滝藤賢一の欠席裁判!? 「嫌われてるんじゃないかなと思ってた」古舘寛治×山下敦弘監督スペシャル対談:コタキ兄弟と四苦八苦

公開: 更新: テレ東プラス

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令和の時代に新しいバディが誕生した。その名も、"コタキ兄弟"。1月10日(金)スタートのドラマ24「コタキ兄弟と四苦八苦」(毎週金曜深夜0時12分放送)は、真面目過ぎて生きづらい兄・古滝一路と、ちゃらんぽらんな弟・二路が、ひょんなことから「レンタルおやじ」を始め、依頼人からのさまざまな無茶ぶりに文字通り"四苦八苦"しながらも、どうにか生きていく......そんな人間賛歌コメディだ。

ダブル主演を飾り"古滝(コタキ)兄弟"を演じるのは、今や映画・ドラマに欠かせない存在となった名バイプレーヤーの"古"舘寛治(一路)と"滝"藤賢一(二路)。「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」(ともにTBS)などを手掛ける野木亜紀子によるオリジナル脚本で、映画監督の山下敦弘が全12話すべてを演出するのも話題となっている。

企画の成り立ちは、2017年の初旬にさかのぼる。たまたま顔を合わせた古舘と滝藤が「自分たちが主演できるドラマを立ち上げよう」と意気投合......。それから3年あまり。企画が形になるまでには、さまざまな縁と偶然、そして何より関わった人すべての熱い思いがあった。

原作ものでもなければ、主演は渋いオヤジ2人で華はない。「でも、スター俳優や潤沢な予算に頼らなくても、よい脚本と、よい演出、よいお芝居が揃えば、最高のドラマが生まれる!」(テレビ東京・濱谷晃一プロデューサー)という、今ではなかなか実現しない粋なチャレンジ精神が作り上げた「コタキ兄弟」。

ここでは「コタキ」チームを代表して主演の古舘&山下監督に、ドラマの立ち上げから撮影の舞台裏まで、ぞんぶんに語っていただこう。

監督には嫌われてるんじゃないかなと思ってた!?

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──本日は「コタキ兄弟」の主役のお1人である古舘寛治さんと、本作で演出を担当された山下敦弘監督にお越しいただきました。

古舘「俺、いつもは脇役だから、こういう取材で監督と対談することなんて滅多にないので今日は本当に楽しみに来たんですけど、いざ何か話す......となると緊張しますよね。基本的に監督と俳優って現場では闘いというか、せめぎ合いというか。ひとつのいいものを作るためにぶつかり合うもので。監督には嫌われてるんじゃないかなと思ってたから、この取材、よく受けてくれましたね(笑)」

山下「(笑)、いやいやいや、そんなことは(ないでしょう)!」

古舘「ひたすら自分の話をするのはいいんだけど、作品のこととか全体のことに気を遣っちゃうかな、と。そういうのを監督と1対1で話すの、慣れてないから」

山下「確かに僕も主役の方がいないところで話すことはありますけど、目の前にいらっしゃるというのは多少、気を遣いますね(笑)」

──もうひとりの主役が本日は欠席ですので、そちらのお話でもしましょうか。

古舘「そっか、欠席裁判。滝藤くんの話をすればいいのか(笑)」

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──その滝藤賢一さんとの兄弟役はいかがでした?

古舘「最初は自分でも年齢差を感じたんですけど、滝藤くんも年齢不詳なところがありますし、周りも大丈夫って言うから、見た目は大丈夫かなと。
で、実際やってみても、想像した以上にしっくりきましたし。日増しに"滝藤くんでよかったな、俺いい人選んだな~"と思っていましたね。勘とか全然いい方じゃないんですけど......偶然なのか必然なのか運命なのかわかりませんけど、本当にベストキャスティングだと思いました。人としての性格も、もちろん芝居も。"いや~、兄弟になれてよかったな"って」

──運命といえば、滝藤さんは山下監督とは「同じ年で同郷。運命を感じております」と、コメントされていました。

山下「そうなんですよ。1976年生まれで、愛知県の出身。今思えば導かれたんだな、と思います」

古舘「どうでした? 2人の兄弟ぶりは」

山下「野木(亜紀子)さんの脚本がお2人に"当て書き"されたこともあって、当たり前のように兄弟としてそこに居ましたよね。ほかのキャラクターだったりが、2人を兄弟と見せてくれるところもありましたし。だから僕も、とりたてて兄弟っぽくしようとか、意識せずやって。それより、水と油のような兄弟というところを、どうおもしろく見せるか? それしか考えていませんでした」

──兄弟でありながら、バディ(男性同士の友人・仲間・相棒)のようにも見えます。

山下「僕も、ある種のバディものとして撮っている意識が大きかったです」

──バディものの常として、オンエア後は「私は一路派、いや二路派」なんて盛り上がるでしょうね。

古舘「放送されたら視聴者のものですから、どのように見てもらってもいいし、ありがたいですし。僕、一路としましては、50歳を過ぎて、そうやって話題にのぼるだけでうれしいかな(笑)」

多忙な俳優×脚本家×監督による企画実現までの道のり

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──そもそもの話なんですが、滝藤さんによれば、2017年の初旬に古舘さんと久し振りに再会して「"なんか一緒にやれたらいいね"と話していた」のが、「コタキ兄弟」の成り立ちだと。

古舘「そうですね。フジテレビの湾岸スタジオだったかな。お互いに別な仕事で来ていて。(スタジオに貼ってある香盤表の)名前を見たら滝藤くんがいたんで、昔交換したメールアドレスに『いるの?』って送ったんですね。で、その日は会えなかったんですけど、また後日会って」

──その頃といえば、滝藤さんは初主演ドラマとなった「俺のダンディズム」(2014年、テレビ東京)を経て、数多くの映画・ドラマに出演されて。古舘さんもまた是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」であるとか、カンヌ国際映画祭受賞作「淵に立つ」(ともに2016年)で国際的にも高い評価を得て......と、俳優として脂ののった時期であり、転換期でもあったんじゃないですか?

古舘「僕自身はそういう(評価の)認識はなかったけど、滝藤くんは『半沢直樹』(2013年、TBS)で、いわゆる売れっ子になった時期でしたから、最初は"俺のことなんて忘れたかな?"と思っていて。でも返事が来たので会ったら、ものすごく盛り上がっちゃって。それで楽しくなった勢いで『なんかやんない?』と言ってるうちに企画が動き始めた感じですね」

山下「その時点でテレ東でやるとか、具体的な話は出ていたんですか?」

古舘「いや、全然。その時は『テレ東の濱谷(晃一プロデューサー)さんに相談してみれば何かできるんじゃない?』くらいの感じで。滝藤くんは何年か前に『俺のダンディズム』で濱谷さんとご一緒していて。僕はちょうどそのころ『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』に呼んでいただいたり、2人とも濱谷さんとはご縁があったし。
お互いにおもしろいなと思う俳優同士で飲んでると、時々こういう話になるんですよ。それが結実することは滅多にないんだけど。でも、今回は滝藤くんも僕も"テレ東なら、濱谷さんとなら、おもしろいことができるんじゃないか......"という予感めいたものはあったかもしれないな」

山下「野木さんという名前は?」

古舘「野木さんとは、滝藤くんはその前年に『重版出来!』で、僕は『逃げるは恥だが役に立つ』(ともに2016年、TBS)でご一緒していて。ちょっと仲よくなっていったのね、野木さんと。一緒に飲みに行ったりして」

山下「脚本家って、あまり現場に来ないですよね?」

古舘「"逃げ恥"の(撮影)ラストか何かにたまたまいらっしゃってて。"あの方が野木さんなんだ......"と思っていたら、俺が出てた(劇団)ハイバイの公演『おねがい放課後』(2007年)を観てくださったみたいで、わざわざ声をかけてくれて」

山下「でも、ドラマの脚本家と俳優が仲よくなるって、あんまり聞かないですよね?」

古舘「それが不思議なんだよね。俺も常々"野木さんの脚本っておもしろいな"と思っていたからうれしくなったのかな? よく覚えていないんだけど、どちらが言いだしたのか連絡先を交換して。『今度飲みましょう』となって。『お願い放課後』って30代のころにやった小さな舞台だったんだけど、"人生に無駄なことなんてないんだな"って思った」

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山下「じゃあ、飲みに行く中で野木さんに頼んで?」

古舘「いや、まずは濱谷さんに『野木さんはどうですか?』と提案をして。でも野木さんはお忙しい方だからダメ元で......まずはテレ東に来てもらってお願いをしてみたら、意外とあっさり『いいですよ』となったんですよ! で、そこから本格的に企画が動き始めて」

──企画が立ち上がった翌年の2018年は「アンナチュラル」(TBS)、「獣になれない私たち」(日本テレビ)と、連ドラが2本あり、NHKのドラマ「フェイクニュース」もあって、野木さんとしては、かなり多忙な中のオファーだったと想像しますが。

山下「実際、お忙しかったと思いますよ。『コタキ』の打ち合わせを重ねていると、どんどんすっぴんになっていくんです(笑)。こんなこと言うと怒られるかも知れないけど、それが野木さんの忙しさのバロメーターになっていました」

古舘「この仕事を受けて、"しまったなー"と後悔したかも知れないね(笑)。本当にお忙しい方だから」

──野木さんは「古舘×滝藤でテレ東。それはやってみたいぞ」とおっしゃっていましたし、山下監督のファンでもあるとのことで、相思相愛の関係だったんですね。

古舘「濱谷さんも山下さんの大ファンで、それでオファーして......でも、よく断らなかったですね、監督(笑)。いや~、このキャスティングを聞いて、よく引き受けたな、と」

連ドラ全12話をすべて演出で四苦八苦

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──「よく引き受けた」とは、どういう意味ですか?

古舘「山下監督とは長い付き合いなので(2007年『松ヶ根乱射事件』、2011年『マイ・バック・ページ』)、いろいろあるんですよ。長く連れ添った夫婦じゃないけど(笑)。だからプロデューサーとは別に、監督に直接電話して、『僕もちゃんと山下さんを欲しているよ』という気持ちを伝えました」

山下「(笑)、別に古舘さんとはマズイことなんてないし。そもそもテレ東で、主演がこのお2人で脚本が野木さんと聞いて断るバカはいないですよ。本当にスケジュールがダメだったらお断りしますけど、ちょうどこの企画が立ち上がった前後は空いてて。ただ、12話全部を監督すると選択した自分はバカだなーと思いました(笑)」

古舘「(笑)、ちょっとナメてた部分はあった?」

山下「ありました......というか、濱谷さんをはじめ、みなさん普通に『もちろん12話やりますよね?』って言うからそんなものなのかなと思って。今まで連ドラは1本で2、3話しかやったことがなかったから。それでやると決まって周りの人に聞いたら、『そんな人、ほとんどいないですよ』って言われて後悔しました(笑)」

──通常60分、全10話の連ドラで最低2~3人は監督がいますからね。『コタキ』は40分ドラマとはいえキツそうです。

山下「日々老けていきました(笑)。でも脚本はおもろいし、キャストの演技を見ていると疲れを忘れてしまって。やってやれないことはない。やってよかったなと思います。11月末に撮り終えたとはいえ、まだ編集が残っていますが(笑)」

古舘「編集はどれくらいかかるの?」

山下「僕が目の前のことしかできないタイプなので、まだまだかかると思うんですけど(笑)、これから(取材は2019年12月)2話ぶんを1日で詰めてやっていく感じですかね。でも現場もそうでしたが、『コタキ』チームは"全員野球"なので(笑)。プロデューサー、編集スタッフを含めてみんなであれこれ言い合いながら一丸となって、放送ギリギリまでやっているでしょうね」

来週公開の「後編」では、古舘が提唱するよいモノを作るための「働き方改革」や、ヒロイン役の芳根京子に起きたある変化などをお届け。

(取材・文/橋本達典)

【プロフィール】
古舘寛治(ふるたち・かんじ)
大阪府出身。ニューヨークにて演技を学んだ後、劇作家・演出家の平田オリザを中心に旗揚げされた劇団「青年団」に入団。舞台をベースに数々の映画やTVドラマに出演し、名バイプレイヤーとして印象を強く残す。2016 年には舞台 『高き彼物』で演出を手掛けた。主な出演作に、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)、映画『淵に立つ』(2016年)、『キツツキと雨』(2012年)、『海よりもまだ深く』(2016年)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)、『勝手にふるえてろ』(2017年)、『教誨師』(2018年)など。2019年は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で可児徳役を好演。滝藤賢一とW主演となる『コタキ兄弟と四苦八苦』で自身初の連続ドラマ初主演を飾る。

山下敦弘(やました・のぶひろ)
1976年8月29日生まれ。愛知県出身。高校在学中より自主映画製作を始め、大阪芸術大学芸術学部映像学科に入学。自身初の35mm商業映画『リンダ リンダ リンダ』(2005年)で広く知られ、『天然コケッコー』(2007年)で報知映画賞監督賞、第62回毎日映画コンクール日本映画優秀賞をはじめ数々の賞に輝いた。代表作は『苦役列車』(2012年)、『マイ・バック・ページ』(2011年)、『味園ユニバース』(2015年)など。近作に『ハード・コア』(2018年)。

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1月10日(金)深夜0時12分放送の第1話は?
「一、怨憎会苦」
元予備校講師の兄・一路(古舘寛治)は、現在無職で独身。喫茶シャバダバの看板娘・さっちゃん(芳根京子)が気になる様子。そんなある日、8年前に勘当したはずの弟・二路(滝藤賢一)が家に転がりこんで来るが、来る途中に事故を起こしたという!慌てて現場に向かうと、倒れていたムラタという男(宮藤官九郎)に"レンタルおやじ"の代理を頼まれる...待ち受けていた美人依頼主(市川実日子)を見て絶句。その理由は......!?

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