臓器の仕事にも影響が! 心臓や膵臓、腎臓にも脂肪がつく...”第三の脂肪”っていったいナニ?:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える知的エンターテイメントバラエティ。

今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、皮下脂肪、内臓脂肪に続く「第三の脂肪」についての質問です。第三の脂肪とは何か? 体にはどんな影響を及ぼすのか? 早速、同番組のレギュラーで、ワインに関する著書も出されている秋津壽男医師に、教えていただきましょう!

日本人の体質は「異所性脂肪」がつきやすい

Q:秋津先生は「本当に怖いのは、第三の脂肪」(幻冬舎)という本を出されていますが、そのテーマにもなっている「異所性脂肪」とはどんなものなのでしょうか。肥満との関係性についても教えてください。

── 先生、第三の脂肪(異所性脂肪)とは何ですか。

「脂肪というと、内臓脂肪と皮下脂肪という区分が一般的ですよね。これらの脂肪を知るうえで、まずは脂肪がどのように蓄積されるのかを説明しましょう。
体に入ってきた栄養素(糖質、脂質、蛋白質など)は腸で吸収されて、形を変えていったん肝臓に蓄えられ、そこから全身に運ばれていきます。このとき使われない余分な脂質は中性脂肪などに加工されて、腸を包んで保持している腸間膜という膜の縁に一時的に蓄積されます。これが内臓脂肪です。さらに内臓脂肪がどんどんたまってくると、今度は皮膚の下の脂肪組織に蓄積され、皮下脂肪となります。

この2つの脂肪の特徴として、脂肪の中に血管が通っている内臓脂肪はつきやすく落ちやすく、一方、内臓の外側にあり血管が通っていない皮下脂肪はついてしまうとなかなか落ちづらくなります。また、皮下脂肪は出血を伴わないぶん、脂肪吸引のような荒療治もできるんですね。

最近になって、この内臓脂肪と皮下脂肪以外の部分にも脂肪がたまることがわかってきました。それが第三の脂肪 "異所性脂肪" です。有名なものに脂肪肝(肝臓に脂肪がたまった状態)がありますが、同じように心臓や膵臓、腎臓などの臓器自体にも脂肪がつきます。臓器というのは必ず血液で栄養を補給されており、血液は糖と酸素と脂肪を運ぶ器官ですから、血液の流れているところには脂肪がたまり得るということです」

shujii_kobeya_20190918_01.jpg

体重を増やさないことが予防につながる

── 異所性脂肪はどんな人がつきやすいのですか。

「異所性脂肪は、基本的には内臓脂肪や皮下脂肪の後につくものです。ただ、まれに、たいして肥満でもなく、内臓脂肪や皮下脂肪も少ないのに、例えば脂肪肝ばかりがつくという人もいます。

人種的な差もあります。世界には500kgを超えるような体重の人もいますが、そのほとんどが皮下脂肪で、日本人はいくら太ってもあのようにはなりません。もともと欧米人は皮下脂肪の数が非常に多いのです。逆にいえば、日本人は皮下脂肪が多くないために、内臓脂肪や異所性脂肪で対応せざるを得ないわけです。
現に、アメリカの超肥満者には心臓病が少ないという意外な報告もあります。一方で、日本では心筋梗塞や脳梗塞になった人に痩せている人が少なくありません」

──異所性脂肪がたまることで、体にはどんな負担がかかるのですか。

「脂肪を蓄える臓器でないところに脂肪がたまるのですから、臓器本来の仕事ができなくなります。脂肪自体が悪さをするというより、脂肪が仕事の邪魔をしてしまうんですね。例えば、ハンバーガーを作って売ることが仕事なのに、余計なストックが店の半分を占めていたら、業務に差し支えますよね。異所性脂肪がたまると、そういう状態が起きるのです」

shujii_kobeya_20190918_02.jpg画像素材:PIXTA

「異所性脂肪は内臓脂肪と違って、一度蓄積されるとすぐには取れません。脂肪はよほどのことがない限り臓器に入っていかない一方で、いったん入るとなかなか出ていかないのです。

異所性脂肪をため込まないために自分で気をつけられることは、内臓脂肪を目安にして、それが増えないような生活をすること。もっと簡単にいえば、自分の理想体重との差はすべて脂肪と考え、体重を増やさないようにすることですね。その差が少なくなる状態が長く続けば、おのずと異所性脂肪も減っていくはずです。ただし、1カ月ダイエットして体重が減ったから異所性脂肪も減るかというと、そういうことではありません。

臓器は健気で、かなり悪くならないと症状が現れず、肝臓に至っては症状が出たときにはほぼ手遅れといっていい状態になっています。そこまで自分の体の状態が悪くなる前に予防することが大事なのです。

異所性脂肪は血液検査で判断することはまだできませんが、超音波(エコー)検査やMRI検査を行うことで、臓器に脂肪がたまっているかを診断することができます。発見しづらく確実に減らす方法が確立されていない異所性脂肪は、そういう意味でも一番怖い脂肪といえるでしょう」

──秋津先生、ありがとうございました!

【秋津壽男医師 プロフィール】
1954年和歌山県生まれ
1977年大阪大学工学部発酵工学科卒業 1986年和歌山県立医科大学卒業
1998年秋津医院を開業
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医
日本医師会公認スポーツドクター 日本体育協会公認スポーツドクター
日本禁煙学会認定禁煙専門医
著書に「本当に怖いのは、第三の脂肪」(幻冬舎)、「薬を使わずに『生活習慣病』とサヨナラする法: 医師が教える『自己治癒力を高める』コツ」(三笠書房)など。

※この記事は秋津壽男医師の見解に基づいて作成したものです。

そして、明日夜6時55分放送! 「主治医が見つかる診療所SP【医師のホンネ大告白&内臓脂肪を減らす新常識】」では...。

shujii_kobeya_20190918_03.jpg
普段なかなか聞きづらいことを医師の皆さんにぶつける「医師のホンネ」、秋の食材「すだち」を食べて内臓脂肪を簡単にしかもおいしく減らせる裏ワザ、そして命に関わる病気になってしまうかもしれない「キケンな習慣」の3本立てでお届けします。

どうぞお楽しみに!

PICK UP