現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。10月29日(火)の放送では、料理人の新たな生き方を特集。店を持たずとも腕を頼りに奮闘する人々を取材した。
3人の子を抱えたシングルマザーの挑戦 キッチンカーで勝負!
料理人は店を構えて一人前......そうした概念が変わりつつある。昨今では、あえて店を持たない選択をするシェフが増えているという。客のいる場所に直接乗り付けて販売するキッチンカーもその選択肢のひとつだ。
キッチンカーを束ねてビジネスを展開する仕掛け人がいる。キッチンカーと空きスペースをマッチングする「Mellow(メロウ)」(東京・恵比寿)は、2016年設立で社員が24人。約660台のキッチンカーと契約し、合わせて月に約1億円の弁当を売上げている。
売り上げの配分は、メロウ10%、場所代5%、残りの85%がキッチンカーのオーナー。3年前に同社を立ち上げた石澤正芳社長(47)は、「首都圏だけでも最終的に2000台分はいくだろう」と、さらなる拡大を期待する。
6月中旬、開業希望者の説明会には約40人の参加者が集まった。製造業の元会社員や、専門学校で働いていた男性など経歴はさまざま。その中に千明(ちぎら)尚子さん(42)の姿もあった。
千明さんは3年前に離婚したシングルマザーで、3人の子どもを育てている。いまは区営住宅の1LDKに4人暮らし。20代の頃にイタリアで料理修行した経験を生かし、飲食店のアルバイトで生計を立てている。
開業資金は車や調理器具を含めて200万円弱。「お店を持つとなると1000万~2000万円といったお金が必要。リスクもある」と既に決意を固めていた。
開業まで2週間。弁当のメインメニューはローストポークに決めた。
「トマトソースがない方が好き」という長男・慧(さとい)くん(小6)の意見なども取り入れ、弁当の味を固めていく。
肝心のキッチンカーは中古の軽自動車。付け加えたカウンターなどは、DIYが得意な千明さんの手作りだ。長女・想(こころ)さん(高1)の手伝いもあり、千明さんのキッチンカーが形になっていく。
勝負の場所は、東京・品川にある巨大なオフィスの空きスペース。昼時になればランチを求める多くの人であふれる。いよいよ開店の日を迎えた千明さんの初日の販売目標は50食。しかし、いきなりのトラブルで散々の結果が待っていた。自分のため、子供のため、どう巻き返すのか...。
収入月100万円超えも 自宅でコース振る舞う出張シェフ
プロが家に出向いて料理を提供する出張シェフも、料理人の新たな選択のひとつだ。東京・千代田区の谷岡さん(仮名)宅では、イタリア料理のシェフ・清水愛依さん(35)が腕をふるっていた。
この日は子供の5歳の誕生日。谷岡家にとって、年に数回のぜいたくの日。テーブル上には鶏肉の生ハム巻きグリルに分厚い牛ステーキなど全7品の本格的なフルコースが並ぶ。料金は大人1人1万円。
谷岡さんが利用したのは、約50人のシェフから好きな人を選び自宅へ呼ぶマッチングサイト「プライムシェフ」だ。清水さんは同サイトで人気ナンバーワンを誇り、収入は月100万円超のときもあるという。
そんな成功を夢見て、新たに「プライムシェフ」に登録した料理人がいる。YouTubeで料理の作り方を教える浅見尚希さん(28)。専門学校卒業後に和食の料理人として有名ホテルや銀座の名店で調理してきたが、「自分らしさを表現していきたい」と考え、出張シェフを選んだ。
「0から10まで自分で考えて献立を組むことができるので、大変だけど面白い」と浅見さん。刺身の盛り合わせや鯛の塩焼きなどで組み立てた「秋の会席コース」の写真や、自身のプロフィールなどを「プライムシェフ」のサイトに登録し、新たな道の第一歩を踏み出す。
ところが、3週間経ってもいまだ1件の予約も入らない。いったい何がいけないのか...。
一からメニューを考え直す必要があると浅見さんが車を飛ばしたのが千葉県。祖父母が住んでいた思い入れのある土地の食材でアピールしようと策を講じ、新メニュー作りに取り組む。
そしてホームページを更新して10日後、ついに初めての予約が入った。それは意外なお客さんからだった...。
店を構えずに腕を振るう料理人たち。固定概念にとらわれず前へ進む人々の姿を今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!
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