松重豊「『毎回、同じことやってるな』と思いながら、ついつい見ちゃう。それくらいでちょうどいい」:孤独のグルメ

公開: 更新: テレ東プラス

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"ゴロー~♪~ゴロー~♪~ゴロー~♪~イノガシラ、フゥ~"
おなじみのテーマソング「五郎の12PM」とともに、あの男が帰って来る!

輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎(いのがしら・ごろう)が営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、食べたいと思ったものを自由に食す、至福の時間を描いた「孤独のグルメ」。その第8弾となるドラマ24「孤独のグルメ Season 8」(毎週金曜深夜0時12分放送)が、10月4日(金)スタート。

本作は、原作・久住昌之、画・谷口ジローの同名ロングセラーコミックをもとにしたグルメドキュメンタリードラマ。2012年1月、深夜に放送がスタートするや、食欲をそそる料理と五郎の大胆な"食べっぷり"や、ときにメニューに迷い、ときに料理に歓喜する"心の声"がジワジワと話題に。シリーズを重ねるごとに視聴率が上昇し、昨年に放送されたシーズン7第1話では、シリーズ最高視聴率5.1%を記録。また、大晦日の夜には2年連続で生ドラマ放送するなど、大きな反響を呼んだ。

このたび連続ドラマとしては、おおよそ1年半ぶりの始動。満を持しての最新シーズンとなる今回は、「初心忘るべからず」を念頭に、初のスイーツメイン回やグルメカットに新兵器が投入されるなど、さまざまな仕掛けに挑むとのことだが、果たして......!?

そこで、横浜中華街からスタートする第1話のロケ地に、主人公・五郎を演じる松重豊を訪ね、シーズン8の見どころ、手応えを聞いた。

「OH~、ゴロウ!」横浜中華街ロケ、外国人観光客からも大人気

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──第1話の撮影、どうもお疲れさまでした! のっけから、ずいぶん賑やかなロケでしたね。

「こうした有名繁華街や観光地でロケすることはあまりないので、いつになく賑やかでした。普段は、どちらかというとひっそりした裏路地とか小さな駅の小さな商店街が舞台ですから。8シーズン目の初回をどうにか派手なスタートにしたいという、スタッフの思惑が見え見えで(笑)、こちらはへとへとになって大変ですが」

──(笑)、とはいえですね、シーズン8の始動に歓喜する「孤独のグルメ」ファンは多く。ロケ中も、「あ、五郎さんだ」との声がそこかしこで聞かれ、中には「OH~、ゴロウ! グッドガイ」と叫ぶ女性の外国人観光客の方もいらっしゃったり。

「本当のところ、なぜ人気なのか? その理由はわからないんですけれど、東アジアを中心に海外の方も大勢、見てくださっているとのことで、うれしい限りですね。"おいしいものを食べたい"という欲求は世界共通、変わらないのかなと」

──ここ数年のグルメドラマブームをけん引。この人気ぶり、反響をどう思われますか?

「こちらの意識は何も変わらないんですけどね。毎回"ただ、目の前にあるものを食べること"に集中するしかないので、別にアジアのお客さまに向けて──とか、そうした意識もなく。でも、8シーズンも続いて、待ちわびてくれているファンの方がいらっしゃることは純粋にありがたいことですし。逆に言えば、だからこそ8シーズンも続けられているわけだし。おかげさまで、毎回おいしいものを食べられていますしね(笑)。最初のシーズンが始まったときは予想だにしなかった不思議な展開に戸惑うところもありますが、今回も楽しんでやりたいです」

新兵器投入に「ツマんなかったら却下ですね(笑)」

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──その期待の最新シーズン。「初心忘るべからず」を念頭に、初のスイーツメイン回やグルメカットに新兵器が投入されるなど、さまざまな仕掛けに挑むとのことですが......(ここでプロデューサーのグルメカットの新兵器についての解説を聞き)

「そういうね、余計なことをすると失敗するんですよ。スタッフにしても、最初はもっと少人数で、照明部1人、録音部1人とかそれくらいの規模でやっていたんですけど、クオリティ自体は今とそんなに変わらない。だったら奇をてらったことをやる必要はないと思うんだけどな。だからもし、その撮影法がツマんなかったら却下ですね(笑)」

──ともあれ、新兵器の出来上がりのほどを楽しみにするとしまして。初のスイーツメイン回に期待されることは?

「シーズン2のときに放送時間が伸びたので(30分から47分間に拡大)、『原作にもあるスイーツをやってみては?』と、僕の方から提案したことがあるんですけど、ようやく念願が叶いそうです。昔から甘いものが好きで、お酒をやめてからは、より1日の中での甘いものへの比重が増していて、大切な時間になっているので」

──ほか、出張編では「孤独のグルメ」ファン必見の地域に初上陸&新たな挑戦も、と聞いております。

「毎回、出張のときに日数がなくて撮影がいっぱいいっぱいになっちゃうんで(笑)、今回は余裕が欲しいかな、とは思いますが、どこに行くにしろ、初めての地域というのは楽しみですよね」

──前シーズンでは韓国ロケがありましたが、今後、海外で行きたい国や場所はありますか?

「スタッフともども飯を食いながら、"あそこはどうだろう?"と、あれこれ夢想していますが、海外となると、やはり中国、台湾、韓国でしょうか。東アジアの大勢の友人たちに会いたいです。ほかにも、具体的に"どこに行きたい"ということはありませんが、"おいしいもの"があれば、世界中どこにでも行ってみたいです」

松重豊流お店の選び方

──「おいしいものを食べたい」との一念からか、ファンの間では「食材かぶり」と呼ばれている、例えば豚肉料理に豚汁を頼んだりする五郎さんですが、松重さんご自身は、そうした五郎的な状態に置かれることは?

「もちろん、地方ロケなんかに行くと、どこに入ればいいのか、何を食べればいいのか悩んで、井之頭と同じように成功することもあれば失敗することもあります。ただ、最近は人気のおかげか孤独に食べているつもりでも、誰かしらに話しかけられたり。お店の側からサービスで何か一品出てきたり。"食べるときは自由でありたい"という、本来の井之頭的なテーマからちょっと離れた生活をせざるを得なくはなっていますが、基本的には変わらないですね。おいしいものを、自由に食べています」

──では、松重さん流のお店選びは?

「別段ないですけど、やはり井之頭を演じている手前、裏路地でひっそりとやっているお店に極力、行くべきなんだろうなとは思いますよね。そういう意味では役を引きずって店選びをしています。そこにしかない店、そこでしか食べられないものを探すようにはしていますね。井之頭にしても、同じみそ汁でも、"このおばちゃんが作るみそ汁は違う"というものを食べたくて右往左往しているんだと思いますから」

「気を張らず。奇をてらわずにやっていければ」

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──8年の重みじゃないですけど、中には再開発などで変わってしまった街並みや店舗もあるわけで、ひとつの記録としても「孤独のグルメ」が果たす役割りは大きいんじゃないかと。そのあたり、いかがでしょうか?

「当然、街並みが変化したり、昔あったお店がなくなるのは寂しいことだしノスタルジーも感じますし、映像として記録される意義もあるでしょうが、街も店も人も生き物だし、進化する過程でなくなるものはなくなり、消えていくものは消えていっていいと思うんですよ。井之頭も、"今、何がおいしいか?"しか、頭にはないと思いますし。それがその時代、その時代の『孤独のグルメ』なんだと思います。その場所、その時間、その日の気候で何が食いたいか。平成~令和と時代は変わっても、井之頭自身の欲望は何も変わらないんです」

──お話をお聞きしていますと、「変わらないこと」が長寿の秘けつという気がしますが、今後、新たにやってみたいことはありますか?

「できるかどうかはわかりませんが、原作では井之頭が失敗するエピソードもありますからね。可能ならばやってみたいですし。やはり、せっかくこうしたドラマをやらせてもらっているからには新しいもの、食べたことのないものに挑戦したい。かと言って、先ほどから言っているよう、気を張らず。奇をてらわずにやっていければなと」

──最後に、改めましてシーズン8の見どころをお願いします。

「おっしゃったように"何も変わらない"のが『孤独のグルメ』なので別段、何もないんですよね(笑)。"初心"も何も、目の前にあるものを旨そうに食ってる。ただ、それだけなので。ですから、僕は食べることにのみ集中する。新兵器とか大そうなこと言ってますが、たいしたことないと思うので(笑)、みなさんも変わらず、期待せず見ていただければと思います。『毎回、同じことやってるな』と思いながら、ついつい見ちゃう。それくらいでちょうどいいのかなと思います」

【プロフィール】
松重豊(まつしげ・ゆたか)
1963年1月19日生まれ。福岡県出身。蜷川幸雄が主催していた劇団「ニナガワ・スタジオ」を経て、映画、舞台、ドラマなど幅広く活躍する。近年のドラマ出演作として、「アンナチュラル」(TBS系)、「悪党~加害者追跡調査~」(WOWOW)、現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺~」にも出演中。映画では、10月4日(金)より全国公開の「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」や、来年公開待機作として「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」、「糸」などがある。

(取材・文/橋本達典)

横浜中華街を舞台に、豪華ゲストも登場

10月4日(金)深夜0時12分から放送のドラマ24「孤独のグルメ Season 8」、第1話の舞台は、横浜中華街! 五郎の商談相手である占い師・ワン役に八嶋智人、占い館の店員役に日本でも人気の台湾の俳優フィガロ・ツェン、店のお母さん役に榊原郁恵、店の常連客役に"ハマの大魔神"こと佐々木主浩と、豪華ゲストも登場します。

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第1話
井之頭五郎(松重豊)は、横浜中華街の山下町公園のベンチで肉まんをほおばりながら、ムチャぶりされた案件の対応をしていた。どうにかパソコン作業を終え、商談先の占い師・ワン(八嶋智人)のもとへ向かった。始めは自宅リビングのインテリアの相談だったのだが、自身のキャラに迷いがあるワンは、なぜか五郎に進路相談をし始めて......。

何とか商談を終え、腹が減り出した五郎は、一人でも入れる店はと小さな店が軒を連ねる路地を攻めていく。だが香港、上海、台湾、北京......バリエーションのあまりの多さに店が決められない。まさに"中華大迷宮"──めげそうになっていたその時、偶然"釜飯"なるものが目に飛び込んでくる。「中華で釜飯!?」と気になった五郎は、この釜飯に賭けようと店内へ。出迎えてくれた店のお母さん(榊原郁恵)が先客に出した料理も、意外な組み合わせで、五郎の興味はどんどん加速していく。

ドラマ 24「孤独のグルメ Season 8」
放送日時:2019 年 10 月4 日(金)スタート! 毎週金曜 深夜0時12分~0時52分
※テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0時12 分~
主演: 松重豊
出演: 久住昌之 (第1話ゲスト)八嶋智人、榊原郁恵、佐々木主浩、フィガロ・ツェン
(※「榊」...正しくは"木へんに神"と表記)
原作: 『孤独のグルメ』 作/久住昌之・画/谷口ジロー(週刊 SPA!)
脚本: 田口佳宏、児玉頼子
音楽: 久住昌之 ザ・スクリーントーンズ
演出: 井川尊史、北畑龍一、北尾賢人
チーフプロデューサー: 阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー: 小松幸敏(テレビ東京)、吉見健士(共同テレビ)、菊池武博(共同テレビ)
アソシエイトプロデューサー: 川村庄子(テレビ東京)
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