近い将来、紅葉が楽しめなくなる!? 気象予報士に聞いた、美しい桜や紅葉を今のうちに見ておくべき理由

公開: 更新: テレ東プラス

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街路樹の葉もすっかり散って、暖冬とはいえ冬らしい寒い日が続いています。今年の紅葉はいかがでしたでしょうか? 場所によっては色づきがイマイチで、枯れたようになっている葉もあったようです。

近年では猛暑や台風などの異常気象が、四季の景色にも影響を及ぼしているようです。日本気象協会 気象予報士の真木伸之さんに話を伺いながら、美しい景色に会いに行くポイントを探ってみたいと思います。

tenki_20200128_01.jpg▲日本気象協会 気象予報士の真木伸之さん

桜の開花時期は早まっている?

──最近では春や秋がどんどん短くなっている気がします。

「経験則でいいますと、夏が平年より暑い年は、それだけ残暑が長引きます。これによって秋が短くなり、冬にも最低気温が下がりにくい傾向にあるようです。このため季節感がどんどんなくなっている印象ですね」(真木さん)

──やはり温暖化が影響していると。先ほど冬の最低気温のお話がありましたが、桜は冬が寒く、春が温かいと開花が早まるそうですが。

「そうですね、いわゆる休眠打破──花芽が冬に休眠し、春に目覚めるサイクルが影響しています。ただ、開花時期については、春先の温かさの影響が大きいのではないでしょうか。4月1日の平均的な桜の開花状況をいわゆる桜前線といったもので見てみると、1961年~1970年は九州から本州南岸にかかっていたものが、2001年~2010年は見た目で200キロか150キロぐらい北上しているようです」(真木さん)

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──今まではゴールデンウィークが見ごろだった桜が、きれいに見れなくなる場所もあるかもしれませんね。花つながりで花粉については、夏の猛暑が続くと、次の年は増えると聞いています。近年は猛暑日が続いていますが、その量にも影響していそうです。

「花粉の生成量については、夏場の気温と日射量、降水量の多寡、冬の気温が影響しています。ただ、夏が暑すぎたり、雨が降りすぎても、花芽は育ちにくくなります。台風によって木が痛むと、花粉が付かなくなることもあるわけです」(真木さん)

──いろいろな条件が関係しているんですね。2020年はどうでしょうか?

「専門家によるフィールドワークの結果などを踏まえると、現段階では東日本と西日本で、例年に比べて花粉の飛散量は少なくなると予測しています。台風でものすごい雨が降ったことで、花芽の成長が阻害されたようです。ただ、北日本では花粉の飛散量が増える見込みとなっています」(真木さん)

──春先が温かくなると、それだけ花粉の飛び始めも早くなるのでしょうか?

「そうですね、例年よりも早まる可能性があります」(真木さん)

内陸部ほど紅葉の色づきはよくなる?

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──ここ数年は紅葉の色づきが、あまりキレイではなくなっている印象がありますが。

「一般に紅葉は朝晩の冷え込みにより、日中との寒暖差が大きくなるほど色づきが良くなると言われています。近年では冷え込みが弱くなっているので、その影響もあるでしょう。また、今年は大型の台風が列島を通過しましたので、塩害も関係しているかもしれません」(真木さん)

──台風による塩害が、内陸部の紅葉にも影響するのですか?

「台風は海上の時化で巻きあげた海水を、広い範囲に雨として降らせます。内陸部でも影響はないとはいえません」(真木さん)

──比較的に寒暖差が起こりやすい場所はないのでしょうか?

「海は温まりやすく冷めにくいため、その影響もあって沿岸部ほど気温の変化が少なくなります。内陸部ほど1日の気温の変化は大きくなりますね。ただ、紅葉の色づきは日照時間が短くなると始まりますので、地理的な条件も関わってきます」(真木さん)

雪の降る地域は狭まるが、その量は増えている?

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──近年では冬日が少なくなり、スキー場でも雪が降らないという話を聞くようになりました。

「そうですね、12月でも営業できないスキー場が増えています。長期的に見れば、温暖化の影響が出てきているのかなと思います」(真木さん)

──都心でもここ数年は雪が降っていない印象です。

「太平洋側で雪が降るときには、本州の南に低気圧があり、それが北から寒気を引き込むことが多いです。これを南岸低気圧と呼びますが、この際の東京周辺における地上付近の気温は、近年では雪になるまで下がらないことも多いです。気温が上昇したため、地上に到達するまでに雪の状態を保ちにくくなっているのだと思います」(真木さん)

──その一方で、ゲリラ豪雨のようなドカ雪が降るという話も聞きますが。

「飽和水蒸気量との関係から、一般的に気温が上がるほど、雨の降る量は増えます。つまり、温暖化によって雪の降る標高が高くなり、降雪する地域は狭くなりますが、降雪量自体は増えていくわけです」(真木さん)

日本から四季の変化が失われるにつれて、その美しい景色にも影響が出てきているようです。ゴールデンウィークの桜、沿岸部にある美しい紅葉などは、今のうちに訪ねておかないと、もう見れなくなってしまうのかもしれませんね......。

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