脳ドックは何歳で受けるのがおすすめ? 健康診断と合わせて受ける人が増加中

公開: 更新: テレ東プラス

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主治医が見つかる診療所」(8月8日木曜夜7時58分)は、皆さんが知りたい医療の疑問に、第一線で活躍する医師たちが優しく答える知的エンターテイメントバラエティ。病院の選び方のコツや今すぐできる健康法など、最新情報を交えて発信しています!

今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、なかなか受ける機会が少ない「脳ドック」に関する疑問です。早速、同番組のレギュラー・上山博康医師に相談してみましょう!

平均すると一般的には40代くらいからが一つの目安

Q:60代男性です。脳ドッグを受けたいと考えていますが、一般的には何歳くらいから、何年おきに受けるとよいのでしょうか。 また、脳ドッグでどんなことがわかるのか教えてください。

──最近は、人間ドックのコースの一つとして受ける方が増えているようですが、そもそも脳ドックで何がわかるのでしょうか。

「脳ドックはMRIによる画像診断などを中心に脳の疾患や脳血管の状態を調べる検査で、病変がかなり小さくない限り、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血、血管が細くなっているところなど、ほとんどの状態がわかります。そのわかりやすさは、MRIやCTなどの画像診断装置がもともと脳のために開発されたといってもいいくらい。骨の中に収まった特殊な構造をしている脳は、触診をしたり直接見たりすることができないからです。

さらに、脳の血管にも他ではみられない特殊性があります。画像検査では造影剤という薬を血管に入れて、血管の閉塞や狭窄、形状などを撮影しますが、体の血管はまんべんなく造影されるのに対し、脳の血管は腫瘍など異常があるところにだけ造影剤が入っていきます。つまり正常な脳は造影されず、異常な脳だけが造影されるので、ものすごくわかりやすい状態になるのです。これは、ブラッドブレインバリア(血液脳関門)といって、脳の血管に備わっている分子量の大きい物質が脳に侵入するのを防ぐバリア機構が関係しています。

血管の状態を知る上で重要な動脈硬化の有無も、以前は眼底(脳の一部である網膜の血管)を見て判断していましたが、今はMRIでダイレクトに血管を見ることができます。脳ドックができるようになったことでさまざまな情報が得られるようになったわけです」

shujii_kobeya_20190807_02.jpg(画像:PIXTA)

──脳ドックを受けるタイミングは、何歳くらいと考えればよいでしょうか。

「その人の生活習慣によって異なります。糖尿病のコントロールが悪い、ヘビースモーカーでアルコールを大量に飲む人、夜更かしが好き、偏食など、いわゆる生活習慣が乱れている人は40代から危ないと思ったほうがいいですね。例えば、車の使い方に置き換えて考えてみると、暴走を繰り返すような運転をすれば新車のうちから整備しなければいけないのと同じ。20、30代でも検査が必要な人はいますが、平均すると一般的には40代くらいからが一つの目安になるでしょう。また、頭痛がするようになってきたなど自覚症状がある場合も、早めの検査をおすすめします。

何年おきに受けたほうがよいかについては、最初に受けたときの容体によります。全く問題がなかったなら5〜6年、ちょっとでも異常が見つかったならフォローアップのために毎年、もっと重症な場合には3ヵ月、6ヵ月後に検査が必要になることもあります。"少なくても○年おきに" という決まりは特にありません」

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──ということは、意識して脳ドックを受ける習慣を持たなくても大丈夫なのでしょうか。

「大丈夫ですが条件があります。例えば食生活の遺伝子(=おふくろの味遺伝子)について、塩辛いものが好きな人はどうしても塩辛いものを食べがちです。そういう人はやはり注意したほうがいいですね。特に自分の親や祖父母が脳卒中になっていたら、なりやすい遺伝子の下にいると思ったほうがいいでしょう。

一方で、人間は体によくないものに魅力を感じやすくもあります。湯冷ましよりキンキンに冷えた水を美味しいと感じたり、夏の暑い日には腸内細菌によくないとわかっていながらかき氷を食べたくなったります。背脂たっぷりのラーメンも最高ですよね。これらをすべて避けることは難しいかもしれませんが、バランスを考え、摂りすぎに注意することは大切です。個人的には、3日のうち1回は食べてもよしとしています(笑)」

──脳卒中で気をつけておいたほうがいいのは、やはり頭痛などの自覚症状ですか?

「一番怖いのは頭痛よりも高血圧ですね。よく悪玉3兄弟として、高血圧、脂質異常症、糖尿病が挙げられますが、その中でダイレクトに脳卒中に結びつくのは高血圧です。しかし、低血圧になれば脳卒中を抑止できるかというと、そうではありません。動脈硬化で血管が狭くなっているのが原因で高血圧になる必要があったのであれば、それを下げてしまうと血液が流れなくなり脳梗塞を起こします。

実は、それを知らない医師がつくってしまう脳梗塞というのも結構あって、一律に基準値まで血圧を下げることだけを考え、下げてはいけない人まで下げてしまい、その結果、脳梗塞が引き起こされることがあります。なぜ高血圧になっているのか...その原因を調べるためには、やはり脳ドックが必要。

ドックというのは国民の健康を守る防衛手段です。予防医学の段階で病気を見つけることができれば、医療費も発症した後にかかる費用の3分の1以下になるといわれています。今は健康保険が利かないため、脳ドックの金額や所要時間は医療機関によってまちまちですが、いずれ健康保険で皆が受けられる検査になることを期待しています」

──上山先生、ありがとうございました!

今回お話を伺った上山先生も出演する「主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、今後も皆さんが知りたかった健康情報をお届けしていきます。

※この記事は上山博康医師の見解に基づいて作成したものです。

そして、明日夜7時58分放送! 「主治医が見つかる診療所SP【認知症&脳梗塞に絶対ならないぞ!噂の新習慣を学ぶ】」では...。

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出演者
【司会】草野仁、東野幸治
【アシスタント】森本智子(テレビ東京アナウンサー)
【ゲスト】飯尾和樹、さとう珠緒、武田修宏、堀田茜、松原智恵子※五十音順
【番組主治医】秋津壽男(循環器内科)、上山博康(脳神経外科)、中山久(内科・リウマチ科)、南雲吉則(乳腺外科・形成外科)、姫野友美(心療内科)※五十音順

【ゲスト医師】石原新菜(漢方内科)、兵頭明夫(脳神経外科)※五十音順

テレ東プラスでは、今後も健康にまつわるさまざまなお役立ち情報をお届けします!

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