マスク、加湿器、手洗い、うがい、喉スプレー。インフルエンザ対策になるのは? 国立感染症研究所に聞いてみた

公開: 更新: テレ東プラス

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冬が近づくにつれて、ニュースなどでインフルエンザの話を耳にするようになりました。感染しないためにも、きちんと対策をしておきたいところです。マスクや手洗い、うがい、喉スプレーなどを使っている人が多いようですが、これらは本当に効果があるのでしょうか?

今回は国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター長の長谷川秀樹博士に、これらがインフルエンザ対策に効果があるのか聞いてみました。

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マスクはインフルエンザを防げるか?

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まずは、この時期になると、街を行く人の多くがつけているマスク。感染した人が咳などをしたとき、その飛沫を防ぐ力はないという話も聞きますが......。

「感染した人が咳やくしゃみをしたときに、その飛沫を周囲に散らさないという意味では効果があります。しかし、漂っている飛沫を、他の人が吸引するのを防ぐことはできません」(長谷川さん)

つまり、インフルエンザの予防としての意味はないと。

「気密性の高いN95マスクであれば飛沫を通しませんが、息苦しいので普段からはとてもつけてはいられませんよ。ただ、喉を潤わせるという意味では、予防につながると言えるかもしれません」(長谷川さん)

つまり、風邪対策として使われている加湿器は、インフルエンザ対策としても有効だと。

「なりますね。喉の粘膜を覆っている粘液には抗体や抗菌物質などが含まれているのですが、乾燥すると正常に機能しなくなってしまいます。このとき、マスクをすれば呼気がこもって、口腔内を潤わせることができるわけです。加湿器をつければ、ウイルスが飛散しにくくなる効果も期待できますよ」(長谷川さん)

手洗いやうがい、喉スプレーでウイルスを消毒できるものの......。

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インフルエンザが流行してくると、建物のエントランスやトイレなどで良く見るのがスプレータイプの消毒剤。インフルエンザ対策では手洗いが推奨されていますが、普通の石鹸で洗うだけでも大丈夫なのでしょうか?

「もちろん石鹸で十分です。スプレータイプの消毒剤の中身はエタノールだと思いますが、これも有効ですね。我々もエタノールを水で70%ぐらいに薄めたものを、手や研究用の器具の消毒に使っていますよ」(長谷川さん)

一方で、かつては手洗いと並んで有用とされていたうがいは、最近ではインフルエンザに効果がないという話もあります。

「そうですね、インフルエンザウイルスは人の呼吸器に侵入すると、数十分で感染が成立してしまうので、感染予防にはあまり関係ないと言われています」(長谷川さん)

つまり、家に帰ってからうがいをしても、すでに感染が成立していれば意味がないと。では、満員電車などの人が密集した場所から離れた際に、殺菌作用のある喉スプレーを使うというのはどうでしょうか?

「スプレーの効果については言及できませんが、そもそもインフルエンザウイルスが感染する場所は喉だけでなく、鼻などいろいろあるので、喉だけ消毒しても効果があるとは言いにくいですね」(長谷川さん)

高熱が出たら病院には行った方がいい?

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では、感染が疑われる場合はどうでしょうか。この時期に高熱が出るとインフルエンザを疑いたくなりますが、感染者が一杯いそうな病院に行くのはためらわれます。長谷川センター長、こういうときはどうすれば?

「そうですね、通常は病院に行かずに家で寝ていても治る病気なのですが、基礎疾患が有る人やお年寄りでは重症化したり、特にお子さんで稀に脳症を起こす事があるので、注意が必要です。病院ではインフルエンザ迅速診断キットを使っていますが、これは感度があまり高くなく、的中率は7割程度です。最近ではいろいろな薬があるので、それらを使うと1日ぐらいは熱が下がるのを早めてくれます」(長谷川さん)

会社や学校に通うなどして、人混みを避けるのを難しい人は、ウイルスから逃げるというよりも、喉を潤わせるなどして免疫力を高める努力をするのが現実的なようです。また、インフルエンザが流行している時期に大熱がでたら、仮に病院で陰性との判定が出ても、感染したものと思って動いた方が良いかもしれませんね。

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