油抜きからシャリ切りまで...1日3000個以上売れるいなり寿司! 老舗のワザを大公開:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

老舗「いなり寿司店」秘伝の味と技を大公開

今回ご紹介するのはアメリカ・シアトル郊外でケータリングシェフをしているジェシカさん(36歳)。

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日本びいきのジェシカさんが愛してやまないのは「いなり寿司」。その歴史は古く、江戸時代から、"振り売り"と呼ばれる移動販売で親しまれていました。

「甘さとしょっぱさの絶妙なバランスが魅力だし、おばあちゃんとの思い出の味なの」と話すジェシカさん。13年前に他界したジェシカさんのおばあちゃんは、アメリカ軍の兵隊と結婚した日本人だったのです。

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初孫として溺愛されていたジェシカさん。おばあちゃんがよく作ってくれたのが「いなり寿司」で、ジェシカさんはその影響もあり、学生時代から料理に目覚め、今は宴会やパーティーの席で料理を作る仕事に就いています。

ジェシカさんにいなり寿司を作ってもらうと...。出汁には昆布と椎茸だけでなく、玉ねぎやニンジンも加えられます。玉ねぎを入れると甘みが出るそうで、これはおばあちゃん秘伝の作り方。途中で花かつおも加え、6時間かけてようやく出汁が完成しました。油揚げにもきちんとお湯をかけて油抜きし、先程取った出汁に味付けをして煮込みます。

「煮込みが一番難しいの。味をしみ込ませようと煮込みすぎると焦げちゃうし...」。おばあちゃんがいない今、わからないことも沢山ある様子。そして、仕込みから10時間ほどかけて出来上がったジェシカさんの「いなり寿司」がこちら!

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ジェシカさんには「ニッポンに行って、伝統的ないなり寿司の作り方を学びたい。おばあちゃんのいなり寿司の味を追求してみたい」という夢がありました。そこで、ジェシカさんをニッポンにご招待!

まず向かったのは、いなり寿司の老舗「志乃多(しのだ)寿司」で修業を積み、老舗の技を今に受け継ぐ東京・巣鴨「八千穂寿司」。八千穂寿司は創業48年で、1日3000個以上のいなり寿司が売れることも。ジェシカさんの熱意を伝えたところ、快く受け入れて下さったのは、二代目店主・森本貴之さん。

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お店は貴之さんのお母さんで女将のしさこさん、奥さんの愛さん、叔父さんの高田猛志さんと、家族4人で切り盛りしています。

まずは、お店の奥で伝統のいなり寿司を食べさせていただくことに。ちなみに、関東では定番の俵型のいなり寿司に対し、関西では三角形が一般的で、中身も関東が酢飯だけなのに対し、関西は五目飯。作り方は関ヶ原を境に分かれています。

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さてジェシカさん、ニッポンで初めて食べるいなり寿司の味は...?

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「オイシイネ。こんなに美味しいなんて、朝昼晩3食でも食べたい味です」。感想を聞いて貴之さんもしさこさんも嬉しそう。

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他にも冬限定の「柚子いなり」や食用バラをご飯に混ぜ込んだ試作品まで出してくださいました。「いなり寿司の甘い味にバラの風味がアクセントになっていて素晴らしい発想力ですね」とジェシカさん。あまりの美味しさにひとつ残らず完食! 早速作り方を教えていただきます。

まずはいなり寿司の命とも言える「油揚げ」から。実はジェシカさん「油揚げの煮方をぜひ知りたいです。甘さとしょっぱさのバランスに悩んでいます」と話していました。八千穂寿司では鍋にたっぷりの熱湯を沸かし、油揚げをしっかり浸して油抜きを行います。

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たっぷりの熱湯に沈めることで油がしっかり抜け、味が染み込みやすくなるそう。「いきなり沈めないで馴染んできてから沈めるような感じで...」と話す貴之さん。一度の油抜きで約500枚がお湯に浸るよう満遍なくかき混ぜますが、お湯を吸った油揚げは、ひとすくいで10キロにもなるとのこと。かなりの重労働です。「今まで油揚げにはお湯をかける方法しか知らなかったので、お湯に浸す方法で今度からやってみます」とジェシカさん。

次に教えていただくのは味付け。使うのは醤油、砂糖、みりんなど一般的な調味料ですが、大事なのはその配分。味を決める絶妙な配分は秘伝中の秘伝なので、ジェシカさんだけにこっそり教えていただきます。

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味見したジェシカさんは「甘すぎずベタつかず舌をくるむような味わいがありますね」と絶妙な味のバランスを表現。「いい表現だね!うまく表現したね」と喜ぶ貴之さん。油揚げは、秘伝の味付けで30分煮込んだら常温で半日ほどかけて冷まし、じっくりと味をなじませたら完成です。

続いてはシャリ作り。ここにも名店ならではの細やかなこだわりがありました。お米は、弾力があり控えめな甘さが特徴の山形産・はえぬきに強い旨味に優れた石川県産・コシヒカリを配合したブレンド米を使います。炊き上がったら、ここからは時間との戦い。お酢をかけたら1分くらいで、ダマにならないよう手早く均等にほぐします。

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「こんなに早くシャリ切りするのは初めて見ました」と驚くジェシカさん。シャリ切りは、ご飯一粒一粒に酢をコーティングするために行うもので、時間をかけてしまうと米同士がくっついてダマになったり粘りが出てしまいます。できたてのシャリを試食させていただくと...。「私が作る酢飯よりも酢を強く感じます」とジェシカさん。しかし、この味付けにも理由がありました。シャリだけで食べると酢を強めに感じますが、いなりに混ぜたり具材を入れて巻いたりすると、それが調和。よって、シャリの状態では強めの方がいい、とのこと。

次はいよいよ、いなり寿司を包む作業です。教えて下さるのはしさこさん。シャリを油揚げで包む前にもひと工夫ありました。シャリに油揚げの漬け汁をまんべんなくまぶしておくのです。シャリは握らず、詰めすぎないのがポイント。

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油揚げの中にフワッとシャリを落とす感じで入れたら、握らずにくるりと回して出来上がり。こうすれば米が潰れず、口の中でほどける食感になるとのこと。しさこさんはいとも簡単に作りますが、ジェシカさんはアメリカでの握る癖が出てしまい、大苦戦。

「もっと練習したい!」というジェシカさんのために、閉店後も、しさこさんがつきっきりで猛特訓。子どもの頃、おばあちゃんに教わったいなり寿司...その頃のことを思い出しながら包み続けること1時間。きれいな俵形のいなり寿司が握れるようになりました。

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「この体験は絶対に忘れません」とジェシカさん。その後は、お店の皆さんと夕食へ。ずっと興味があり、食べてみたかったというお好み焼きをいただきます。

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翌朝。アメリカに帰ってからも八千穂寿司のいなり寿司が作れるようにと、もう一回いなり寿司作りにチャレンジしたジェシカさん。ふんわりとした見事ないなり寿司を次々作ります。「とても上手! こんなに短い時間で出来るなんて...」と、しさこさんもビックリ! 見事合格をいただきました。

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別れの時。ジェシカさんから八千穂寿司の皆さんに手の温度で色が変わるペンをプレゼント。八千穂寿司の皆さんからは江戸切子のグラスとカタカナで"ジェシカ"と書かれたはんこがプレゼントされました。

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奥さんの愛さんからは、なんと英語でお手紙まで。「共に過ごせた時間はあまりに短く、十分にお伝えできなかったことが大変心残りです。シアトルに帰っても探究心を忘れず、美味しいいなり寿司を作り続けてくださいね。八千穂寿司一同」。感無量のジェシカさん。

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実はジェシカさんもお手紙を書いていました。「八千穂寿司の皆さんへ。美味しいいなり寿司の作り方を教えていただきありがとうございます。貴之さん、初対面の私を信頼して秘伝のレシピまで教えてくださり本当に感謝します。しさこさん、温かく迎えてくれて、まるで本当のおばあちゃんといるようでした。私にとって本当にかけがいのない時間となりました。アメリカに来たらぜひ立ち寄ってください。私の心はいつもあなたたちと共にあります」。

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お互い言葉は通じなくても、心はしっかりと通じています。八千穂寿司のみなさん、本当にありがとうございました!

これもおいなりさん!? 変わり種のいなり寿司

続いてジェシカさんが向かったのは茨城県・笠間市。笠間のいなり寿司文化はニッポンでもかなり独特だということを聞いていたジェシカさん。稲荷神社といなり寿司の関係も勉強できる!と学ぶ意欲満々です。出迎えてくださったのは笠間のいなり寿司を広める活動をしている「いな吉会(きちかい)」の坪来久子さんと塙茂さん。

最初に案内していただいたのは、京都の伏見、愛知の豊川と並び、日本三大稲荷のひとつと言われる笠間稲荷神社。稲荷神社といえば狐ですが、いなり寿司とどんな関係があるのでしょうか。

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お話してくださったのは権禰宜の小賀智之さん。「稲荷神社は五穀豊穣の神ということもあり、それにあやかって豊作を願う俵型のいなり寿司が生まれた」とのこと。笠間稲荷神社の参道にはいなり寿司を出すお店が7軒もあり、笠間名産のくるみや舞茸などを用いた「変わり種のいなり寿司」が名物です。中でも人気なのが三角の揚げに蕎麦が入った「蕎麦いなり」。

約120年前からある老舗で、早速蕎麦いなりをいただきました。茨城県産の茹でたてのそばをそばつゆで味付けし、甘辛い揚げで包んだいなり寿司は、相性抜群。

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「美味しい。このいなり寿司は蕎麦の風味がとても強いです。甘さとしょっぱさのバランスが絶妙です!」とかなりお気に召したよう。すると、いな吉会の塙さんがジェシカさんをあるところへ案内。なんと! ジェシカさんに蕎麦いなりの作り方を教えようと地元の方々が集まってくれていたのです。

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早速、蕎麦いなりの作り方を教えてもらいます。下ごしらえがすんだ蕎麦を食べると、八千穂寿司のシャリ同様、少し酸味が強い味付けになっていました。「めんつゆにお酢を入れて下味をつけておくの。麺を茹でたら絡めてそれを詰めるだけ」と地元の方が説明してくださいます。

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こうすることで、時間が経っても麺がくっつかずツルツルの状態になるそう。「お酢を使えば食欲も掻き立てるし、すごく計算されていますね」と感心するジェシカさん。出来上がった蕎麦いなりを皆さんと一緒にいただきます。

「やっぱり蕎麦いなりは最高です! 必ずアメリカで作ります。何より皆さんの手際が良くてビックリしました」とジェシカさん。

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笠間の皆さん、ありがとうございました!

ニッポンのいなり寿司の奥深さを知る!

実はここ数年、雑誌で特集が組まれたり、デパートで物産展が開かれるなど大ブーム! その火付け役となったのが、六本木にある「いなりや 呼(こ)きつね」。多い日には1日2000個を売り上げるといいます。こちらは、巻くタイプのいなり寿司。

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「オイシイ! こんなの今までに食べたことがないです」と大感動。油揚げ(熊本産・南関あげ)で包まず、シャリの外側に巻き付けるいなり寿司、その具材は「まぐろのしぐれ煮」や「明太子」「サーモン」など全部でおよそ30種類。中でもジェシカさんが気に入ったのが、「レーズンバター」。「バターライスのようなコクとレーズンの甘さがマッチしてオイシイ!」とのこと。

さらに石川県・金沢市へ。全国から人が訪れる金沢限定のいなり寿司を出すのは、兼六園の目の前にある「加賀守岡屋」。たっぷりと出汁がしみ込んだ肉厚のお揚げを香ばしく焼き上げ、中に鶏肉とごぼうの五目ご飯を詰めた「焼きいなり」をいただき、ニッポンのいなり寿司の奥深さに大満足!

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その他、「豆腐茶屋 佐白山のとうふ屋」では、油揚げ作りを見学させていただき、ご厚意で豆腐のソフトクリームも試食。いなり寿司を通じて、日本人の優しさに触れた1週間...ジェシカさんはたくさんの笑顔を見せてくれました。「この旅で新しくできた家族のことは決して忘れません...」

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最後にこう感想を伝えてくれたジェシカさん。またの来日をお待ちしています!

そして今夜8時放送! 「世界!ニッポン行きたい人応援団」の内容は...。

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「和包丁の作り方を学びたい」オーストラリア人女性。彼女は10歳の頃に和包丁に興味を持ち、ナイフ職人の父に作り方を聞いてみたが、和包丁の作り方は特殊で、父にも全く分からず。そこで、本やインターネットで独学し、父のナイフ工房で和包丁を自作し始めたそう。和包丁の鋼と鉄の2層でできている作りがどうなっているのか知りたいと目を輝かせる。

そこで彼女をニッポンにご招待! まず京都にある割烹 宮川町水簾(すいれん)へ。和食料理人の最高峰を競う大会で技能賞に輝いたという料理長・河島さんの包丁さばきを堪能。次に700年の歴史を持つ、越前打刃物の産地福井県越前市へ。職人歴52年の北岡さんから技術を伝授されるがスピード勝負の工程に苦戦する!

どうぞお楽しみに!

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