プロのパイロットに習う、ドローンの選び方&飛ばし方

公開: 更新: テレ東プラス

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最近テレビを見ていると、ドローンを使った上空からの映像をよく目にするようになった。ドローンは家電量販店などでも販売されているが、初心者でも買ってすぐに操縦できるものなのだろうか?

今回はTVや映画、CMなどでドローン撮影を年間200案件手掛けている、ドローンパイロットの早川晋平さんにインタビュー。ワークショップなどでも行っている、ドローン操縦の初歩的なテクニックをレクチャーしてもらった。

初心者にオススメのトイドローン

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──ドローンは規制が厳しかったり、操作が難しいイメージがありますが、操縦に免許などは必要なのでしょうか?

「海外では登録制の国もありますが、日本では免許や資格は必要ありません。基本的にはドローン飛行の禁止エリアや禁止飛行方法をしなければ、誰でもドローンを飛行できます。ただ、ドローンの事故が社会的な問題になっていることもあり、操縦を教えるスクールが増えています」

──初心者がドローンを飛ばしてみたいと思ったら、まずどうすればいいんですか?

「初心者にオススメなのは、本格的なドローンではなく、おもちゃの『トイドローン』です。通常のドローンは機体が重いのに加えてプロペラが高回転なので、安全面にも配慮しなければいけません。慣れない操作で他の人を怪我させる恐れもあります。また、飛ばす際には地上の法律に加えて、空の法律(航空法)も覚えなければいけません。それらを考えると、初心者に通常のドローンはハードルが高いので、トイドローンが良いのではないかと思います」

──なるほど、購入する場合の予算はどれくらいでしょうか?

「トイドローンは5,000円~1万円と安く購入できて、壁に当たっても壊れにくいので、練習用としてもオススメです。通常のドローンは10万円以上の機種も多く販売されています。しかし、操縦に不慣れで壁にぶつけたりした場合、壊れてしまうと残念な気持ちになりますよね」

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──これがトイドローンですか。とっても小さくて軽いですね。

「トイドローンは、重量200g未満なので航空法の対象外になります。そのため、基本的にはどこでも飛行できます。例えば自宅の庭や知り合いの敷地などですね。もちろん『ここで遊んでいいですか?』と許可を取ってからの方が良いでしょう。通常のドローンに比べれば、人に当たってもそこまで痛くないですし、壁に激突しても壊れにくいです。機種によっては頑丈なプロペラガードや、飛行する高さを自動でキープしてくれる『高度維持機能』がついているので、初心者には使いやすいと思います」

──飛ばしながら映像も撮影できるのでしょうか?

「動画撮影もできますが、昔のガラケーぐらいの画質なので、撮影した映像を楽しめるほどではありません。また、全体的に揺れた映像になってしまいます。映像を撮影して楽しむ...というよりは、ドローンの飛行を楽しむほうに重きをおいたほうがいいですね」

──外でも飛ばすことはできますか?

「自宅の庭や知り合いの敷地などで飛ばすことはできますが、外では風の影響を強く受けてしまいます。風速2~3mぐらい吹いていると、ピューっと風に流されてしまいます。木に引っ掛けたりする可能性もあるので、トイドローンは室内で飛ばすことをオススメします」

※今回の撮影はドローン飛行OKのスタジオ内で、許可をとって実施しています

ドローンの操作に重要な「距離感」と「慣性の法則」

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──トイドローンの飛ばし方を教えていただきたいのですが。

「飛ばす際には、電源を入れて離発着のボタンを押せば自動的に浮上します。着陸のときも、このボタンだけで着陸してくれるので、初心者にはかなり便利ですよ。先ほどお話した『高度維持機能』を搭載した機種は、同じ高度を維持してくれます。操作は前後左右のスティックを動かすだけなので、ちょっとやってみますか?」

──いいんですか!? 壊さないように気をつけます!

「壁に激突したりしても、そんなに簡単には壊れないので安心してください。それに、説明を聞くだけよりも、実際にやってみると感覚が分かると思います。(リモコンを持たせて)それでは、まず浮上させてみてください」

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──あれっ、操作しなくてもドローンが動いちゃうんですけど!?

「ええ、エアコンの風でも影響を受けたりするので、何にもしなくても機体がどんどん流されるんです。なので、前後左右のスティックを微妙な感覚で操作して、一定の場所にとどまるよう意識しながら飛ばしてみてください。このように、空中のある場所に止まって浮かぶことを『ホバリング』といい、ドローンを操縦する上では必須の操作になります」

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──ホバリングが出来ないと、自由に飛ばせないということですね。

「そうなんです。自由自在に旋回させたり、ぐるぐる飛ばしたりしたいと思いますが、まずドローンをしっかりとコントロールできないと、自分の意思で飛ばすことはできません」

──見た目以上に繊細な指の動きが必要ですね。でも何度かやればコツを掴めそうです!

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「かなり上達してきましたね。ホバリングに慣れてきたら、次のステップは前後の飛行です。まずはホバリングして、しっかりと機体をコントロールしてから、まっすぐドローンを進ませて壁の近くで止めます。簡単そうに見えますが、これもコツを掴むまで練習が必要だと思います」

──早川さん! ドローンを止めようとしても、なかなか止まりません!

「車と同じように、前に向かって動いているドローンに何も力を加えなければ、そのまま動き続けます。これを『慣性の法則』といいますが、どれくらいの操作(力)を加えればドローンが止まるのかを感覚的に掴むことがまず重要ですね」

──あれっ、今度はかなり壁の手前で止めてしまいました......。

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「もう一つ重要なポイントは、ドローンと障害物の距離感を掴むことですね。人間は普段の生活で、立体的な距離感を意識しながら、何かを動かす状況はほとんどありません。あるとしたらゴルフなどの球技ぐらいですかね(笑)。そのためドローンがどこまで進んでいるのかを常に把握しようとして、壁との距離感を掴んでおく必要があります。前後の移動ができるようになったら、左右の移動もマスターできるようにしましょう」

ほとんどの初心者がつまずく「対面飛行」とは!?

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──前後左右の飛行に慣れてきました! 次のステップは旋回ですか?

「いえいえ、それは2ステップぐらい先なので焦らないでください(笑)。その前に、ここまで学んだことが身に付いているのかどうか、テストしてみましょう。10mぐらい離れたところにある椅子や台に着地できるようにドローンを動かしてみてください。ホバリング、前後左右の移動、離着陸の技術が全てつまっています。まずは見本をお見せしますね」

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──おお〜、一発で成功! さすがです! これは家でも出来そうなので良い練習になりそうですね。

「ここまでのステップを1時間半~2時間のワークショップで教えています。大抵の方はここまですぐに上達するのですが、皆さんがつまずきやすいのはこの先のステップです」

──え、ここから難しいテクニックが必要ってことですか?

「感覚的にはちょっと難しいと思います。今までは、ドローンが自分の向いている方向と同じ方を向いていましたが、次のステップは自分とドローンが向き合った状態で飛ばす『対面飛行』です」

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──ドローンがこっちに向いているだけで、さっきと同じなのでは?

「実際にやってみると分かると思います。ドローンがこちらを向くようにして飛ばしてみてください」

──(飛ばしてみて)うわっ、ドローンが逆の方向に飛んじゃいます!

「ドローンの向きがこちらを向くことで、リモコン操作の前後左右が逆になるんです。これは普段の感覚と全く違うので、体験したほぼ全員が戸惑いますね」

──対面飛行をマスターするには、どうすればいいんですか?

「自転車を乗るときと一緒で、ひたすら練習して慣れるしかないと思います。私も最初の頃は、TVを見ながら対面でホバリングさせて、バッテリーがなくなったら交換することを何度も繰り返していました。ただ、対面飛行に慣れすぎると、普通の向きで飛ばしたときに頭の中で前後左右が逆になってしまうので、通常の飛行もたまに行ったりするなど、工夫が必要です」

──慣れるまで時間がかかりそうですが、これをマスターすればもっと自由に飛ばせそうですね。

「対面飛行をマスターすれば、旋回もできるようになります。なぜ旋回を後のステップにしているのかというと、クルッと旋回したときにドローンの前後左右が逆になるからです。つまり、対面飛行に慣れれば旋回してドローンの向きが変わっても、機体をしっかりとコントロールできるようになります」

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──早くドローンを操縦が出来るようになりたいです! 上手になると、どういうことができるのですか?

「それでは、あのカーテンレールの上をくぐってみましょうか。このような操作をするときは、先ほどお話した距離感も非常に大切になってきます」


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──おお〜! 室内でも色々な楽しみ方ができそうですね!

「ラジコンのような感覚で遊べるので、気軽に体験していただければと思います。対戦型のトイドローンもあったりするので、まずは楽しみながら操作に慣れて、そのあとで本格的なドローンに挑戦するのが良いのではないでしょうか」

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【プロフィール】
早川晋平
株式会社ドローンエンタープライズ 代表取締役。広告制作やPR支援など10年以上クリエイターとして従事、ドローンで新しいワクワク感を提供すべく2015年から活動。クリエイターならではの「気持ちいい映像」を大切にし、企業PV・映画・テレビ、MV、広告やイベントなどのPR分野専門に撮影。日本全国のドローン飛行許可承認を国土交通省から取得済み。

【撮影協力】
株式会社ドローンエンタープライズ
住所:東京都中央区日本橋兜町17-2 4F
電話番号:070-6462-1201

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