ヒロイン芳根京子まで”古舘化”! 監督を最も四苦八苦させたものとは!?:コタキ兄弟と四苦八苦

公開: 更新: テレ東プラス

今や映画・ドラマに欠かせない存在となった名バイプレーヤーの古舘寛治滝藤賢一がW主演のドラマ24「コタキ兄弟と四苦八苦」(毎週金曜夜0時12分放送)。真面目過ぎて生きづらい兄・古滝一路(古舘)と、ちゃらんぽらんな弟・二路(滝藤)が、ひょんなことから「レンタルおやじ」を始め、依頼人からのさまざまな無茶ぶりに文字通り"四苦八苦"しながらも、どうにか生きていく......そんな人間賛歌コメディだ。

kotaki_20200116_01.jpg
「前編」では企画実現までの秘話や、脚本・野木亜紀子の秘密まで飛び出した主演の古舘&山下敦弘による対談。「後編」ではハードな撮影裏話や、ヒロイン役の芳根京子に起きたある変化を!?
※前編はこちら

やっぱり日本人は働き方改革しなきゃダメ!

kotaki_20200116_02.jpg
──古舘寛治さんと、滝藤賢一さんという、それぞれの演技スタイルを確立されている俳優さんの共演。山下監督は「水と油のような兄弟というところを、どうおもしろく見せるか?」とおっしゃっていましたが、今回の演出プランはどんなものだったんですか?

山下「原作ものではないし、野木さんの脚本だし、『とにかく芝居がしたい!』というのが古舘さん、滝藤さんからのリクエストで。ホン(脚本)はおもしろいから最初から安心していましたし、それだけに具体的なイメージを持ちすぎないように意識しつつ、今回は主役のお2人と同じ立場でできたらなと思って臨みました。
とりわけ初めて連ドラで初主役の古舘さんはやってみたかった芝居もあるでしょうから、すごく話し合いましたし。リハーサルも、何度も重ねて。もちろん現場での微調整はありますが、あとは古舘さん、滝藤さんの芝居にお任せした感じです。いや、基本、古舘さんか(笑)。やはり『コタキ』の座長ですから、古舘さんがどうやりやすくできるか......は、考えていたつもりです」

古舘「(笑)、だから、そういうのでちょっと監督を困らせちゃったかなというのは反省なんですけど」

山下「いえいえ、いいものを作るってそういうものじゃないですか」

古舘「今回、やりながら山下さんで本当によかったなと思ったのは、おもしろいと思っていることに対しての、ぼんやりとした表現の方法を共有できていたこと。今の話を聞いたら、俺がおもしろいと思う方に寄せてくれたのかも知れないけど(笑)、現場では"共有してるなー"と思ってやっていましたね。
いろんな提案もさせてもらいましたし、事あるごとに対話もさせてもらいましたし。本当にありがたい現場でした。ただ、いかんせん撮影しなくてはいけない分量が多いから、だんだんみんな疲れてくるんですよね。途中から"今、俺との対話イヤがってんな?"というのがわかるようになってきて(笑)」

山下「(笑)、中盤の......5話あたりがピークでした。体力のある、若いスタッフが多かったので助かりましたけど」

古舘「やっぱり日本人は働き方改革しなきゃダメだって肌で感じましたよ。今回、本当に才能が集まった現場だったんですよ。でも、いくら才能があったって、疲れには勝てないし。いくら情熱があってもカバーできない。撮影を終わらせることが最重要になったら実験はできないし、対話する時間がもったいなくなるし......途中で気づきはしましたけど、前半に監督を困らせたことは反省します」

山下「いやいやいや、僕の方こそもっと気持ちに余裕をもたないと」

kotaki_20200116_03.jpg
──この「ドラマ24」の枠は、スケジュールがタイトだと聞きます。

古舘「でも、ほかの人から言わせると『コタキ』はまだいい方だったって言うんです」

山下「そう! ロケバスの乗り場でこの枠をやったことのある監督さんに会って聞いたら『僕は1ヶ月で全話やりました』って。うちの半分くらい! だから弱音吐けないな、やるしかないなと思って」

古舘「ね、弱音吐けなくなるよね?」

(ここでプロデュサーから、撮影時間について「コタキ」より、滝藤賢一主演の「俺のダンディズム」の方が長かったとの情報が)

古舘「すごいな、滝藤くん! あんなに忙しいのにその体力」

山下「僕らもまず、体力付けなきゃダメですね」

古舘「それでも"できちゃう"のをよしとするのが日本人の悪いところなんですが......(笑)」

山下「今回は奇跡的に撮り終えることができましたけど、普段の僕の時間のかけ方では完全にアウトだったと思うんですよ。現場で役者の動きを見ないと何も決められない監督なので。脚本を読んで頭の中で考えていたことが、現場で実際に動くとおもしろくないこともあるし。役者の違和感も修正したいし。
あとは、天気。昼設定が夜になることもありますからね。この天気を選べる(待てる)と日本映画、そしてドラマがもっと豊かになると思うんですけど......とはいえ、僕も天気を選べたというような経験がほとんどないので、撮ったものを結果オーライとしちゃってるのは反省するところではあって(笑)。
ただ、今回は、意識朦ろうとしながら段取りをやって、ちゃんと芝居を見てという僕のやり方をできる限りやらせてもらったので、そこはよかったと思います」

kotaki_20200116_04.jpg
古舘「監督はそうやって、まず芝居を見てからどう撮るかを考えてくれるので、そこが今回楽しかったひとつの理由で。やはり現場に行かないとわからないことが多々あるのでね、俳優としてはうれしかった。あとは何度も言うけど野木さんの脚本と、滝藤くんをはじめとするキャスト」

山下「演者には本当に助けられました。これ言うとまた"(時間が足りないことで逆に)いいこともあるじゃん"って言われそうですけど(笑)、後半は役者のみなさんがキレッキレなんですよ。慣れたというのもあるでしょうけど、短い時間の中ですばらしい芝居をしてくれて。だから中盤、僕が頭ぼんやりしていてあまり芝居を見れなかったところを、どう編集でつなぐかが、これからやらなきゃいけない課題ではあります」

古舘「あるよねー、てんぱった状態でのエネルギー。......でも、それをよしとするから、日本はダメなんだと言いたい(笑)。時間かかるだろうけど、俳優や監督がちょっとずつ声を上げていくことが大事だと思うな」

芳根京子まで"古舘化"で四苦八苦!?

kotaki_20200116_05.jpg
──ドラマのタイトルにかこつけて言うと、撮影でもっとも四苦八苦したのは「時間」ですか?

山下「うーん、なんだろう? でも時間がないのはどこの現場でも付きまとうことで......基本的には楽しかったんですよ。今回はゲストが多いからその都度、芝居も変わって大変は大変なんだけど、それも楽しかったですし。演出で四苦八苦するのは、僕としては手応えのある時なので」

古舘「流れ的に、四苦八苦したのは"古舘寛治"でいいんじゃないの?(笑)」

山下「(笑)、でも確かに古舘さんは、現場でやってみて違和感があると僕に言ってきて。その都度、修正して。前半からそれを繰り返していて。で、後半(古滝兄弟が通う喫茶店の看板娘でヒロインの)芳根(京子)さんがそうなっちゃったんですよ。悪影響じゃないんだけど、"質問が多くなってきた""古舘化してきた!"と思って(笑)」

古舘「わー、悪影響を与えちゃったか~(笑)」

山下「でも、監督としてはうれしいものですよ。物語が佳境に向かう連れ、自分の思いも出てくるでしょうし、台本を読み込んでいる証拠だし。(芳根演じる)さっちゃんも回を追うごとに成長しているわけで。
だから、これは滝藤さんも含めてですけど、僕がもっと余裕をもって、演者のみなさんの提案なりを聞いてあげられたらよかったなと」

古舘「前半のうちにみんなで一杯やって、温まれたらよかったんだけどね。案外、それが大事なんだよ」

山下「じゃあ、気が早いですけど、もしシリーズ化したら次こそ一杯。あと、座長そして古舘さんが現場の改革をしてくれてることを期待します(笑)」

古舘「その前に見てもらえないことにはそんな話もないだろうから。視聴者のみなさん、『コタキ兄弟と四苦八苦』を何卒よろしくお願いします!」

(取材・文/橋本達典)

【プロフィール】
古舘寛治(ふるたち・かんじ)
大阪府出身。ニューヨークにて演技を学んだ後、劇作家・演出家の平田オリザを中心に旗揚げされた劇団「青年団」に入団。舞台をベースに数々の映画やTVドラマに出演し、名バイプレイヤーとして印象を強く残す。2016 年には舞台 『高き彼物』で演出を手掛けた。主な出演作に、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)、映画『淵に立つ』(2016年)、『キツツキと雨』(2012年)、『海よりもまだ深く』(2016年)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)、『勝手にふるえてろ』(2017年)、『教誨師』(2018年)など。2019年は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で可児徳役を好演。滝藤賢一とW主演となる『コタキ兄弟と四苦八苦』で自身初の連続ドラマ初主演を飾る。

山下敦弘(やました・のぶひろ)
1976年8月29日生まれ。愛知県出身。高校在学中より自主映画製作を始め、大阪芸術大学芸術学部映像学科に入学。自身初の35mm商業映画『リンダ リンダ リンダ』(2005年)で広く知られ、『天然コケッコー』(2007年)で報知映画賞監督賞、第62回毎日映画コンクール日本映画優秀賞をはじめ数々の賞に輝いた。代表作は『苦役列車』(2012年)、『マイ・バック・ページ』(2011年)、『味園ユニバース』(2015年)など。近作に『ハード・コア』(2018年)。

kotaki_20200116_06.jpg
1月17日(金)深夜0時12分放送の第2話は?
「二、求不得苦」
無職の兄弟、一路(古舘寛治)と二路(滝藤賢一)にムラタ(宮藤官九郎)からきた「レンタルおやじ」の新たな依頼は...親戚のフリをして結婚式に参列すること!ただで飲み食いできる上にお金がもらえると弟が浮かれる一方、兄は偽って親戚をレンタルする新郎を怪しんでいた。しかも、新婦・手毬(岸井ゆきの)のお腹には新しい命が宿っており...疑惑だらけの結婚式。新郎から手毬と赤ちゃんを救うため、ダメ兄弟が立ち上がる!

PICK UP