最大13度下がる?熱中症から命守るキャップ:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。8月6日(火)の放送では、日本の酷暑に立ち向かう中小企業をクローズアップ。大企業に負けない技術やアイデアを駆使し、親子2代で新境地に挑む姿を追う。

一般的な帽子と最大13度の差が出る「エアピーク」

連日35度を超える猛暑が続く中、熱中症対策が必須だが、意外な落とし穴が「帽子」だ。帽子は直射日光から頭を守るのに有効だが、通気性が悪いものを炎天下で長時間かぶっていると内部に熱がこもり、熱中症になる危険性があるという。

群馬県太田市の公園「ぐんまこどもの国」は、夏休み中、多くの家族客が訪れる。公園の中では、60人のスタッフが炎天下での接客や清掃などに追われている。スタッフの頭には、変わった形状の帽子が──。商品名は「エアピーク」。二重になったつばの間から空気を取り込み、帽子内部の温度と湿度を大幅に下げる効果があるという。

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京都女子大学の研究室が実施した実験では、エアピークと一般的な帽子では最大13度の差が出た。

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開発したのは東京・中央区にある中小企業「ビルマテル」。主に屋上緑化事業を展開し、虎ノ門ヒルズや銀座三越など大型の物件も手掛けてきた。エアピークを開発するきっかけは、厳しい炎天下で屋上作業をする従業員のために、ヘルメットの前後に穴を開けて空気の通り道を作ったことだった、と同社の白井庄史会長(63)はいう。

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特許を取ったこのヘルメットは、建設現場を中心に累計250万個を売り上げた。「熱中症対策は大きなビジネスになる」。帽子への応用を考えついた白井会長は新たな事業の柱にしようと、その夢を息子の白井龍史郎さん(31)に託した。

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龍史郎さんは4年前に大手企業を辞め、同社に入社。エアピークの開発から携わり、2年前に販売までこぎつけた。しかし販売実績は年に1万個で、採算ベースである「年5万個」にはほど遠い。ランニング用だけでなくゴルフキャップなども作り、市場開拓のため農機具メーカーの販売会に出展するも、定価5,500円という高価格のためかお客の反応は芳しくない。

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状況を打破するため、龍史郎さんはある人物を訪ねた。それは、世界陸上のメダリスト・為末大さん。エアピークの良さを世の中に認知してもらうためには、一流アスリートたちの評価が大事だと考えた。エアピークを手に取った為末さんは、「帽子の領域で、形状で攻めているものはない。世界中の選手がエアピークを求めてくる可能性がある...」と高評価。為末さんの助言をもとに、来年の東京オリンピックでトップアスリートにも使ってもらえるような大幅な改良に乗り出すことに。父から夢を託された息子のさらなる挑戦が始まった。

約90%も水の使用量が下がり、洗浄力を上げる「魔法のノズル」

酷暑の夏にもう一つ懸念されるのが、深刻な水不足の問題だ。解決の鍵の一つは節水。なんと、取り付けるだけで約90%も水の使用量が下がり、洗浄力を上げる「魔法のノズル」が存在するという。

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番組案内人の江口洋介が訪れたのは、東京・目黒区にある「東急ストア中目黒本店」。同社の國井裕史さんが案内してくれた寿司の加工室にそのノズルはあった。

一般の蛇口と比べてみると、節水量の違いは一目瞭然だ。洗浄力はどうか?チョコを塗りつけた皿で洗浄力の違いを確かめると、節水器具付きの皿はみるみる汚れが落ちた。節水量、洗浄力ともに、通常の蛇口と比べ軍配が上がった。

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この節水ノズル「バブル90」は、中央の穴から空気を取り込み、水と空気を交互に噴出させる仕組み。水の勢いはそのままに、使う水の量を最大90%減らすことができる。また、水が玉状になって押し出されるため、少ない水量でも洗浄力が高い。東急ストアでは去年、約80店舗、約1000ヵ所の蛇口にこのノズルを導入し、1年間で約1億円のコスト削減につながったという。

バブル90の価格は約3万円。飲食店を中心にこれまで約20万個を販売してきた。開発者で「DG TAKANO」の社長・高野雅彰さん(41)は、「蛇口はレストランだけでなくいろいろなところで使われているので、どんどん普及させたい」と意気込む。

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DG TAKANOは、"ものづくりの町"大阪・東大阪市にあり、小さな工場を24時間フル稼働させ、毎月約5000個のバブル90を作る。高野さん曰く、「加工の精度が1000分の5ミリ。髪の毛よりも細いレベル」という高い技術力が必要で、7つの特許を取得している。大企業に引けを取らない町工場の技術が光る。

高野さんにはものづくりの師匠がいる。職人歴40年の父・善行さんだ。約10年前、ものづくりを志した高野さんを一から手ほどきし、父と子で開発に試行錯誤を重ねてバブル90を完成させた。「どっちかというと(ものづくりを息子に)やってほしくはなかった」と善行さんは笑う。理由は「自分がしんどい目にあってきたから」。しかし今では「良かったんじゃないか」と目を細める。

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DG TAKANOの社員のほとんどは外国人。海外から優秀な技術者が集まる理由は、高野さんが経済誌「日経ビジネス」の"世界を動かす日本人50人"に選ばれるなど、高野さんとバブル90は世界的に注目を集めているためだ。

次の一手は、価格を抑えた一般家庭向けの節水ノズルを開発すること。目標価格は数千円。大量生産を可能にするため11個だった構成部品を3つまで減らしたが、期待する成果が得られない。壁にぶち当たった高野さんを救ったのは、父親の熟練技術だった...親子「二人三脚」による町工場の新たな挑戦を追跡する。

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年々進む地球温暖化。厳しくなる一方の酷暑に新たな発想で立ち向かう"父と子"の姿を今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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