「日本はまだまだ男性社会。『女は使えない』と言われる一方で、『女なのによく頑張った』と言われることもある。そちらの割合を増やしていくしかない」栗原美和子ドラマプロデューサーが語る”働く女の現在地”:ハル~総合商社の女~

公開: 更新: テレ東プラス

ラーメンからロケットまで、ありとあらゆる商材を扱う総合商社を舞台に、主人公・海原晴(中谷美紀)が、社内の各部門や系列会社が抱えるさまざまな問題に挑み、爽快に解決するドラマBiz「ハル~総合商社の女~」(毎週月曜夜10時 BSテレ東は毎週金曜夜10時)。保守派が牛耳る旧態依然とした社風の中、アメリカ帰りのパワーウーマンでありシングルマザーでもある晴が奮闘する姿、そして直属の上司となった元夫(藤木直人)の存在に揺れる女心を描いていく。

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本作を自身の実体験を生かして企画したのは、1987年にフジテレビ入社以降数多くのヒットドラマを手掛け、現在は系列会社となる「共同テレビ」ドラマ部部長として第一線で活躍し続ける栗原美和子プロデューサー(代表作に「ピュア」「バージンロード」「ムコ殿」「人にやさしく」など多数)だ。

ときにトップダウンを覆しながら常識にとらわれないやり方で問題を解決し、新風を吹き込む晴。何とも爽快な女性を主人公としたヒューマンドラマは、いかにして生まれたのか...。また「1986年に施行された男女雇用機会均等法とともに社会人生活を歩んできた」と語る栗原さんの目に映る、"働く女性"の現在地とは? 幅広い視点で語っていただいた。

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地上波とCS...予算も規模も違う中、力を貸してくれた仲間を一生大事にしようと思った

──総合商社の中でも精鋭部隊として知られる企画経営部に社長の肝入りで転職してきた晴が、完全アウェイの空気をものともせず信じた道を切り拓いてく。中谷さん演じる知的かつタフな晴の姿が清々しく、日々仕事に息苦しさを感じているビジネスパーソン...とりわけ働く女性がスカッとするドラマになりました。

「中谷さんがストレートな物言いでありながらも、嫌味じゃない。明るく前向きに仕事に取り組んでいく晴というキャラクターを作り上げてくださったので本当に助けられましたし、私自身すごくうれしかったです。視聴者のみなさんもそんな晴の奮闘を見て、スカッとした気持ちになっていただけているのではないでしょうか」

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──本作は栗原さんご自身の実体験を生かしたオリジナル企画と聞きました。これは、2011年8月、栗原さんが「女性チャンネル♪LaLa TV」(CSチャンネル)の改革を任された際の体験を指すのでしょうか?

「そうですね。私は、『LaLa TV』をもっとクリエイティブな局にするべく呼ばれたわけですが、晴の初出社シーン同様、部内の温度がまったく違ったんです。「LaLa TV」は大手商社の系列会社であるため、商社からの出向者が山ほどいて、正直"いったい何しに来たの?"みたいな空気でした(笑)。クリエイティブより利益最優先、社内には、余計なことはせず、現状維持でいいじゃないか...という空気がものすごくありました」

──利益優先、現状維持...「ハル」でも聞き覚えのあるワードです。

「でも、"そういう状況を変えてくれ"と言われて来たわけですから、一生懸命やるしかないじゃないですか。なかなかこちらの思いが伝わらないもどかしさや社内の温度差、利益を優先させる本社からのプレッシャーがありながらも、晴のようにとにかく前を向いて進みました。業界内で評価していただけるバラエティ番組を立ち上げたりするうちに、少しずつ認められていったように思いますね。

そして、『LaLa TV』で体験したこと、感じたことを"いつかドラマにしてやる!"って(笑)。でもその一方で、本社の皆さんとお酒を飲んだりするようになってお話を聞いていくうちに、本当に大変なお仕事なんだな、世界を動かす人たちなんだなと感心しまして...。そういうリスペクトと"それってどうなの?"と思ったところを上手く一体化させたドラマができないものかと。出向期間が終わってすぐ『ハル』の企画書を立ち上げ、龍居由佳里さんと脚本を作り上げて、5年の月日を掛けてようやく実現しました」

──まっ先に晴に感化される部下の青柳(白洲迅)をはじめ、社内外の人間が少しずつ変化していく。栗原さんもそうした変化を実感されたのでしょうか?

「そのときは目に見えるような変化は感じられなかったんですけど、先日本社の方とお会いしたら、『変わりつつあります』とおっしゃっていました。以前は"石橋を叩いても渡らない"と揶揄されるくらい保守的な社風だったところ、だんだんチャレンジできる環境になってきたと」

──出向の経験を通して、栗原さんが変化した部分、成長された部分はありますか?

「そういう状況だったからこそ、人や組織とのつながりを再確認させられました。誰かがいるから自分の力が発揮できるわけで。地上波とCS、予算も規模も注目度も違う中、『栗原さんがやるなら』と力を貸してくれた鈴木おさむさん、助けてくれた人たちは一生大事にしようと思いました。晴じゃないけど、気持ちの持ちようでそこが好きな場所に変わるし、楽しむことができるということも実感しました」

──晴が常々言っている「楽しく仕事がしたい」。そう願う人は多いと思いますが、実はそれが一番難しい!

「女性が働くことが当たり前の時代になってはいますが、完全に男女平等かといえばそうではないし、基本はあまり変わっていないと思っています。ですから、会社組織に不満や不平を言うのもいいけど、その状況の中で自分の居場所を見つけたり、存在価値をアピールしていく方がいい。それには信頼できる人を見つけられるかどうか。晴であれば、まっ先にシンパになってくれた青柳、藤木さん演じる上司の存在ですよね。一人で戦うと絶対にツラくなるので、助けてくれる人、後押ししてくれる人がいるかどうかはすごく大事だと思います」

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