背後にうつ病が潜む可能性も! 頭痛、肩こり、めまい...「不定愁訴」の正体:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

毎週木曜夜7時58分から放送の「主治医が見つかる診療所」は、皆さんが知りたい医療の疑問に第一線で活躍する医師たちがやさしく答える、知的エンターテイメントバラエティ。毎回、病院の選び方のコツや今すぐできる健康法などを、最新情報を交えて発信しています!

今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」では、同番組のレギュラー・姫野友美医師に、視聴者の悩みに答えていただきました。「不定愁訴」かもしれないとのお悩みですが...原因には何が考えられるのか、どう対処すればよいのかに注目してみましょう!

漠然とした自覚症状があちこちに出るのが「不定愁訴」

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Q:30代女性です。最近なんとなく頭が重かったり、いらいらしたり、しっかり7時間寝ても疲れが取れなかったりする日が多くなりました。「不定愁訴」という言葉をよく聞きますが、私のような症状もそれに当てはまるのでしょうか。不定愁訴とはどんな状態をいうのか、どう対処すればよいのか教えてください。

── 先生、不定愁訴とは具体的にどんな症状をいうのですか。

「頭が重い・痛い、疲れが取れない、肩が凝る、冷える、息切れがする、立ち上がるとめまいがする、といった、体に現れるさまざまな不調や不快感を『不定愁訴』といいます。"特定の部位が痛くて(つらくて)しかたがない......" というのではなく、漠然とした自覚症状があちこちに出る、病院に行くほどではないけれど、なんとなく調子が悪くて日常生活に不便を感じるという状態です。

こうした不定愁訴にも実は原因があるんですね。たとえば、自律神経の乱れや栄養不足、ホルモンの異常などが関わっていたり、背後にうつ病が潜んでいる場合もあります。

うつ病は気分が落ち込む、やる気が出ないといった精神的な症状が現れるだけでなく、身体的な愁訴を訴える場合もあるのです。いつまでも肩こりが取れず、薬を飲んでも頭痛は治らないし、夜も眠れない。やっと寝入ったと思ったら夜中に目が覚めてしまうという症状には、うつ病が隠れていることがよくあります。
相談者の場合、7時間寝ても疲れが取れないということですから、その可能性も頭に入れておいたほうがいいかもしれませんね。

不調が続くようであれば、まずは一度きちんと医療機関を受診して不調の背景に何があるのかを調べてみてください。血液検査や自律神経の検査を行うと何らかの異常が見つかることが少なくありません」

── 30代の女性ということですから公私ともに忙しい年代ですね。

「ストレスが多い年代でもありますよね。さまざまなストレスを抱えて自律神経が乱れてしまうのはもちろんですが、忙しさのあまりしっかりと食事がとれていないことが原因になっている場合が結構あります。

たとえば子育て中だったりすると、子ども優先で自分の食事がおろそかになり、簡単にお茶漬けで済ませてしまうなんていうこともあるでしょう。そうなるとたんぱく質などが十分に摂取できなくなり、身体に必要な栄養素が不足してしまうのです。

なかでも鉄が不足すると、食欲不振や冷え、肩こりしている、頭痛、めまいなどが起こりやすくなります。先ほどのうつ病も鉄欠乏を合併することが多いですから、そういった栄養のバランスなども血液検査で診てもらうといいでしょう。しっかりと鉄をとるようにしたら体調が戻った、ということが意外と少なくないのです」

「鉄欠乏」が関係している可能性も

shujii_kobeya_20191127_02.jpg画像素材:PIXTA

── 鉄欠乏というのは女性に多いのですか。

「日本女性の恐らく6~7割は潜在性の鉄欠乏と考えられます。血液検査で貧血と指摘されていなくても、生理のある女性は鉄が足りていないことがしばしばあるんですね。鉄というのは血液中のヘモグロビンをつくるもとになるもので、全身に酸素を運ぶ働きがあるのですが、それ以外にも細胞の代謝の化学反応に必要な酵素(含鉄酵素)の活性を助ける重要な役割があります。酵素が足りないと当然代謝が落ちてきますから、そこからいろいろな不調が現れ始めたり、脳の働きが鈍くなってきたりします。

また、粘膜や皮膚、骨をつくるうえでも鉄は必要です。コラーゲンの生成にも関与しているので、鉄が足りなくなってくると、ニキビができやすくなったり、肌が荒れたりします。口内炎ができやすい、抜け毛が気になる場合も鉄が不足していることが多いんですね。ぶつけた記憶がないのにいつの間にかあざができているときも注意が必要です。

さらに、寝つきが悪い、寝起きが良くない、午前中はいつも調子が悪いという場合も鉄欠乏が関係している可能性があります。」

── まずは食事を見直すことが大事なのですね。不定愁訴の治療としてはどんなことをするのでしょうか。

「明らかに栄養素が足りていない場合には管理栄養士がしっかりと食事指導をします。また、処方薬の中には鉄やアミノ酸などもありますから、必要があれば服薬して改善を目指しましょう。今はサプリメントも充実していますので、それらで鉄(ヘム鉄)を補給するのもよいでしょう。

甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症など、ホルモンの異常を伴っている場合は、おもに薬物治療を行うことになります。甲状腺ホルモンに関わる病気は女性に多いのですが、複数の症状(不定愁訴)が現れるため気づきにくいことがあります。血液検査をすればすぐにわかりますので、見逃さないようにしましょう。うつ病があると診断された場合もきちんと抗うつ薬を使って治療をしてください。

不定愁訴は何よりも医療機関で原因を調べ、診断を受けたうえでそれに合った治療を開始することが大事です。放っておいて悪化させないようにしたいですね」

── 姫野先生、ありがとうございました!

【姫野友美医師 プロフィール】
1954年 静岡県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
九州大学医学部付属病院心療内科、Mayo clinic Emergency Room (U.S.A)Visiting Clinician、都立広尾病院、東邦大学大橋病院麻酔科、木原病院、テーオーシービル診療所などを経て、2005年ひめのともみクリニック開設、2006年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。著書に「女の取扱説明書」(SBクリエイティブ)、「心療内科に行く前に食事を変えなさい」(青春出版社)など。

※この記事は姫野友美医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った姫野先生も出演する「主治医が見つかる診療所SP【オシッコで早期発見、怖い病&家に潜む危険】」(11月28日木曜夜7時58分)。

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