遺言書が楽に!? 介護で遺産が!? 約40年ぶりの相続法改正、何がどう変わった?

公開: 更新: テレ東プラス

相続の基本的なルールが定められた「相続法」が、約40年ぶりに大きく改正となり、一部の規定を除き2019年7月1日から施行されました。社会の少子高齢化にともない、配偶者に先立たれた高齢者の生活の保障や、相続をめぐるトラブル防止のための新たなルールを設けた今回の改定。何がどう変わった?

毎回、専門家が役に立つ生活情報を提供する「なないろ日和!」(毎週月~木 午前9時26分~放送中)から、今回は相続実務士の曽根惠子さんが相続法改正のポイントを分かりやすく解説。以前とはどこが変わったのか、実際にどのように活用すればいいのか、また相続でもめないための方法も教えてもらいました。

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夫が亡くなっても妻が家に住み続けることができる

「配偶者の居住権を保護するための方策」として、「配偶者居住権」が新設されます。(2020年7月より)

「配偶者居住権とは、残された配偶者が自宅を相続しなくても使用できる権利。例えば、お父さんが亡くなった場合、お母さんはずっと家に住み続けることができます」(曽根さん、以下同)

【ここが変わった!】
「これまでは所有権しかなかったので、夫が亡くなると妻は子供との遺産の分配で家を売らなければならなかったり、または家を相続すると現金の取り分が少なくなるケースがありました。今は老後が長いので、家はあってもお金がないと不安になりますよね。配偶者居住権により、例えば、所有権を子供に渡して、妻は家に住み続けながら残りの相続分で現金を相続するという分け方もできるようになりました」

《改正前》
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《改正後》
nanairo_20190818_03.JPG※「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」(法務省)(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html)を加工して作成

「これは遺産の分け方のひとつ。どうするかは相続人同士で決めることができます。配偶者居住権、所有権が決まったら法務局に登記します」

パソコンやコピーも一部OK! 遺言書作りが少し楽に

nanairo_20190818_04.jpg画像素材:PIXTA

「遺言制度に関する見直し」において、自筆証書遺言の方式などが改正されました(2019年1月より)。

「これまで自筆証書遺言はすべて自筆で書かなければならなかったため、作成に手間や負担がかかり、遺言書を書かないまま亡くなる人も多く、相続でもめる原因になっていました。遺言書を残しやすいよう、改定により書き方が少し楽になりました」

【これまでとここが違う!】
「面倒な部分がパソコンでの作成、コピーなどの添付でよくなりました」

《改正後にOKになったこと》
1.財産の明細書はパソコンで作成
2.不動産の登記事項証明書のコピーを添付
3.預金の通帳口座のコピーを添付
※ただし、全てに署名と押印が必要。

また、2020年7月より「自筆証書遺言の保管制度」が創設され、遺言書を法務局に預けておくことが可能に。

「遺言書の偽造、見つからない、捨ててしまうなどのトラブルを避けるため、法務局に遺言書を預かってもらえるようになります。遺言書が法務局に預けてあることを相続人に伝えておけば、トラブルも少なくなり、偽造や改ざんの恐れがなくなります」

介護で貢献した人も、遺産の請求ができるように

「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」として、特別の寄与が創設されました。(2019年7月より)。

「これまでは相続人のうち、介護などで貢献した人が財産を多めにもらうということがなかなか認めてもらえず、そうした不満がトラブルの元になっていました。これからは、"特別寄与分"として、介護などでの貢献を現金でもらえるようになります」

【これまでとここが違う!】
「相続人ではない家族、例えば、夫の親を介護した妻から請求することもできます。特別寄与分は、遺言書になくても請求が可能です」

【ここに注意!
「特別寄与分の金額は相続人同士の話し合いで決めるので、そのための参考資料が必要になります。どれだけ介護に時間や労力を費やしたのか、介護中からノートに記入したり、介護記録ができるアプリを活用するなど、しっかり記録をつけて、事前に親族の間で共有しておくことが重要です」

遺産をめぐるトラブルで家族や親族が絶縁するケースは少なくありません。「相続問題によるもめ事の原因の多くは、親族同士のコミュニケーションが元々取れていないこと。介護の状況や財産の内容を親族間で共有するなど、事前にコミュニケーションを取っておくことが重要です」と曽根さん。面倒だから......、亡くなった後のことなんて縁起でもない!などと先送りにせず、相続法改定のこの機会に考えてみましょう。

※この記事は曽根惠子さんによる見解に基づいて作成したものです。

取材協力:相続実務士・曽根惠子さん。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。相続に関する専門家と提携して感情面、経済面に配慮した"オーダーメード相続"を提案、実務をサポートする。著書は『結果に差がつく相続力』(総合法令出版)、『図解90分でわかる! はじめての相続』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。
オフィシャルHP:https://www.yume-souzoku.co.jp/

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