正社員でも副業できるのか? 休日は養蜂家、平日はITエンジニアの副業ヒストリー

公開: 更新: テレ東プラス

fukugyo_20191130_thum_00.jpg画像素材:PIXTA

働き方改革が叫ばれているいま、副業やWワークをする会社員が増えています。しかし、どうやって副業すればいいのか?といった悩みもつきものです。そこで、実際に正社員でありながら副業で収入も得ている"副業のプロ"に、副業のアレコレを学ぶことにしました。

今回お話をお聞きしたのは、エンジニアとしてフルタイムで働く傍ら養蜂歴7年になるハチさん。元々料理が趣味のハチさんは、「国産のおいしい蜂蜜を思いっきり使って料理したい! でも国産の蜂蜜は結構いいお値段がする......。 それなら自分で採蜜しよう!」と思い立ち養蜂を始めたそうです。

そんなハチさんに、ゼロからの養蜂のはじめ方や、続ける上での注意事項、そして実際稼げる金額など、副業にするうえで、気になることを色々とお聞きしてきました。

Q1.ズバリ副業で養蜂は稼げるのか?

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「僕の場合は2012年に養蜂をはじめたんですが、2012~2016年は土地を探したりする準備期間と日本ミツバチの飼育の試行錯誤で時が過ぎ、売上はお小遣い程度にしかなりませんでした。2016年から西洋ミツバチの飼育に切り換えたことで採蜜量が増え、2018年には5箱で130kgほどハチミツを採蜜できるようになりました。その年の売上額は477,400円。2019年は6箱で210kgを採蜜したので、売上は816,600円です。計画通り進めば、2022年には採蜜量が20箱で1,200kgまで増え、売上も5,099,200円になる予想なので、頑張って達成したいですね。」

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「初期費用はかかるものの、この飼育法ならこの土地で飼っていけるという試行錯誤もするため、安易に巣箱を増やせず難しかったのですが、西洋ミツバチに切り替えたことで軌道に乗せられるようになりました。副業という観点で選ぶのであれば、西洋ミツバチを飼うことをおすすめします」

Q2.養蜂をはじめる第一歩は?

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「最初は対面の養蜂講座に参加することをおすすめします。飼い方の本もありますが、具体的な作業方法は詳しく書かれていません。僕の場合は、自然暮らしを特集した雑誌『うかまた』のイベント欄に掲載されていた『長野県車山高原のはちみつ蔵』の養蜂講座を見て参加を申し込んだのが最初。『はちみつ蔵養蜂講座』は年に4つくらいのコースを開くのですが、興味のある2つほどを選んで参加しました。僕が受けたときは1つのコースにつき年に1度の開催で、週末に一泊二日で参加する講座でした。その他、ウェブで見つけた週末農業学校の養蜂講座にも、週末を利用して月に2回ほどのペースで半年通いましたね。今も年に2度、『はちみつ蔵養蜂講座』を受講して勉強しています。養蜂講座では、本には載っていない実践的な技術なども聞けますよ。」

Q3.養蜂をはじめて苦労したことは?

「講座を受けて、いざ実践する段階で第一関門となるのが場所探しです。畳一畳分のスペースがあれば一つの巣箱を置けるので、自宅でも始められますが、ハチの糞を近所の新車に落としてご近所関係が揉めたという話もあるので、住宅地ではじめる場合には注意が必要です。

おすすめは、ミツバチを飼いたい地域で開催される町おこしイベントなどに足を運んで、土地を探していると話をすること。街から離れると住む人もなくて、草を刈ってくれるなら無料で使っていいよという話が結構あるんです。なので、ぜひ一度足を使って無料で使える土地を探してみてください。

ミツバチを飼うのにおすすめの土地は『市街化調整区域』など家を建てられないなど価値の少ない土地です。土地代が安いだけでなく、まわりに住宅が少ないことが多く、農地じゃないので使用に農業委員会の許可が不要なのが利点かと。僕自身も30万円ほどで80平方メートルの土地と40万円ほどで200平方メートルの土地を購入しました」

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「土地を買うときは、巣箱からミツバチが蜜を取りにいける半径2km以内にどんな木が生えているかを事前に把握することも重要です」

ミツバチは花から蜜を吸いますが、木よりも草花の種類や咲く時期を確認した方が良いのでは?と質問すると、「どんな草花よりも樹木の花の方が圧倒的に蜜を出す」のだとのこと。実際、レンゲ畑二反分と栃の木1本からとれる蜜の量はほぼ同じで、まわりに道路やビルが立ち並ぶ銀座でも、栃の木がたくさん生えていることから、ビルの屋上での養蜂が盛んに行われているそうです。

Q4.初期費用としていくら用意しておけばいい?

「土地代を抜いて二箱で始めることを想定すると、最初は20万円程度資金があれば良いかと。その後順調に採蜜を行えそうに進められたら、採蜜を行うための資材や道具に10万円くらい追加でかかるんです。ですので、予備費含め30万円前後かかると見込んでおけば良いかと思います。」

Q5.習った通りにやってもうまくいかないといった経験は?

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「いざ養蜂をはじめてみたら、最初のうちは『全然うまくいかない......』となることも多いです。1年目はうまくいっても2~3年目でズタボロになる、いつも冬を越す前に全滅してしまうので毎年ミツバチを飼い直しているというのはよく聞く話......。

何故そうなるのかと言うと、教わった通りにしても結果は教科書のようにうまくいかないからです。だから飼育法の勉強だけでなく、教わったことを自分の土地に合わせて調整していくことが大切。最初は2箱くらいではじめて、安定するまで様子を見つつ試行錯誤する期間を設けることが大事だと思いました。最初に20箱買って、土地に合わせた調整を間違えると、20箱分のミツバチが死んで一気に120万の損失になりますから。養蜂をしていると必ず勃発するダニや病気、天敵などへの対処が少しでも遅れれば一気に全滅することもありますし、何年飼おうが気は抜けません」

Q6.販売方法は?

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「マルシェ、フリマ、道の駅、量販店、通販など、人によって販売方法は様々です。僕の場合は、マルシェやフリマでの販売がメイン。あと知り合いの薬膳料理教室などで委託販売いただいていて、生徒さんや近所の方が定期的に購入してくれています。」

Q7.実際、売れるの?

「はい。ハチミツは訴求力がある商品だと言われます。どういうことかと言うと、わざわざ宣伝しなくても『国産でちゃんと作っている』『非加熱』というキーワードを聞くだけで、『真面目に作っているのなら買いたい』と言ってくれる人が一定数いる商品なんです。

だからこそハチミツで副業をするなら信用が第一。個人からハチミツを買うようなハチミツ好きは『これって本当に水アメいれてない?』などと、マルシェやフリマでも用心深く質問されますし目や舌も肥えています。だから僕も店頭に実際に飼育しているミツバチを持って行くなど、視覚的にもちゃんと作っていることが伝わるように工夫することもありますが、香りや味を試食いただいておいしければ、ハチミツ好きの方はちゃんと買ってくれてリピート客になってくれますよ」

ハチさんいわく、ズルして作ったハチミツはおいしくなく香りも異なるそうです。

fukugyo_20191130_07.jpg▲マルシェで店頭販売の様子

「フリマやマルシェに出品する場合は、そのフリマやマルシェがハチミツとの親和性が高いかどうかしっかり見極めます。ハチミツ好きがこないマルシェ場にいくら数多く出店しても、全く売れませんからね」

Q8.正社員で働きながら、養蜂をつづけることは可能なのか?

「3~9月の温暖な時期に、週に1回は巣箱を確認することができるなら本業との両立は可能です。この確認を怠ると、分蜂と言って、新しく生まれた女王バチが巣箱の半分のハチをつれて逃げてしまうので、特に住宅地などで飼う場合は、近隣トラブルを防ぐ意味でも必須の条件だと思います。規模や作業内容によりますが、一つの箱を確認するための時間は15分~1時間程度です」

秋~冬はひと月に1度程度の確認でも大丈夫なのだそうです。

Q9.副業として養蜂をすることに向いている人は?

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「細かい作業が得意な人が向いていると思います。趣味でなく、副業収入を狙うのであれば、耳かきのようなもので2ミリくらいの幼虫をすくいとる作業があるので。あとDIYが趣味な人は、必要な設備を組み立てたり作ったりできるので、費用を抑えられていいですね。向いてないのは、目の前の利益ばかりを重視してしまう人。たくさん売りたいからと蜜をしぼりすぎる人は、ハチが食べる分の蜜まで奪ってしまうので、ハチが越冬できずに全滅してしまいます。生きもの相手の仕事ですから、ハチへの愛がないと厳しいでしょうね」

なかなか大変そうですが、根気強く試行錯誤をする過程を楽しみながら生き物や自然を愛することができる人なら、数年で大きく粗利を打ち出せる魅力的な副業になりそうです。なお都心の自宅ではじめる場合、ご近所トラブルだけは気をつけてくださいね。

【取材協力】
ハチ
昼間はエンジニアとして働きつつ、休日は養蜂家として活躍。
養蜂に関する話を執筆中。

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