世界中で人気の秋田犬。その裏にある「殺処分されてしまう、秋田犬の実情」

公開: 更新: テレ東プラス

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フィギュアスケートのザギトワ選手、ロシアのプーチン大統領、俳優のリチャード・ギア......これらの人物に共通しているのは秋田犬(あきたいぬ)が大好きということ。日本犬で初めて天然記念物に指定され、均質の取れた大きな体に、もふもふの体毛。つぶらな瞳にくるっと丸まった尻尾を持ち、日本のみならず世界中の犬好きを虜にしている秋田犬。海外で秋田犬を示す#Akitaをインスタグラムで検索すると、投稿数は250万件以上(2020年1月初旬現在)!

しかし人気の裏には、飼育頭数の減少という現状がありました。秋田犬を実際に見ることができる、秋田市内にある秋田犬ステーションで現状について話を聞きました。

悲しい秋田犬を取り巻く今。

現在の秋田犬を取り巻く環境は、次世代の若手飼育者を育成できないまま、ベテラン飼育者が引退をしてしまい、後継者不足という問題を抱えています。また、飼育放棄されてしまった秋田犬は殺処分対象になってしまうと、秋田犬の保存保護活動をしている一般社団法人 ONE FOR AKITAで秋田犬のトレーナーをしている鈴木明子さんは言います。

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──こんなに人気が高まっているのに、殺処分をされてしまうのはどうしてですか?

「人気は高まっていますが、やはりメジャーな犬種ではないこと。例えばトイプードルなどのいわゆる愛玩動物と言われている犬種は比較的引き取り手も多く、殺処分を免れやすいんです。しかし、秋田犬は大型犬であること、許容範囲が狭く、慣れるのに時間がかかってしまうこともあって、殺処分が決定されてしまうんです」

──なぜ飼育放棄が行われてしまうのでしょうか?

「私は今まで30年以上犬と関わる仕事をしてきましたが、こんなに賢い犬種はいません。そしてみなさんご存知の通りとても忠誠心がある犬です。しかし賢すぎるが故に、しつけを怠ると扱いづらい犬になってしまうんです。実は私は秋田犬の仕事をする前は秋田犬が嫌いでした。飼い主には忠実でも、他人は噛んでしまうイメージが強く、扱いづらい犬種という認識でした。

でも秋田犬を実際に飼ってみると、きちんとしつけをすれば噛むこともなく、とても頭のいい犬種だということが分かりました。きちんと秋田犬と向き合えば、飼い主の言うことを守り、飼い主がNOといったことは絶対にやらない。飼い主が秋田犬の全てになるんです」

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人間のエゴイズムで犬が減る。

現在、日本よりも世界で登録件数が増加中で、秋田犬の犬籍登録数は全世界で6,550頭(2016年)。しかしその内日本は2,628頭なんだそう。

──世界での登録数が増えているそうですね。

「以前、中国で血統証のない秋田犬同士を交配し、血統の劣化が問題になりましが、『秋田犬保存会』(※)が中国、北米、ヨーロッパに20の支部を作り、本来の秋田犬を守るためにテコ入れをしました。おかげで秋田犬への理解も深まり、世界中で秋田犬の血統が守られています」

※秋田県大館市に本部を構える公益社団法人秋田犬保存会。秋田犬の保存繁殖や血統書の作成を行う団体。

──血統証のない秋田犬同士を交配させた理由は?

「単純にお金儲けのためだと考えられます。秋田犬は中国で大変人気が高いのですが、見た目だけ秋田犬であればいい、と考えた人がいるのでしょう。ただ、犬でお金儲けをしようと考える人がいるために、秋田犬の減少にもつながってしまいました」

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──海外での秋田犬の受け入れは現状どのような雰囲気なのでしょうか。

「北米やヨーロッパで飼育される飼い主の方が、秋田犬をよく理解し、動物愛護意識がとても高いという印象を受けます。きちんと家族の一員として受け入れる飼い主がほとんど。日本でも動物愛護法がだんだん厳しくなっていますが、遅いくらいだと私は思っています」

──日本の展示販売は国内外で問題になっていますね。

「秋田犬ステーションでも秋田犬を見せることに対して、『犬を見世物にしているのでは』と賛否両論があります。ここには飼育放棄をされた秋田犬もいて、そこから立ち直り、頑張る姿を見せることによって、殺処分をゼロにするための啓蒙活動のお手伝いをしているんです。今日の取材のために協力してくれた杏は宮城県から保護しました。

私たちの団体では、秋田犬を見てもらうことはしています。ストレスになることを避け、触らせませんが、みんなカメラ目線でお客さまへ対応しています。杏をはじめ、ここにいる犬たちはこのステーションに仕事として来てくれているんです。人前に出ることが自分の仕事ということを分かってこの場所でみなさんと会ってくれています。この場を通じて秋田犬を家族として受け入れたいと思ってくれる人が増えればと願い活動をしているんです」

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なお秋田犬ステーションは、毎週火・土・日曜の決まった時間に秋田犬に会える施設であり、秋田犬ファンが集う人気スポット。時間になるとどこからともなく人が集まり写真を撮っていきます。2019年は特に海外のファンが多く詰めかけたんだとか。

akitaken_20200129_05.jpg▲キュートな秋田犬グッズも販売されており、収益の一部が秋田犬の保存・保護に役立てられます。

大人気の秋田犬の現状は思った以上にシビア。
ONE FOR AKITAの活動のおかげで、秋田県内の秋田犬の殺処分は2年連続でゼロになったそうですが、日本国内でゼロになったわけではありません。人間のエゴが秋田犬を減らしているんです。いま改めて、犬の存在を考えてみませんか。

【取材協力】
一般社団法人 ONE FOR AKITA

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