斎藤工が死生観を語る「悪い意味じゃなく、カウントダウンは始まっていると思う」

公開: 更新: テレ東プラス

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ヘアメイク:赤塚修二 (メーキャップルーム)Shuji Akatsuka スタイリスト:川田力也(es-quisse)Rikiya Kawada

2019年10月、天才小児外科医・西條命が帰ってくる! 2011年、人気コミック「最上の命医」を斎藤工主演で連続ドラマ化。放送終了後も、公式ホームページの書き込みが止まらないことで話題を呼んだ。その後は、2016年、2017年にスペシャルドラマとして放送。そして10月2日(水)夜9時から、ドラマスペシャル「最上の命医2019」として復活する。

長い時を経て、千葉・房総にある片田舎の診療所で働く命が、誘拐、脱獄、病院テロに巻き込まれ...。史上最悪の状況に巻き込まれていく命を、再び斎藤が演じる。

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命に感銘して医療の現場で働くようになった方がいると聞き、何より嬉しかった

──初めて命を演じた時と比べて、何か変化を感じることはありますか?

「10年弱でオペのしかたが変わったり、かつてなかった器具が医療の現場に存在していたり...現場で体感することはあります。一方で、小児外科が抱える問題が解決しない事例としてあり続けているということも実感しています」

──シリーズがスタートして8年ほどになりますが、斎藤さんご自身の中で変化を感じることは?

「命は数字では加算できないなにかを最大の魅力として持っているキャラクター。現代というレイヤーだけでなく、いろんな時代をまたいでいるひとつの象徴みたいな...。そんな命と比べると、僕自身は迷走している感があります(笑)。

変化ということであれば、人は年齢を重ねるにつれ、当然落ち着いてきますよね。でも、10年、20年先のことを考えると、今は落ち着く必要はないのかな? とも思います。ケガをしてかさぶたになった分、皮膚が厚くなっていくこともあるだろうし、恥をかいてもケガをしても、まだまだすそ野を広げていきたいと思っています」

──命から影響を受けることはたくさんあったようですね。

「連続ドラマの時に描かれていましたが、命は自分が大きな病(がん)を抱えているにも関わらず、他者の未来のために迷いなく自分の優先順位を譲れる、他者に向ける強さがある。素晴らしい精神ですよね。こういう人がいたらいいな、という要素を集めて形成されたキャラクターではないでしょうか。

自分ができることは何か、西條先生ならこうするだろうな、という自分の中で何かをジャッジする際の物差しになってはいるかもしれません。長い年月寄り添っているので、命の要素が、僕自身が掲げる目標になっているなと感じます」

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──この8年間、公式ホームページの書き込みが絶えることはありませんでした。根強いファンがいることも本作の特徴のひとつですが、斎藤さんが実際にファンの反響を感じたことはありましたか?

「このドラマがきっかけになって、実際に医療の現場に立たれている方がいらっしゃったり、スタッフのお子さんが命先生のことを知ってくれていたりと、若い世代がしっかりとメッセージをキャッチしていることは伝わってきました。何より喜ばしいことですよね」

──待望の新作です。見どころを教えてください。

「病院テロなど、並々ならぬ人物が入り乱れ、シリーズ史上最大のサスペンスフルな展開になっています。岸谷吾朗さん演じる佐久間の抱えているものが、親子の問題だったり、お子さんが被害者になってしまう事件だったりと、今、世の中で起きていることとリンクしているので、僕としても想像していた以上に背筋を走るものがありました。

この作品が始まった時、視聴率にとらわれすぎて本質を見失うことがないように...そんな部分も考えながら作ってきました。今回の作品は、特にそういう部分を意識しながら、没頭して作れた作品になっていると思います」

一度体感として死を考え、死を受け入れたことがあります

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──命のようなお医者さんに出会いたいけど、「自分がお医者さんにかかるのは苦手...」という方もたくさんいると思います。斎藤さんは病気になるとすぐ病院に行くほうですか?

「状況によりますが、仕事柄"早く行かなくちゃ"という思いはあります! 絶対に人にうつせないですし、僕が病気でダウンしたら撮影も止まってしまいます」

──病気にならないように健康管理もしっかりしている?

「食事は以前に増して気をつけています。"炭水化物を抜くのはちょっと違うかな"と思うところもあって...。昔の人はみんなお米で育ってきたから元気なのでは? と。今は自然薯にハマっていて、たわしでゴシゴシ泥や皮を落として、すったり切ったりして食べています。食材を取り寄せてちゃんと料理するというプロセスを大事にするようになりました」

──「最上の命医」を観ていると、"命や死"について深く考えさせられます。斎藤さんは、独自の死生観をお持ちなのでしょうか?

「全然悪い意味じゃないんですけど、カウントダウンは始まっているなと思いますね」

──えっ? まだ38歳なのに?

「そうなりますよね(笑)。説明すると、人生100年時代とはいえ、すでに折り返していると考えたほうが1日1日を充実して過ごせると思っています。メメント・モリ...ラテン語で"死を忘れるなかれ"という意味ですが、死を考えることは生を輝かす。なので、死に向かう意識をしっかり持つようにしています」

──たしかに。でもまだ30代後半なのに、ちょっと早すぎませんか?(笑) ドラマの影響だけではなさそうです。

「実は、バックパッカーをしていた18歳の時、1回走馬灯を見ているんですよ。当時、まだ生きていた祖母と一緒に住んでいましたが、走馬灯の中でおばあちゃんより先に亡くなる自分を冷静に回想していて、雑ではありましたが、人生の総集編を見たんです!」

──いったいどんな状況でそうなったのでしょう。すごく気になります。

「フランスである団体に捕まってしまいまして...でも、命からがら助かった。ドラマみたいなエピソードで(笑)。その時、一度体感として死を考えて、死を受け入れたんです。だから僕にとって、それからは余生。今も余生。大幅に余生を頂いているので、ありがたく何ができるかをいつも考えています。何につけ、死を意識しながら生きたほうが得だと思えるから...」

──なるほど...。それでは俳優として、これからの余生でやりたいと思っていることはありますか?

「かつての映画人たちは、時代に密接した作品作りに挑みました。ですから僕は、今、来年、再来年に何が起こるかということに寄り添って、モノを作っていきたいと思っています。かつての巨匠や名優たちが嫉妬するようなことを率先してやっていきたいなという意識がすごくあります」

いつもながら、短い時間でも決して言葉を惜しむことなく、1つ1つ噛みしめるように答えてくれた斎藤。死を考えることは生を輝かす...彼の言葉はどこか大きなパワーを秘めている。淡々とした振舞いの中にも、どこか貪欲さを感じる稀有な存在。そんな彼が、今後業界でどんな嫉妬を生むのか...その動向に期待したい。

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いよいよ明日、10月2日(水)夜9時放送! ドラマスペシャル「最上の命医2019」。その気になる内容は...。

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小児外科医の西條命(斎藤工)は、今は房総の田舎町にある診療所で臨時医師として常駐しながら、インターネットを通じて難病の子供達の相談を受けている。そんな命を看護師の多岐川菜月(田中麗奈)が献身的にサポートしていた。ある日、小学校から毎日チョークをかじっているという異食行動の女子児童・中園柚(横溝菜帆)の相談が入る。

検査の結果、外科手術での改善が可能だと分かったが、柚の様子からまずは心のケアを優先することにし、菜月が向き合うことになった。一方の命は、東房総医療センターの院長・中込隆三(村田雄浩)に呼び出され、一度は手術不適合とされた男児のカンファレンスに出席する。自らの身体を実験台にしてまでオペの方法を探る命の様子に、ICUの担当医師・関光一郎(永井大)はあきれ顔。だが中込にはある思惑があった...。

そんな中、殺人罪で房総刑務所に服役していた佐久間耕作(岸谷五朗)が脱獄する。世間を連日騒がせる一方で、柚が突然姿を消してしまい...。

どうぞお楽しみに!

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