「もっと働きたい」「会社の奴隷じゃない」残業規制に賛否...「大戸屋」店主の現状から考える:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。12月10日(火)の放送では、シリーズ「人生が変わる働き方」第4弾として、残業時間の規制に翻弄される企業の姿を追跡した。

政府が進める働き方改革で、今年4月から大企業を中心に義務付けられた残業時間の規制。厚生労働省は、臨時的、特別な事情がある場合を除き、上限は月に45時間、年間360時間までと定めた。

さらに、月45時間以上の残業は年間6ヵ月まで。破った場合、企業の管理者は30万円以下の罰金か6ヵ月以下の懲役が課せられることになる。「月45時間」の壁でいま何が起きているのか。大手定食チェーン「大戸屋」の現場を追う。

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「もっと働きたいのに」という現場の声も

大戸屋の研修センター(山梨県山梨市)では、年に一度、全国の店主が集う店主会が開かれる。そこで山本匡哉(まさや)社長が真っ先に問いただしたのは「時間外労働は何時間だった?」。結果はほとんどの店主が規制を超える残業をしているというものだった。

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新宿東口中央通り店(東京・新宿)は、来店客は1日約700人、売上げは月約1700万円に上る繁盛店だ。そこで精力的に働く店主・安藤隆仁さん(41)は、「もっと働きたいので(残業規制は)嫌」と話し、残業規制には反対の姿勢を示している。

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人手不足が深刻化する中、安藤さんが頼みの綱にするのは24人の外国人アルバイトだ。しかし労働時間は週28時間までと定められているため、人手が足りない時間は自ら埋め合わせをする。結果、朝9時から深夜0時まで15時間働くことも。なぜそこまでするのか。

「哲学ですかね。働いている以上は会社に少しでも貢献したい」。7月の残業時間は70時間で、到底45時間に収まる気配はない。

一方、中野北口店(東京・中野)店主の石田卓さん(43)は、安藤さんとは全く違う考えの持ち主。「理想は(残業)30時間以下です。帰るときは帰らないと。休まないと結局自分が倒れちゃうと何の意味もない。決して(会社の)奴隷じゃない」と笑う。残業規制に大賛成の姿勢だ。

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人手不足の問題は、アルバイトを1時間単位で募集できる単発バイトアプリ「タイミー」を利用することで解消を試みる。給料は即日決済。時給の3割を手数料としてタイミー側に支払う。レギュラーのバイトが足りないときも自分はシフトに入らず、コストをかけてでも残業を減らす石田さんは、「自分の時間をつくるため、やらなきゃいけないと思ったら押し切る」と話す。石田さんの7月の残業は56時間。45時間以内まであと少しだ。

身を犠牲にする働き方が否定される時代に

吉祥寺店(東京・吉祥寺)の店主・上原勇一郎さん(43)は、スタッフの教育が苦手。スタッフでもできる在庫チェックなどの仕事も、自ら残業してこなす。上原さんの考え方は「残業が必要なら自ら実行する」というもの。

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残業代を見込んで2人の子どもを私立学校に通わせており、マンションのローンも残っている。果たして、残業代が減ったら生活が成り立つのか...心配は募る。上原さんの7月の残業時間は71時間だった。

月45時間という原則を何度も超えている3人の店主。大戸屋を率いる山本社長も、かつては現場で休みなく働く"大戸屋戦士"のひとりだった。だからこそ複雑な思いを抱えている。「身を犠牲にしてそれを美学にしてきた社員たちは、その働き方を否定される時代になった。これからの時代に向けた成長を達成していかなければいけない」と話す。

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その後、新宿東口中央通り店の安藤さんは過度な残業が問題視され本社に呼び出されることに。そして中野北口店の石田さんはタイミーに頼りすぎたことが裏目に...。吉祥寺店の上原さんは、収入が減る不安を抱えながらも、残業削減のためにアルバイトのシフト繰りを相談するが...。各店主それぞれ難題を抱えながら解決策を模索していく。

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迫り来る「45時間の壁」。売り上げと働き方改革の狭間で決断を迫られる企業の姿を今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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