「脳外科医」と「ファッションデザイナー」。まったく以て接点が見つからない2つの職業を、同時並行で生きるパワフルな......いや、カラフルな女性がいる。「あ! テレビで見たことある〜!」という人も多いことだろう。そう、Drまあやだ。
脳外科医の仕事では黒髪に黒縁メガネという、当然と言えば当然の女医姿。しかし、一旦病院を後にすると、黒髪のウイッグを外し"カラフルデブ"なファッションデザイナーへ。そう、実はこのカラフルなヘアースタイルこそ、彼女の"地毛"。こんな奇抜なセンスを創造するとは、一体どんな頭脳をしているのか──。
いずれも共通しているのが「頭の中」。ということで今回は、個性的なDrまあやのファッションデザイナーの顔に迫ってみる。
ファッションデザイナーとしての「夢」が叶い、世界デビュー!!
2019年10月、カナダ・バンクーバーのファッションイベント「バンクーバーファッションウィーク」で、Drまあやは自身初となるショーを行った。デザイナーとしてランウェイを歩くことは、彼女にとってひとつの夢だった。
──まずはファッションショーの成功、おめでとうございます!
「ありがとうございます。やっぱり『ファッションショーに出る』ということを、ひとつの目標にしていましたから。このお話をいただいた時、『ようやく私もデザイナーとして認めてもらえたのかも』という嬉しさを感じました」
──脳外科医も続けながらファッションショーの準備。相当大変だったはずですが......
「それはもう(笑)。休みがない、睡眠が削られるなんてことは当たり前で、何を隠そうショーが始まる直前まで、宿泊したホテルで服の調整をしてましたから! ほんとにギリギリでしたよ。でも、自分の夢が叶う大きなチャンスですからね。そんなのは苦労だなんて感じませんよ。「Dr.MAAYA」という名前を知っていただくには最高の舞台ですし、世界に挑戦できたことは本当にラッキーでした」
──それにしても、脳外科医とファッションデザイナーの仕事、どんな風に時間を分けているんですか?
「そうですね、クリニックの院長なので、脳外科医として外来診察にあたっています。あとは土日に北海道と釧路で、当直医をしているんです。釧路の病院では、土曜の午前に外来を担当して、午後から日曜まで当直。月曜の朝の飛行機で東京に戻り、小平の病院で午後の外来を担当しています。なので平日から週末まで、日中はほぼ脳外科医をしてますね(笑)。ファッションデザイナーになるのは、平日のお休みの日と夜間です」
2013年に「Dr.まあやデザイン研究所」を設立して以来、子どもの頃からの憧れだったファッションデザイナーという職業をはじめた彼女。超多忙な日常の中でも、このファッションショーに賭ける思いはひとしおだったに違いない。
カナダでのファッションショーを成功裏に終わると、翌11月には東京・原宿で「感謝祭」と題し、ランウェイで使用した衣装の展示と販売を行っている。
"凱旋展示"となる、東京・原宿での「感謝祭」
原宿で3日間にわたり実施された「感謝祭」は、「バンクーバーファッションショー」で披露した12着を、現地に来られなかった人たちにも見てもらうと行ったもの。今回のテーマである「アートを着る」をひと目見ようと、ファンや業界関係者など多くの人が詰めかけた。
会場内に入ると、そこは美術館のような世界。彼女のデザインの特徴である虹色の色彩が空間を演出し、一瞬にして非日常的な世界へと魅了する。
特徴的なのは服の素材。「グルー」という普通は服に使用しないものだが、カラフルでポップな世界観を伝えるには、発色性に優れているという。
ただ、これを着るモデルさんたちからは、「服が重い!」と言われたよう。
「でも頑張って着てもらって、みんなでランウェイを歩いたら、『この服、着ていると楽しい気分になれる♪』と、私が表現したかったことを理解してくれるようになりました」(Dr まあや)
「カラフルも みんなで着れば 怖くない」。デイリーユースのアイテムたち
会場では"普段使いできる"服や小物などの販売もあり、「感謝祭」や「Dr.MAAYA」というブランドを知らなかった飛び込み客も、「可愛い!」と手に取る盛況ぶりだった。
特徴的なのは、カラフルなだけではない。柄をよーく見てほしい。
これ、皮下脂肪のCT画像だ! しかも、Drまあやご本人の。
医療界とファッション界のコラボは、Dr.MAAYAでしか表現できない特権だろう。「皮下脂肪」と言われなければわからないほどに、美しい青と緑のコントラスト。芸術作品と言っても過言ではない皮下脂肪、まさしく脂肪を希望に変えた賜だ。
ほかにも、Tシャツやポーチ、クリアファイルやストラップなど、"Dr.MAAYA初心者"でも気軽に身に着けられるアイテムがそろう。
最後に、Drまあやに今後の目標を訊いてみた。
「実は来年、『ニューヨークコレクション』に出てみないかというお声をいただいているんです。今年のカナダに続き、来年はいよいよアメリカ・ニューヨーク。このファッションショーに参加することで、もしかしたら世界的に有名なファッション雑誌の『VOGUE』や『コスモポリタン』などに紹介されるかもしれません。なので、次なる目標は『ニューヨークコレクション』ですね」
着実にファッションデザイナーとしての歩を進めているDrまあや。その一方で、「脳外科医を辞めることはありません。それが私の原点なので」とも話している。
医者とファッションデザイナーという異色の肩書きで、2020年もますます活躍の幅を広げそうだ。
【プロフィール】
Drまあや
脳外科医。ファッションデザイナー。岩手医科大学医学部卒業。セントラル・セント・マーチンズ卒業。2013年にDr.まあやデザイン研究所を設立。現在も、脳神経外科として勤務の傍ら、ファッションデザイナーとしての活動を続ける。2018年2月、アトリエ兼ギャラリーショップをオープン。
SHOP & ATELIER「Dr.まあやデザイン研究所」
住所:東京都文京区千石4-22-8千石マンション101号