「ドローンって近所で飛ばせないの?」...素朴な疑問をプロパイロットに聞いてみた

公開: 更新: テレ東プラス

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最近テレビを見ていると、ドローンを使った上空からの映像をよく目にするようになった。美しい映像を観ていると「自分も飛ばしてみたい」と思うものの、このところドローンの迷惑行為が問題になっていることもあり、思わず二の足を踏んでしまう。

そこで今回はテレビや映画、CMなどでドローン撮影を年間約200案件手掛けている、ドローンパイロットの早川晋平さんにインタビュー。ドローンについての疑問を色々とぶつけてみた。

自宅の庭や近所の公園でドローンは飛ばせる?

drone_20190909_01.jpg画像素材:PIXTA

──まず、ドローンを飛ばせる場所について教えてください。

「ドローンは機体重量によって航空法の対象か否かが決まります。重量が200gを超えるかどうかで、飛ばせる場所が変わってきます。まず、重量200g未満のトイドローンの場合は、航空法の対象外のため、基本的にはどこでも飛行可能です。自宅の庭やリビング、知り合いの敷地内などですね。ただし、公園はドローン禁止になっている場合が多いため、事前に確認したほうがいいです。」

──重量200gを超えるドローンはどこで飛ばすことができますか?

「重量200g以上のドローンは航空法の対象になります。そのため、飛ばすことができるのは、ざっくりと人が住んでいないようなエリアになります。これは「人口集中地区では飛行禁止」となっているためです。また空港周辺だったり高度150m以上だったり、国の重要機関の周辺なども禁止されています。あわせて、夜間飛行や目視外飛行、飲酒飛行など、航空法によって禁止されているため、重量200g以上のドローンを飛行させる場合には充分に気をつけなければなりません。ただし、屋内なら航空法は適応外のため、どこでも飛行できます。

──飛ばせるエリアかどうかは、どうすれば分かるのでしょうか?

「一番簡単な方法は、国土地理院のサイトを利用することです。左上の『情報』ボタンを選択し、『他機関の情報』→『人口集中地区 平成27年』と操作すると、地図上の一部が赤く表示されます。これが人口集中地区となり、そのほとんどが飛行禁止エリアに該当しています。また飛行禁止エリアとなっている人口集中地区ではない場所以外でも、地上のルールを守らなければなりません。例えば、地上のルールで河川敷や海岸、公園ではドローン禁止となっている場所もあります。他人の敷地でドローンを飛行させることも、所有権の侵害にあたる可能性もあります。地上にもルールがあるので、人口集中地区ではない場所ならどこでもOKというわけでは一切ありません。」

──自分の家の庭なら、飛ばしても大丈夫でしょうか?

「そう思いがちですが、もし人口集中地区に該当すれば、重量200gを超えるドローンは飛ばすことができません。飛行禁止エリアで飛行させるには、国土交通省に申請を出して許可をもらう必要があります」

──飛行可能なエリアであれば、自由に飛ばせますか?

航空法には禁止事項がいくつかあるので、それらを守らなければいけません。例えば......

・夜間飛行しないこと
・目視外飛行をしないこと(見える範囲で飛ばさなければならない)
・人または物件(車、電線、電柱などの人工物)から30m以上離すこと など

重量200gを超えるドローンを飛行させて、これらの飛行方法をすると航空法違反になってしまいます」

初心者にオススメのドローンとは?

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──ドローンはいくらぐらいで購入できるのでしょうか?

「トイドローンは5000円~1万円で購入できます。重量200g以上の本格的なドローンは10~20万円ぐらいで、操縦ミスすると壊してしまう恐れもあるので、初心者がいきなり購入するにはハードルが高いかもしれませんね。ドローンのレンタルをする会社もあるので、それを利用して費用を抑えるのもいいかもしれません。保険付きの複数日の利用で、大体1〜2万円前後で借りられます」

──トイドローンとドローンはどう違うのですか?

「トイドローンは基本的には屋内で飛行させるドローンです。そのため屋外で飛行させると風に流されてしまいます。またバッテリーが小さいため飛行時間は数分程度です。重量200g以上のドローンはおおまかに80km/hで飛べるものもあり、1つのバッテリーで25分ぐらいは飛ばせます」

──どのくらいの高さまで飛行できるんですか?

「重量200g以上のドローンであれば、航空法で『150m未満まで』と決められています。それでも、50階建てのタワーマンションと同じくらいの高さなので、かなりの高度から広範囲を撮影できます」

──ドローンの操縦は簡単ですか?

「いきなりは難しいと思います。まずはトイドローンを購入して操縦に慣れることがファーストステップです。高いドローンを買って、すぐに壊してしまうのは勿体ないので」

ドローン操縦士の仕事の魅力と苦労は!?

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──やっぱりドローンは空からの映像を撮影できるのが大きな魅力ですよね。

「そうですね、被写体の情報を分かりやすく伝えられるのが、一番良いところだと思います。例えば、企業用のPR映像で工場を撮影するときに、地上からの撮影では規模感を伝えることが難しいんです。そんな時に、わずか数秒間の空撮のシーンを入れるだけで、『広大な敷地』『美しい自然』『立地の状況説明』などの情報を、見た人が感覚的に理解することができます」

──映像に思わず見入ってしまいました。ドローンで撮影する際には、色々な苦労もあるかと思うのですが。

「一番の苦労は、天候に左右されることです。例えば、雨が降っているときや風速5m以上のときは、航空法で飛行が禁止されています。風に関しては、地上で風速3~4mだとしても、ドローンが飛行する上空の高度100m以上の場所は、それよりも強い風が吹いているんです。そのため、注意をはらいつつ飛行させて予定高度を下げたり、時には撮影を中断することもありますね」

──雨で仕事が中止になったりするのも大変そうですね。

「自分の経験値になりますが、一般的な地上での撮影とドローン撮影を比べると、地上を100とした場合、雨天や強風の影響を受けて中止になることがあるためドローンは60ぐらいの稼働率になります。だからといって、暇なわけではありません。ドローンの撮影には、許可取りに必要な各種の申請書を作成が必要ですし、関係各所への調整も要します。ドローンの飛行は事前準備が重要なファクターになりますから」

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──撮影現場で一番大切にしているのはどんなことですか?

「それはもちろん、事故を起こさないことです。地上のカメラで人が事故をして亡くなることは、まずありませんが、ドローンの場合は十分あり得ます。1.5kgくらいのドローンが上から降ってきて人の頭を直撃すると、脊髄を傷つける可能性があります。コントロールを失ったドローンが建物などにぶつかって、付近の通行人に当たることも考えられます。事故に備えたドローン用の保険や衝突防止機能もありますが、それは本当にもしもの時の話です。万が一も起こらないように、パイロットは最大限の安全対策を講じる義務があります」

──最後に、今後の展望などを教えていただけますか?

「自分の理念として『人をワクワクさせたい』と常に思っています。ドローンというツールを使って、『ここに行ってみたい!』『これを買ってみたい!』『この会社のことをもっと知りたい!』と、前向きな気持ちで思わず身を乗り出すような映像を作っていきたいですね」

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【プロフィール】
早川晋平
株式会社ドローンエンタープライズ 代表取締役。広告制作やPR支援など10年以上クリエイターとして従事、ドローンで新しいワクワク感を提供すべく2015年から活動。クリエイターならではの「気持ちいい映像」を大切にし、企業PV・映画・テレビ、MV、広告やイベントなどのPR分野専門に撮影。日本全国のドローン飛行許可承認を国土交通省から取得済み。

【撮影協力】
株式会社ドローンエンタープライズ
住所:東京都中央区日本橋兜町17-2 4F
電話番号:070-6462-1201

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