「一緒に鍋をつついて大丈夫?」......インフルエンザに”感染する”か”しない”か、気になるケースを国立感染症研究所に聞いてみた

公開: 更新: テレ東プラス

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今年もインフルエンザの流行が始まりました。感染しないように気を付けたいものの、ウイルスは目に見えないので、どのように避ければよいか今ひとつピンと来ません。咳をする人から逃げればいいのか、電車の吊革に触っても大丈夫なのか、感染した人と一緒に食事をしてもいいのか......。

もう何もかもが疑わしく思えてしまいますが、すべてを避けて通るのは難しいところ。そこで、国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター長の長谷川秀樹博士に、気になるケース別にインフルエンザウイルスに感染するか、それともしないのかを聞いてみました。

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誰かが咳やくしゃみをしたら、どう対応するのが正解?

まず、最初に気になったのが、飛沫感染するインフルエンザウイルスの"飛沫"とはどこまで含まれるのかということ。

Q/気にすべきは咳やくしゃみといった呼吸器から出る飛沫で、汗や排泄物は気にしなくて大丈夫ですよね?
A/心配する必要はないですね。基本的には呼吸器から出る飛沫だけです。

どうやらトイレや脱衣所、トレーニング施設などで、過度の警戒をする必要はないようです。では、近くに咳やくしゃみなどをした人がいたとしたら、どこまで気を付ければいいのでしょうか?

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Q/目の前で誰かがくしゃみや咳をしたら、その空間にはインフルエンザウイルスが漂い続けるのでしょうか?
A/飛沫は重力に従って落ちたり、風で飛んでいくので、数分もたてばそこから無くなります。なので、人の出入りが多い場所では、換気をすると良いでしょう。

Q/地面などに落ちたインフルエンザウイルスが、風などによって舞い上がって人に感染することはありますか?
A/何かに付着したインフルエンザウイルスが舞い上がって、人に感染するということは考えなくても大丈夫です。

Q/咳やくしゃみによって、飛沫はどのぐらい飛ぶのでしょうか?
A/横に1メートルまで飛んだあと、その周囲を漂うことになります。なので、最低でも1メートル、場合によっては2メートルほど、周囲の人から離れた方がいいという話がありますね。

Q/咳をした人がいたら息をとめて、ぱっと離れた方が良いと。
A/インフルエンザに感染した人の体内でウイルスが増えると、呼気にもウイルスが含まれるようになります。体調が悪そうな人などには、とにかく近づかないことが大切です。

インフルエンザが流行している時、日常的に人混みを避けることは難しいですが、せめて病院などでは周りの人よりも1メートル以上離れることが大事なようです。ロビーなどでは他の人と隣り合わせに座るのではなく、離れた場所に立っていた方が、インフルエンザに感染する確率を下げることができそうですね。

満員電車の吊革、食事、風呂などを介してインフルエンザに感染する?

インフルエンザの感染は、咳やくしゃみによってとんだ飛沫が、呼吸などを介して気道に付着することで起こります。では、咳やくしゃみの飛沫がかかったものを介して、インフルエンザウイルスに感染することはあるのでしょうか?これについても、長谷川センター長に、いろいろなケースでの見解を聞いてみました。

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Q/満員電車で感染した人が咳をしたとして、そこから半径1メートルにある手すりや吊革などに触っても大丈夫でしょうか?
A/はい、大丈夫です。感染した人が咳やくしゃみを受けた手で吊革を掴み、それを離した後にすぐさま他の人が吊革を掴み、その手をすぐ鼻や口などの粘膜に直接触れさせない限りは、インフルエンザに感染する確率はほぼないと言えるでしょう。

Q/例えば、感染した人が咳やくしゃみをハンカチで受けて、それをポケットにしまったとしたらどうでしょうか?その人が手をポケットに入れるたびに、手を介してインフルエンザウイルスを広めてしまう恐れはありますか?
A/インフルエンザウイルスはそこまで強いものではないので、ハンカチを介して感染するという心配はないと思われます。

Q/満員電車に乗って帰宅したあと、身に着けていた服やカバンといったものを部屋にかけておいても、そこから家族に感染する心配はないと。
A/そうですね、そこまで気を遣う必要はないです。

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Q/感染した人と同じ皿の料理を、箸でつつきあった場合はどうでしょうか?
A/インフルエンザウイルスは経口では感染しないので、気道にウイルスが付着しない限りは大丈夫です。

Q/飛沫とはつまり水になりますが、湯船やプールを介してインフルエンザに感染することはありますか?
A/それもありえないですね。

あまり潔癖症にならず、要点を守った対策を

どうやら、感染した人が周囲にいたとしても、数分経てばインフルエンザウイルスは人に感染しない状態となり、そこにあったものを介して感染する心配もいらないようです。

ちなみに、インフルエンザには症状が出るまでの潜伏期間がありますが、長谷川センター長によると「インフルエンザウイルスが体内で増殖することで、発熱などの症状が現れます。つまり、症状が出るまでは量的に少ないので、他の人にうつる心配はあまりないといえるでしょう」とのこと。朝に出勤したら隣の席の人がインフルエンザで欠勤していたとしても、前日のうちに感染したという心配はまずないようです。

やはり、インフルエンザで一番注意しなければいけないのは、人混みなど感染した人がいると思われる場所に近づくことのようですね。それ以外は要点さえ守っていれば、過度に感染を恐れる心配はなさそうです。

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