デュエマが、ポケカが、リア充の趣味に? カードゲームYouTuber「しゃま」の語る”カードの未来”

公開: 更新: テレ東プラス

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『デュエル・マスターズ』、『遊戯王』、『マジック:ザ・ギャザリング』......。男の子なら一度はハマったカードゲームの業界が、冬の時代に突入しているという。スマホゲームを始めとした"娯楽の無料化"の煽りを受け、人気が低迷しているのだ。

このような状況の中で、カードゲームは大人の趣味として生まれ変わりつつある。今回は、人気カードゲームYouTuberのしゃまさんに、カードゲーム業界の現状とこれからの展望について語ってもらった。

スマホゲームという"黒船"の到来、カードゲーム業界を襲う冬の時代

──近年、カードゲームの人気が落ちていると聞きます。これは事実なのでしょうか。

事実です。市場規模そのものはあまり変わっていませんが、『ポケモンカードゲーム』以外のプレイヤー人口は、ここ2~3年で20~30%くらい減っていると思います。

──そんなに......! 原因はやはり『シャドウバース』など、スマホで遊べるカードゲームの台頭ですか?

そうですね、やはり"時間的コスト"が大違いなんですよ。リアルでカードゲームをするには、ショップに行ってカードをそろえて、一緒に遊ぶ仲間を作らないといけません。でも、スマホゲームならその場でダウンロードするだけで、すぐにプレイできますよね。

そもそもネットやスマホが全盛のこの時代では、「人と会ってなにかする」ということ自体が廃れつつあります。スマホゲームに限らず、時間コストの低い娯楽はいくらでも転がっていますからね。

──確かに、娯楽はどんどんインスタントになっています。

高校生の視聴者さんいわく、放課後にマクドナルドでお茶するなら、帰ってLINEのグループ通話を楽しむのだとか。僕らの世代からするとビビりますよね(笑)。

あとは、"資産的コスト"の問題もあります。オンラインゲームにしてもYouTubeにしても、無料が当たり前の時代じゃないですか。でも、リアルのカードゲームで強いデッキを組もうと思ったら、とりあえず2~3万円くらい吹っ飛びます。女の子と仲良くなりたい中高生からしたら、タピオカミルクティーを買ったほうがコスパがいいと思いませんか?

shama_20190825_01.jpg▲ぶっちゃけすぎでは?

──もしかしたら、カードゲームに対する偏見もあるのかもしれません。

バリバリありますね〜。"カード=オタクの趣味"という方程式って、まぁ根強いと思いますよ。女性からしたら、子どもの遊びってイメージもあるかもしれないです。「くるまのおもちゃ、ぶ〜んぶ〜ん」みたいな(笑)。

──(本当にこの人、カードゲーム好きなのかな?)

今の中高生って、SNSの普及で「見られ方」をかなり気にするようになっていると思うんです。企業やインフルエンサーと同じように、子どもたちも自らをブランディングしていますからね。そこでインスタグラムにカードの写真をアップしても、自分をカッコよく見せられないじゃないですか。ただ、実はカードゲームに対するネガティブな印象って、徐々に払拭されつつあるんですよ。

カードゲームのイメージを劇的に変えた大人気YouTuber

──そういえば、ちょっと心当たりはあるかもしれません。芸能人の松坂桃李さんや佐野ひなこさんが、『遊戯王』のプレイヤーであることを明かしていますよね。

そうなんです。それに加えて、大人気YouTuberのはじめしゃちょーさん、フィッシャーズさんもプレイヤーであることを公言して、遊んでいる動画も公開しています。これもすごく大きいことでした。女性ファンを多く抱えている方たちがプレイすることで、彼らと同世代や下の年代の価値観がガラッと変わったんですよ。「あ、カードゲームをやってもいいんだ」って。

──偏見がなくなったと。

その影響をもっとも色濃く受けたのが、『ポケモンカードゲーム』ですね。株式会社ポケモンさんの巧みなプロモーションもあり、去年だけでユーザー数は約4倍になりました。前月比の売上が1000%以上アップした月もあったんですよ。

──1000%!?

予想外の伸びをしたことで、カードのブースターパックも一時期は入手困難になりました。全国各地のポケモンセンターに大行列ができるほど、爆売れしたんです。発売中のパックのレアカードに、7万円くらいの値段がつくこともありましたね。

そうなるとルールを知らない人でも、YouTuberの開封動画をマネして、"宝くじ感覚"でパックを買うんですよ。それで友達と盛り上がったり、当たったカードをSNSに投稿したりするわけです。さらには「ポケカ女子」と呼ばれるユーザーも生まれ、大会で出会った男女がカップルになるケースも出てきました。

──すごい。従来のイメージよりもオープンな趣味になっています。

部活みたいなものですよね。チーム制の大会もあるので、そこに向けて仲間たちと練習しているユーザーもいます。大人にとっては「あの青春をもう一度!」という感覚かもしれません。オンラインサロンのように、会社や学校とは別のコミュニティに参加するという側面もあると思いますよ。こうした楽しみ方は『ポケモンカードゲーム』に限らず、カードゲーム界全体に広まりつつあります。

──明るい兆しですね。そういった風潮を後押しするために、業界としてはどんな手を打っているのでしょうか。

業界全体が、「カードゲームをもっと大衆化していこう」という方向に舵を切っています。最近ではパーティーゲームとしてボードゲームが人気ですが、そのポジションを目指していて。実は今って業界の過渡期なんですよ。昔と比べてカードショップも綺麗だし、「TCG Ber Oasis」のようにカードゲームをプレイできるバーなど、ショップ以外で遊べる場所もある。

さらに、"資産的コスト"の面も改善されています。例えば、近年の『コロコロコミック』では『デュエル・マスターズ』のデッキが丸ごと付録になっていることもあるんですよ。『マジック:ザ・ギャザリング』の初心者講習会では、無料で参加できるのにデッキを配布してもらえますし、遊ぶためのハードルはすごく下がっていると思います。

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"デュエマクラシック"の狙いは、ユーザーのカムバックだけではなかった

──しゃまさんはデュエマの初期カードだけを使って対戦する、「デュエル・マスターズ・クラシック」というルールを独自に開発され、プレイ動画を投稿しています。これも昔のユーザーのカムバックを狙った施策なのでしょうか。

それもありますが、最大の狙いは"見世物としてのデュエマ"をもっと面白くすることです。

──見世物としてのデュエマ?

例えば、タカラトミーさんの公式チャンネルでは、毎年デュエマの全国大会の生中継を配信していています。でも、その同時視聴者数は年々減っているんですよ。その理由を探ると、コメント欄で「最近のカードのデザインは見づらい」「効果も難しくてよくわからない」といった声が多く見られました。つまり、現代のデュエマって、初見さん向けの見世物としては複雑すぎるんです。

──プレイしたら面白くても、それが外部には伝わりにくいと。

メジャースポーツとマイナースポーツに例えると、サッカーってすごくシンプルじゃないですか。もちろん、戦術に目を向けたら奥深いのですが、"ネットにボールが入れば1点"というルールそのものは単純明快です。だからこそ、ボールがゴールに近づくだけでも観客は沸くわけですね。

一方で、アメフトって面白いけれど、ルールが少し難しいんですよ。それがネックになって、ポテンシャルはあってもメジャースポーツの座から外れている。今のデュエマに起きているのは、アメフトと同じ現象なんです。

──確かに、メジャーになるために"わかりやすさ"は重要ですね。

これって裏を返せば、昔のデュエマなら見たい人はたくさんいるということですよね。昔のデュエマはイラストも効果もシンプルで、メジャースポーツ寄りのゲームでした。つまりデュエマクラシックは、デュエマの面白さを新規ユーザーに伝えるための取り組みなんです。

デュエマクラシックでは独自のレギュレーションでゲームバランスを整えているので、試合展開も拮抗します。有志の方が開催しているデュエマクラシックの大会も好調で、それがきっかけで最近のカードを集め出す人も増えてきました。


カードゲームをあえてリアルでプレイする楽しさとは?

──今はスマホでお手軽にカードゲームを遊べる時代です。あえてリアルでプレイする魅力はどこにあるのでしょうか?

なによりアツいし、盛り上がりますよね。自分の手でカードを引いて場に出すことで、よりヒートアップする部分はあると思います。あと、基本的にマナーもいいですよ。ネットの世界って、匿名性を利用して暴れ出す人が多いじゃないですか。リアルでそんなことをしたら、"出禁"になるか捕まります(笑)。

あと、友達もできやすいですよ。対戦中は相手とコミュニケーションを取る機会も増えるので、試合後にも話しかけやすい。「昨日の敵は今日の友」じゃないけれど、試合で盛り上がって仲良くなる人も多いですし、スポーツマンシップのようなものを感じますね。

──なるほど。なんだか話を聞いていると、ゲームをやりたくなってきますね。

じゃあ、最後に一戦、やりますか?

──えっ。

百聞は一見にしかず。実際に"デュエル"をすれば、その楽しさはわかるはずです!

shama_20190825_03.jpg▲子どもの頃の切り札だった「機神装甲ヴァルボーグ」!!

大人になっても、やっぱりカードゲームは面白い

しゃまさんのお誘いで、不意に始まったデュエル。デュエマクラシック用のデッキを借りて、幼少期を思い出しながらカードをセットする。手札を見れば、懐かしいカードのオンパレードだ。ルールも不思議と忘れていない。

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ボコボコにされると思っていたが、試合は意外にも一進一退。二手三手先を読み合う攻防と、それを狂わせるひと匙の運。お互いに"ドロー"が強運すぎるシーンもあり、自然と笑いが巻き起こる。

最終的に切り札の"進化クリーチャー"を繰り出し、熱戦を制したのはしゃまさん。最後に「ありがとうございました」とがっちり握手を交わす。敗れはしたものの、大人になっても色褪せない楽しい時間だった。

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冬の時代に直面しつつも、実は前向きな変化を遂げようとしていたカードゲーム業界。そう遠くない未来、カードゲームは年齢も性別も問わない趣味として生まれ変わっているかもしれない。

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