ホストの学校に潜入! 会話のプロに「禁断のスーパーコミュニケーション術」 を習ってみた。

公開: 更新: テレ東プラス

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東京の繁華街・歌舞伎町で「ホストの学校」という一般向けのイベントが開かれているのをご存知だろうか。これは元々、ホストの接客技術向上のために、コミュニケーションにおける心理学のセミナーとして展開。次第に経営者やマネージャーに向けての講習内容も追加されたことで規模が拡大し、現在では業種を問わず多くの方が受講しているという。

そこで今回は「ホストの学校」に潜入し、すぐにでも実践できそうなコミュニケーション術を学んできた。

飲み会に参加するときには必ず目的意識を

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「ホストの学校」を主催しているのは、約1,200名のホストを抱える業界最大手の「グループダンディ」。所属ホストの接客レベルを向上させるため2012年に開校し、心理学やNLP(人間心理とコミュニケーションに関する学問)を取り入れたセミナーを行ってきた。経営者やマネージャーに向けての講習のみならず、グループ内外を問わず、全国各地のホストクラブで講義を行うこともあるそうだ。

一般向けのセミナーは3ヶ月に1度開催され、各メディアから注目を集めている。

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今回、禁断のコミュニケーション術を学ぶために訪れたのは、"ホスト界の聖地"ともいえるホストクラブ「愛本店」。現存する日本のホストクラブで一番の老舗であり、昼間は社交ダンスのレッスンやイベントが行われるなど、昼夜を問わず数多くの人に愛されている。

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店内に一歩足を踏み入れると、豪華なシャンデリアと光り輝く金色の彫刻が。これから学校が開かれるとは到底思えない、非日常的な空間が広がっている。

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講師を務めるのは、現場のホスト、マネージャー、経営者として、3千名を超えるホスト達の育成に関わってきた巻田隆之さん。グループダンディのCOO(最高経営責任者)で、各店舗の運営に携わりながらNLPの資格を取得。その知識を活かしながら、数々の1億円プレイヤーやトップランクのカリスマホストを育ててきた。

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ホストの世界には"近寄りがたい"イメージがあったが、登壇した巻田さんはカジュアルな雰囲気。自己紹介の途中で参加者に話しかけ、会場を和ませていた。

早速語られたのは、コミュニケーションの重要性について。

「コミュニケーションの質が人生を左右する」
「ビジネスの成功は10%の専門知識と90%のコミュニケーション能力である」

などの名言を紹介したうえで、"目的意識"の大切さについて語られた。

「僕たちホストはお客様にコミュニケーションを売っています。その方法を今日のセミナーで皆さんにお伝えしたいのですが、はじめに重要なのは『コミュニケーションを学びたい』という意識です。例えば、『今日ここへ来るまでの間に何台赤い車はありましたか?』と質問をした時になかなかハッキリとは答えられないと思うんです。でも、『ここに来る前に赤い車が何台あるか数えながら来てください』とお願いしていたとしたら、赤い車が自然と見えてくるんです。人間はあらゆる情報を五感を使って脳に取り込んでいます。ただその情報をそのままインプットしてしまうと、脳にあるハードディスクはすぐにいっぱいになってしまいます。だから、入って来た情報をそのままに受け取らずに、削除したり歪曲したり一般化して頭に入れていているんですね。ですから意図を持たないと自分が必要とする情報を手に入れることが難しいんです」

とはいえ、「コミュニケーションの目的意識は持っている」という人もいるかと思うが、それでも上手くいかないことも多い。それについても巻田さんからのアドバイスがあった。

「そういう人は今までの失敗の経験から、潜在意識で『どうせ上手くいかない』と思っていたりします。重要なのは意図を持つことです。漠然と『仲良くなりたい』ではなく、どんな関係性になりたいのか。恋人同士、友だちの関係、知り合い程度の関係、愛されたい、愛したいなど、どんな関係になりたいのか目標を持つことが大切です。例えば、飲み会に行ったとしても、ただ飲んだり食べたりするのではなく、『可愛い女の子を見つける』『みんなで仲良く盛り上がる』などの目標がないと、ただ酔っ払って終わっちゃいます」

モテるためにまず必要なのは「観察力」

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今回のセミナーのテーマは「なんであんなにホストはモテるの?」。参加者同士で「なぜモテるのか」を話し合う時間が設けられ、色々な意見が交わされた。ちなみに、巻田さんの考える答えはこちら。

「モテる人というのは、『人に必要とされる人』のことだと思うんです。では、どんな人が必要とされるのか? それは『相手が欲しいものを提供してくれる人』、または『提供してくれるかもしれない人』です。人が求めているものは、お金、物、地位、名誉、ステータス、カッコ良さ、可愛さ、美しさ、優しさ、癒し、楽しさ、気持ちよさなど、色々とあります。そういうものを持っているから必要とされるのです。では、人が何を求めているのかはどうしたらわかるのか? それは相手をよーく観察することです。ホストである僕たちは、お客様が何を欲しがっているのかをしっかり観察しています」

巻田さんによると、相手を観察する上で分かりやすいポイントは、大きく分けて4つあるという。

【ポイント1】姿勢、動きの変化
身体の姿勢や手の動きなどに注目する。

【ポイント2】呼吸の変化
浅い呼吸か深い呼吸なのか。浅い呼吸がずっと続いている人がいたら、それは病気になる可能性があるかも?

【ポイント3】表情の変化
目の動き、瞬き、瞳孔の開きなど。

【ポイント4】声の変化
トーンが高いか低いかで緊張しているのかどうかが分かる。テンポの早さなどにも注目。

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「服装や身につけているものを観察するのも有効です。『どこのブランドなのか』、色や装飾、デザインや材質などよく見ると相手が何を大切にしているのかという価値観が分かります。他にも、会話の流れや言葉を観察して『相手が何に興味を持っているのか』、『どこに同意をしたり共感すれば嬉しいのか』などです。
相手をよく観察することは、自分に好意を持ってもらうことにも繋がります。人間は自分の好きなことを聞かれると、『私に興味があるんだな』と感じるものなんです」

「ペーシング」のテクニックで居心地の良さを感じさせる

host_20190828_08.jpg▲愛本店のスタッフ

次のステップは話しやすい雰囲気や空気を作り出すこと。その際に有効なのは、「ペーシング」と呼ばれるNLPのコミュニケーションテクニックで、これを上手く使えば相手と自分のペースを上手く合わせられるようになるらしい。

「落ち着いた雰囲気のお客様に、いきなりハイテンションで『どうも〜!こんにちは〜‼︎』と話しかけると、相手のリズムと合っていないので居心地の悪さを感じさせてしまいます。
そこで有効なのが、相手の話し方に合わせる『マッチング』と呼ばれるテクニック。声の調子や大小、リズム、スピードなどを合わせるのがポイントです。相手と同じくらいの動きの速度で合わせていきつつ、会話の流れで徐々にギアを上げて盛り上げていきます。そして『ミラーリング』という方法で相手と動きを同じにします。腕組みをしていたら腕を組む。足を組んでいたら足を組むなどですね」

ペーシングの手法は他にもあり、『バックトラッキング』は言われた言葉にオウム返しする方法。「悲しいことがあったんです」と言われたら、「悲しいことがあったんですね」とオウム返しに繰り返す。この時に相手の感情に寄り添って気持ちの部分にペーシングをすると効果的らしい。

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「相手の気持ちに寄り添いペーシングすることで、お互いが同調していることを感じたときに、はじめて相手は『合わせてもいい』と思うようになります。ペース・リード・ペースで、最初はまず相手のペースにのることが大切です。同調できたタイミングで自分のペースに持っていく。そしてまた相手に合わせる。その繰り返しで円滑なコミュニケーションが育まれます」

「空気が読めない」と言われる人は、相手のペースやその場面の環境が読めない、あるいは合わせられないことが多いそうだ。そんな人でも経験でコミュニケーション能力が上達するが、まずは「相槌」から始めるのがオススメとのこと。

「相槌はタイミングが重要です。その際に気をつけるのは、どこで相槌を打てば相手が気持ち良いのかを考えること。例えば、僕は娘が大好きなのですが、『この前、娘と一緒にディズニーランドに行ったんだよ』と部下に話をした時に、『千葉のですか?』と言われても、『そこに食いついてどうすんだよ』と思うじゃないですか(笑)。話を広げるためには、相手が何を話したいのかを考えることが大切です」

何よりも「自分の機嫌」を大切に

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ここまで実践的なコミュニケーション術を教えてもらったが、中盤を迎えてセミナーの内容が急展開していく。

「良好なコミュニケーションを成立させるために、今紹介したようなテクニカルなことをみんな実践するんですけど、実は今までお話ししたことよりも、もっともっと大切なことがあるんです。それは、機嫌をとること。『他人の機嫌をとることが大事なのかな?』と思うかもしれませんが、そうじゃなくて『自分の機嫌をとる』ということです。他人を喜ばせようとして、そればかりにとらわれてしまうと、『あの人は今大丈夫かな、怒ってないかな、嫌われてないかな』となっちゃうので。それよりは自分自身の機嫌をとることが重要なんです」

かつてはホストとしてかなりの売上をあげていた巻田さん。あらゆる本を読み尽くし、成功している同僚や先輩を毎日観察し、真似をして、どうやったら上手くいくのか、日々研究を重ねたという。

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「僕はご覧の通りこんな容姿なので、生まれながらカッコいい人に比べて、メチャクチャ努力しました。なので、"どうすればモテるのか"という方法論は、今まで散々実践してきました。でもそのなかで、大切なのは先ほどまでお話ししてきたような「テクニカルな部分じゃないな」って気づいたんです。うちにいる男の子なんかで、20歳そこそこなのに年収一億円ぐらいあげちゃうような、そんな子たちをたくさん見てきたんですけど、ペーシングをやってるかといったらまるでやってない。わがままで自分勝手で、こいつら何なんだと(笑)。ホストのローランド君なんかを見ていれば分かるかもしれませんが、相手に迎合して機嫌を取るようなことはしていません。テクニックも確かに重要なんですけど、本当に大切なのはそこじゃないなと」

巻田さんは、若くして1億円以上を売り上げるカリスマホストたちを分析して、ある共通点を導き出した。それは単純に「自分の機嫌を取るのが並外れて上手い」ということだ。
「人間は『自分の思う通りの感情』になりたいから生きているんです。例えば、一流ホテルに行って綺麗だなとか、優雅だなとか、リラックスできるなとか、そういった感情で自分を満足させたくて生きています。どんな行動でも、自らの感情を満足させたいからやっているんです。そういった感情をいつも満たしてくれる人がいたとしたら、その人はメチャクチャ重宝されますよね。でも、それを商売でずっとやっていくのは、しんどいわけですよ。だって、みんなが砂漠にいたとして、喉がカラカラで自分もカラカラなのに、みんなに水なんて配れないじゃないですか。どうしたら配れるかというと、たくさん自分が水を持っているときです。つまり、自分が機嫌よくなれば、相手の機嫌も取ることができるんです。だから、一番最初にやらなきゃいけないのは、『自分の機嫌を取ること』なんです」

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自分の機嫌をとるためのファーストステップは、好きなものを思い浮かべること。人はリアルに想像すると、現実と想像の区別を脳ができなくなり、本当に体験しているように感じるそうだ。実際に好きなことを思い浮かべるワークでは、微笑んだり、にやけていたりと、参加者たちは本当に幸せそうな表情を見せていた。

「好きなことを考えていると幸せな気持ちでいられるんです。そのためには、自分の好きなものを周りに置いておいたり、身につけたりするのが良いのではないでしょうか。例えば、大好きな人や尊敬している人の写真なんかをいつでも自分の目に入るところに置いておく。あるいは好きな音楽でも良いと思います。僕は仕事を始める前に決まった音楽をかけるんですけど、『この音楽がかかったらやる』という風に、好きな音楽をやる気のスイッチにしています。あと、大好きな娘の写真も欠かせません(笑)。僕は、雷が鳴ったから辛い、失恋したから悲しいという風に、外から受けるネガティブな出来事に心を右往左往するんじゃなくて、『自分の心は俺が作るんだ』と常に意識しています。たくさんの好きな人やものに囲まれていたら、嫌な人がいても心が穏やかでいられるじゃないですか。自分の機嫌をとるのが上手になると、人生を自分のものにできるし、意図を持ってコントロールできるようになります」

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こうして数時間にわたった「ホストの学校」は無事終了。参加者の反応は上々で、会場からはこんな声が聞こえてきた。

「思っていたよりもビジネス的な内容で勉強になった」

「どうしたらモテるのか、言語化されていてすごく分かりやすかったです」

「売り上げが落ちて伸び悩んでいたのですが、このセミナーで自分を改めてみて頑張ります」

中でも多かったのは、「自分の機嫌を取ることの重要性に気付かされた」というもの。「自分が笑顔なら人と仲良くできる」というメッセージを受け取って、前向きな気持ちになれた参加者が多かったようだ。

ホストの経験と心理学のテクニックを組み合わせた講義を聞けるのは、「ホストの学校」ならでは。他者との関係づくりに悩んでいる人や、コミュニケーションに自信が持てない人にオススメのセミナーだ。

【プロフィール】
巻田隆之
1972年生まれ。スタッフ1,200名、店舗数40を超える巨大ホストクラブグループ「groupdandy」の最高執行責任者として店舗開発や組織マネジメント、人材育成の為の研修など幅広く活動する傍らNLPを学び多数の資格を取得。2012年より「ホストの学校」を開校し、自ら校長として講義を行う。

【取材協力】
クラブ 愛本店
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-22-5叙々苑第2ビルB1F
電話番号:03-3208-6435
http://www.aidakanko.com/ai1.html

※この情報は、2019年8月時点のものです。最新情報をご確認の上、お出かけください。

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