ハウス食品が仕掛ける「後がけスパイスカレー」に密着...熾烈極める「カレー戦争」:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

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現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。9月17日(火)の放送では、シリーズ「外食王」第8弾として、岐路を迎えたカレー市場を徹底取材。飽和状態を打破するために動く人々の姿を追う。

「ハウス食品」が手掛ける"後がけスパイス"の正体

今、ある画期的なシステムを取り入れたカレー店が話題になっている。それはカレー専門店「6curryKITCHEN」(東京・恵比寿)。月額会員制で月に3000円払えば、なんとカレーが1日1皿無料になるというシステムだ。透明なカップにルウとご飯、複数の野菜を詰めた「カップカレー」に、客が持ち込んだ食材を使うオリジナルカレーやなども提供。これまでにないスタイルが受け、多くの客が訪れる。

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個性的なカレー店が次々と台頭する中、「ハウス食品」は頭を抱えていた。発売以来、カレールウ売上1位の「バーモントカレー」を有し、2015年にはカレーチェーン最大手「カレーハウスCoCo壱番屋」を買収し、外食カレーのトップに立った。順風に見える同社だが、人口減少とともに、カレーの国内市場が縮小を余儀なくされることに危機感を抱く。

「今までのものにしがみついているのでは成長性は追及できない」。同社の工東正彦社長は黒田英幸さん(42)をリーダーとした新領域開発部を立ち上げ、問題解決に向けて動き出した。

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黒田さんは「バーモントカレー」「ジャワカレー」などのルウを使ったカレーパン専門店を成功させた実績を持つ。黒田さんが注目したのはスパイスカレーだ。さまざまな香辛料を自由に組み合わせた創作カレーは人気沸騰中で、近年大阪から進出した東京・世田谷区の「旧ヤム邸 シモキタ荘」には大行列ができるほど。

このブームに乗り、黒田さんは9月に新装オープンする「大丸心斎橋店本館」(大阪市中央区)で、スパイス料理店「ハウス クワエルスパイス」の出店を計画していた。ハウス食品が直営店を出すのは実に20年ぶりだという。

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目玉にするのはオリジナルのスパイスカレー。創業の地・大阪で新たな歴史を刻む大事な計画で、メニュー開発を担当するのが同部の藤井佑典さん(33)。

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7月中旬、ハウス食品グループ千葉研究センターでは、藤井さんが新たなカレー作りに取り組んでいた。ルーを完成させた後も、さらなる秘策を考案していた。それは、調理の最後に加える「後がけスパイス」。複数の香辛料を組み合わせ、それぞれの特徴を活かしながら風味が際立ちすぎないようにしなければならないため、作り手の力量が問われる。かつて、ミシュランで星を獲得したフレンチの名店「シェ・イノ」で修行を積んだ藤井さんの腕の見せどころだ。

数日後、ハウス食品東京本社(東京・千代田区)では、調理室で、工東社長自らが新カレーを試食。後がけスパイスは、シナモンで甘さを、ブラックペッパーで辛さを出しバランスよく仕上げた。

しかし工東社長からは「もう一段レベルが上がらないと、他のカレーショップと変わらない」と厳しい評価。

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スパイスのバランスを気にしすぎた結果、インパクトにかけるとの指摘だった。試行錯誤を重ねただけに、藤井さんの落胆の色は隠せない。

そこで、「少しでもヒントが得られたら」と、藤井さんが向かったのは、なんとスパイスの本場・インドだった。絶対に失敗が許されないプロジェクトを託された藤井さんの巻き返しが始まった。

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新店オープンは9月20日。限りある1ヵ月で、理想の後がけスパイスは完成するのだろうか。

これまでにない"かんずり"を使ったレトルトカレー

新たな一手が必要なのはレトルトカレーも同じだ。次々に新作を発表する全国のご当地カレーは地元の特産品も味わえ、手軽に食べ比べができると高い人気を誇るが、市場はすでに飽和状態に。

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大阪市の「阪急うめだ本店」の催場で開催されたイベントでは、400種類以上のレトルトカレーが集結して連日盛況だが、客からは「味が想像できない」など厳しい声もあり、選ばれるのは一握りにすぎない。店内催事企画担当の高橋強さんは、「お客の購入レベルが上がっている。いくら新商品であってもお客は手に取らない」「ほとんどは1年後には消えている」と話す。

全国のご当地カレー800種類を手がけてきた「ベル食品工業」(大阪市鶴見区)の中井威社長は、「当時大手メーカーはご当地カレーを手がけていなかったが、最近は参入してきている。競争は以前に比べると激しくなってきている」と危機感を募らせる。

舌の肥えた消費者を喜ばせる新たな商品開発が急がれる中、奮闘するのが研究開発部の内村あゆみさん(40)だ。

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18年のキャリアを持ち、100種類以上のレトルトカレーを手がけたエース。彼女の新たな挑戦は、新潟の特産を使ったカレー作りだ。

実は新潟市は、カレールウ1世帯当たりの年間支出額が全国2位で、隠れたカレー王国なのだ。ところが新潟の名産品を扱う店から「県産品にこだわったカレーがまだ少ない」との声が。

そこで内村さんが向かったのは新潟・妙高市。畑には巨大な唐辛子が赤々と実っている。口に運んだ内村さんは「甘みがあって辛い!」とうなずく。実はこの唐辛子は妙高伝統の調味料「かんずり」のため、特別に栽培されたものだ。

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この唐辛子を雪の上に3日さらすと、渋みが抜けてマイルドな辛みに。これをすり潰し、ゆずやこうじ、食塩と混ぜ合わせて3年熟成すれば出来上がり。

「西のゆずこしょう」に対し「東のかんずり」とも呼ばれる万能調味料は、現地では焼き物に添えたり、汁物に入れたりと大活躍。しかし辛さの質の違いからカレーに使うことはこれまでなかったという。

「おいしくまとめたい」と意気込む内村さんは、大阪の本社に戻ると、早速試作を始めた。目指すのはかんずりの風味を生かしたレトルトカレー。同じく新潟ならではの"ある食材"を足し、これまでにない味を実現させようとしていた。

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激化する"カレーサバイバル"に知恵を絞って挑む企業の姿を今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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