海外も視野に入れた「飲めるごはん」開発秘話

公開: 更新: テレ東プラス

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「非常食として頼もしい」と話題になっている「農協の飲めるごはん」。なんと缶入りで、ジュースや缶コーヒーのような感覚で飲める上、長期保存も可能だといいます。

しかし、そもそも「農協の飲めるごはん」はなぜ生まれたのでしょうか? 今回は開発元のJA北大阪に、そのエピソードを伺ってみました。

「農協の飲めるごはん」で地元の農業を振興させたい

──なぜJAさんが「農協の飲めるごはん」を開発されようと思ったのでしょうか?

そもそもは、阪神淡路大震災の際、被災者の方が飲み水にも困るほど非常につらい経験をされたことから、ある会社の方が「農協の飲めるごはん」の前身となる商品を開発されたのがきっかけでした。ただ、その会社さんでは、備蓄食として普及させるのに、かなりご苦労されていたようです。その頃、JAでは農協法の改正もあり、農業振興や農業者の所得向上にもっと役立つよう改革を求められていたので、「農協の飲めるごはん」に興味を持ったわけです。

──各地にあるJAの中でも、JA 北大阪さんが手掛けられたのには、何か理由があるのでしょうか?

JA北大阪があるのは大阪中心部のベッドタウン(都市部)で、農業そのものでの活性化はなかなか難しい状況にありました。「農業振興につながる取り組みは何か?」を模索する中で、「主原料がお米なので、地域の米を活用できれば、災害備蓄品として地域貢献もできるのでは?」と思い至ったわけです。その後、特許技術を移転することができ、地元のお米を使った「農協の飲めるごはん」として、昨年8月に販売がスタートしました。

──やはり「飲めるごはん」は非常食という位置づけなのでしょうか?

大きな震災直後はライフラインがストップすることが想定されます。飲み水や生活水が大切な時に、喉が乾いてしまう食べ物、加熱や加水が必要な食べ物を口にするのは非常に困難です。水分と栄養分が同時に補給出来れば、救助や応援が来るまでの間をしのげるので、缶入り飲料に仕立てています。

──飲めるごはんの開発を思いついてから、実際に商品が完成するまではどれくらいの期間を要しましたか?

主原料のお米を地元産に、その他は国産品に切り替えたため、相溶性や親和性などのテストを行いました。さらに、ネーミング、パッケージデザインなどを含めると、発売までに半年以上かかりましたかね。

ココア=子供向け、シナモン=海外向けだった!?

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──「農協の飲めるごはん」はどれくらいの保存が可能ですか。

5年間の長期保存が可能です。

──温めても食べられますか?

缶入り飲料として可能な方法での加温はOKです。例えば、缶をそのまま直火で加熱するのは、絶対にやめてくださいね。

──梅・こんぶ風味、ココア風味、シナモン風味の3つのフレーバーがありますが、なぜこの3種類に決まったのでしょうか?

梅・こんぶ風味はやはり日本人の口に合う、落ち着いた風味かなと思い採用しました。ココア風味はお子さんにも抵抗なく口にしてもらえればという想いからですね。シナモン風味は、昨今では海外でも大きな災害が増えていることと、海外の方(特にアジア圏)にとってスパイスとして欠かせないフレーバーであることが大きな理由です。

──正直、シナモン風味が一番びっくりしました

シナモン風味を試飲された方の多くには、風味が一番しっかり感じることができると言っていただけています。

──他に候補に挙がっていた味があれば教えてください

カレーや焼き飯など、いろいろな風味のリクエストはいただくのですが、災害備蓄品として"水や火が使えない状況でも開けるだけで水分・栄養分を簡単に口にできる"をコンセプトにしていますので、刺激の強いスパイスなどは使えません。余計に水分が必要とならないように製造しています。

──3つの味のうち、一番よく売れているのはどれですか?

人気は「梅・こんぶ風味」ですね。個人の7割以上の方が購入されています。

JAの人に聞いた「農協の飲めるごはんは自作できる?」

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──原材料に「うるち米、もち米」とありますが、具体的な銘柄を教えてください

うるち米は『大阪産ひのひかり』です。

──アレルギーがあっても飲めますか?

アレルギーにも配慮しています。特定原材料27品目は含んでいません。

──家で再現するにあたり、注意するポイントはありますか?

「農協の飲めるごはん」では主原料であるお米、はとむぎ、小豆を焙煎し、砕いたものを他の原料と炊き上げています。さらに、炊き上げ後に穀物の欠片が沈殿しないようにする特許製法を用いていますので、ご家庭で再現頂くのは難しいと思います。

──やはり購入した方がよさそうですね。どこで買い求められるのでしょうか?

関西では一部スーパーやコンビニなどで、個別販売の取り扱いをいただいています。関西地区以外では、まだ直接取扱いいただいている小売店はありませんが、一部スーパーや防災グッズを取扱う雑貨店などから問い合わせを頂いております。近々取扱い開始いただけるのではと思っています。

また、全国からのご注文の場合は、兵庫県加古川にある『ミツレフーズ』という個別配送(宅配)業務に強い販売店にお願いをしています。直接お電話いただくか、当JAホームページからFAX申込用紙を取り出して頂きご注文頂いています。

【取材協力】
JA北大阪
https://ja-kitaosaka.or.jp/

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