結婚式で主賓スピーチ、友人代表スピーチを頼まれたら? スピーチのプロに「祝辞」を述べるコツを学ぶ

公開: 更新: テレ東プラス

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社会人になると頼まれる機会が増える「祝辞」。親しい人からお願いされると、嬉しく感じる反面、どんなお祝いの言葉を述べれば良いのか悩みに悩む人も少なくないでしょう。そこで今回は、スピーチのプロである「スピーチライター」に"結婚式で最高のお祝い"を述べるコツを学ぶことに!

教えていただくのは、日本ではじめて「スピーチライター」を職業にした蔭山洋介さん。大手企業の社長の祝辞を含め過去1300本以上のスピーチを執筆し、スピーチライターを題材にしたドラマの監修も手がけた活動歴13年のプロです!

結婚式=一大プロジェクト! 祝辞はプロジェクトを成功に導く大切な一助

speach_20191209_01.jpg▲蔭山洋介さん

──ズバリ! 良い祝辞とは何なんでしょうか?

「難しい質問ですね(笑)。一概に祝辞の良し悪しは語れませんが、お祝いのスピーチに求められるのは、新郎新婦が心血を注いで作り上げる"結婚式という一大プロジェクト"を、ひとりの脇役としてしっかり固めてあげること。祝辞イコール感動させることが目的だと思っている人が多いですが、それは誤解です。感動はあくまで結果であって、目指すべきゴールではありません」

──祝辞にはどのような役割が求められているのでしょう?

「それは、『主賓の挨拶』か『友人スピーチ』か、で大きく異なります。まず主賓の場合、果たすべき役割は、パブリックな場で新郎もしくは新婦が頑張って活躍していることを出席者にしっかりと伝えて安心させてあげることです。それが上手にできれば親族もウルウルしてくれます。式全体の中で『立派感』や『格式』みたいなものを演出するのも主賓にしか出来ないこと。会全体の雰囲気を押し上げるのも主賓の役割と言えますね」

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──「友人スピーチ」の場合は?

「カジュアルでもなんでも良いので『彼もしくは彼女はこんなにいいやつなんです!』と新郎新婦の良き人柄を伝えることが使命です。親兄弟も気づいていないような人柄が伝わると、親族や本人にとって感動的なスピーチになります。『主賓の挨拶』も『友人スピーチ』も、それぞれに託された使命さえ果たせれば会全体が盛り上がり、新郎新婦から『お願いして良かった』と心から感謝してもらえるはずです」

祝辞=「非日常」が含まれたエピソードを語れるかどうかがすべて

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──役割を果たせるスピーチを行うコツを教えてください!

「まず、スピーチを成功させる基本的な枠組みは、『あいさつ→アイスブレイク→フレーミング→エピソード→意見→まとめ』です。この中で最初に決めるべきなのが『意見』。例えば友人スピーチなら、『彼は素晴らしい男です』や『彼女は優しい人です』など。意見は一点に絞りましょう。スピーチの意見にはオリジナリティが必要だ! と思っている方が多いと思いますが、祝辞というのは、当たり前のことを確認するもの。だから意見は普通でいいんです」

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「重要であり力量が試されるのは、その意見を支えるエピソード。エピソードを語る際のコツは以下の構成で話を組み立てることです。『日常→事件→非日常→解消→新たな日常』の順。この流れでエピソードを語ると聞き手が感情移入してくれるので、意見がしっかり伝わるスピーチになるんですよ」

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──『日常→事件→非日常→解消→新たな日常』の順で語る。それって、例えばどんな風でしょうか?

「わかりやすいように具体例で述べますね。新婦Aさんの友人が話したという想定の、感情移入できるスピーチ例です。

『私とA子さんは幼馴染で、小さな頃から大の仲良し。ずっと2人で一緒にいました。その日にあった嬉しいことも、困ったこともお互いには話せる。そんな親友でした』(日常)

『しかしある日、私が父の仕事の関係でアメリカへ引っ越すことが決まりました。悲しいものの、仕方ないねと2人で話していた矢先、わたしたちは些細な事からはじめての喧嘩をしてしまいます』(事件)

『大喧嘩で2週間ほどお互いに口を利かず連絡も取り合いませんでした。嬉しいことを話して共に喜んだり、困ったことを相談できたりするA子がいない日々はとてもつまらなく心細かった。けれど私が留学したあとは、これが当たり前になるのだから、しんみりしなくて良かったのかもしれない......そう考え、引っ越し当日、家族と成田空港へ向かった私でした』(非日常)

『成田空港に着いて私は驚きました。なんとA子さんは成田空港の改札で私が来るのを待ってくれていたのです。そして、これから全く新しい環境に飛び込む私を励ます手紙をくれたのです。私たちは泣きながら抱き合い、仲直りをしました』(解消)

『それから私がアメリカへ渡ったあともお互いに状況を報告し合い、今日まで友情を深めてきました。物理的な距離が離れても私たちの心の距離は小さな頃と変わらなかったのです』(新たな日常)

......こんな感じです」

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──なるほど。たしかに情景がよく浮かび、2人が喧嘩する様子や仲直りする過程に感情移入しちゃいました。しかし何故?

「人は『安定→不安定→安定』の順に状況変化が起きたストーリーに触れると、感情移入する生き物だからです」

正直思い出が全然ない! それなら自分の話を出すのもアリ

──そういう劇的なエピソードが全然ない場合にはどうすればよいのでしょう?

「主賓なら、そういうケースもありますよね。そういう時は乏しいエピソードで無理矢理まとめるのではなく、自分のエピソードを語るのも一つの方法です。例えば『私も妻と一緒になって20年になります。その間にはこんなことやあんなことがありました。しかしこのような方法で解消し、今でも仲良く寄り添い合って生きています。そんな私から新郎に伝えたいメッセージはこの一言です』というような展開で意見につなげるなど」

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──すごく準備をしてきたけど当日緊張した! という場合の対策はありますか?

「緊張してしまう多くの理由って『全文暗記してきた』から。基本的に暗記はした方がいいんですが、全文を暗記する必要はありません。構成順だけざっくり頭にいれて、それぞれの話を順番に話しさえすれば大丈夫です。万が一言葉に詰まったときも、内ポケットからカンペを出して確認し『失礼しました』と戻せばマナー的にも問題ありません。絶対に覚えておかなきゃいけないのはご両家への挨拶とご両家の名前のみ!」

最後に聞きたい! 祝辞のNG行動とは?

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──最後に「これはNG!」ということがあれば教えてください。

「ひとつは声が小さすぎること。マイクは声を大きくしてくれますが、パワーは拡大してくれません。ですから、生の声で伝えるつもりで話さないとみんなに届かないんです。ぜひしっかりと大きな声で話して人生に一度のプロジェクトを盛り上げ、新郎新婦を喜ばせてあげてください。

もうひとつ、絶対ダメとは言いませんが新郎新婦を『イジる』ことはやめた方が無難です。面白くイジって盛り上げるのには高度な技術が必要です。『女癖が悪いですが、足を洗うと言ってます(笑)』とジョークのつもりでも、周囲に不信感を与えてしまうかもしれません。基本的には"褒めるスタンス"でいきましょう」

【取材協力】
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