美味い! 普通のサバ缶とアプローチが全然違う! 洋風のサバ缶って、何で今までなかったんですかね?」

高橋「食のビジネスはまだまだ固定観念が強くて、サバ缶のパッケージもだいたい和な感じ。ポップなパッケージも、"食の分野ではそういうドぎつい色は使わないんだよ"と言われましたが、逆にそういう固定観念がチャンスだと思い、絶対にこの色は譲らなかった」

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こちらは、「東の食の会」が次に仕掛ける新たな商品「リンゴスター」。震災をきっかけに集まった福島の若手農家たちと共同開発した、りんご酢のサイダーだ。地方が伸び悩む原因のひとつは、ガチガチに縛られた固定観念。高橋は"よそ者"の力を駆使し、常識を打ち破る自由な発想で地方に活力を与えてきた。

高橋「私もルーツは東北ですが、特に保守性が高い地域。元々漁師さんには"隣浜は敵"という感覚があり、半ば強引に入っていかないとコミュニティ作りができない。彼らは震災直後も明らかに困っているのに、"うちは大丈夫"って言うんです。でも、どんどん外の人に助けを求めた方がいい。一緒にマーケットを大きくしたり、付加価値を付けて漁業や農業自体をカッコよくしていく。大変な時こそ一緒に盛り上げていける仲間になれるんです」

"よそ者"が関わることで爆発的なヒット商品が生まれ、新たなヒーローが誕生する。そして、ヒーロー生産者に憧れを持つ次の世代が育つ...。このサイクルが地方を元気にする原動力となるのだ。

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次回2月9日(日)よる11時放送の「田村淳のBUSINESS BASIC」では、日本の道具箱と呼ばれる「トラスコ中山」の超斬新な供給システムや活動を深堀りしていく。どうぞお楽しみに!

この放送は、現在「BSテレ東YouTube公式チャンネル」で配信中です!

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