再建弁護士・村松謙一「”話を聞く”“決して裏切らない” 頼ってきた人を何としてでも護り抜く...その強い使命感が私を突き動かしている」

公開: 更新: テレ東プラス

倒産とは"人の命"が関わる問題である。だからこそ、彼は全身全霊で闘い続ける! 例え0・01%でも希望の光が見える限り...。そんな力強いメッセージと共におくるドラマBiz第6弾「リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~」(毎週月曜夜10時 BSテレ東は毎週金曜夜9時)。

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主演を務める反町隆史が演じるのは、途切れた糸を結び直し、あきらめずに全力で倒産から人々を救う熱血弁護士・村越誠一。実話からインスパイアされた熱く骨太なドラマの主人公・村越のモデルとなったのは、『いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる」(角川文庫/KADOKAWA)の著者であり、今もなお現役で闘い続けている弁護士・村松謙一氏だ。

一部上場企業から地域に根ざす個人商店まで、倒産の危機から蘇らせた会社はこれまで200社以上。その大半は、「もう助かる見込みがない...」と誰からも見放されたケースだった。「会社の生死は経営者や従業員の命に繋がっている。だから、100%再生させなければならない」──会社再建とは人間の救済。そう考える村松氏は決してあきらめることなく、己の心身をも削りながら、40年近くの長きに渡って全国の企業を再建の道へと導いてきた。

では、日本の企業の99.7%を占めるという中小企業を、年間8000件以上にも及ぶ倒産から救うことに心血を注ぐ村松氏は、一体なぜ、再建弁護士を志したのか? その原動力とは何か? 村松謙一の仕事論、人生論を聞く。

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同じ限りある人生の中であれば、できるだけ多くの人を助けたい

──まずは、村松先生が人生を捧げておられる「再建弁護士」というお仕事を目指した理由からお聞かせください。

「最初に弁護士という仕事に興味を持ったのは小学生の頃でした。"裁判とかやってカッコいいなぁ。お金もたくさん貰えるのかなぁ(笑)"とか、子どもが思い描く、ごく普通の憧れが先にありました。シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンなどの探偵ものが好きでしたから、人と関わって真相を明かし、事件を解決する...そんな存在がカッコよく見えたんでしょう。司法試験の勉強中も、例えば<隣家の柿が自分の家の庭に落ちたら、その柿は誰のものか>。そういった権利の法的解明は、クイズを解くような感覚で面白かったです。

あとは、目の前で困っている人を救いたい...というシンプルな動機もありました。私が生まれた静岡県清水市は、かの有名な清水次郎長の出身地。東海一と言われた侠客でありながら、困って頼って来る人がいれば、ひと肌もふた肌も脱いで助ける。強きをくじき弱きを助ける、義理と人情の生き様を幼い頃から聞かされるにつけ、どこかカッコよく思えた。幼心に"将来は人のためになる仕事がしたい"と思っていて、弁護士という仕事に魅力を感じていたんだと思います。とはいえ、根っからの野球小僧で、大学受験は野球部に入るのが目的でしたから、当初弁護士になるとはまったく考えていませんでした。漠然と"法律は面白い""弁護士(探偵?)になりたい"とは思っていたものの、本当のところは野球の実業団の選手になりたかったんです」

──ドラマ「リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~」の原作となっている、ご著書『いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる」によれば、幼い頃から野球を始め、高校時代は甲子園を目指し、大学でもプレーされていたとか。

「清水といえばサッカーの街ですけど、私が最も熱中したのは野球でした。足が速かったし、肩も強かったから小学生の頃からずっとレギュラー選手で、夢はもちろん甲子園。進学した清水東高校は、山下大輔さんや松下勝美さんらを輩出した野球の名門校でしたが、3年最後の県予選は、ベスト4をかけた試合で1点差の逆転負け...。悔しかったですねぇ。でも、"次は神宮球場だ!"と切り替え、大学進学を目指しました。当時、六大学野球で圧倒的な強さを誇っていたのは慶應義塾大学で、あのグレーのユニフォームに憧れたんです。ただ、進路相談の際『慶應に行きたい』と言ったら、先生は『お前の学力では無理だ! おこがましい』と。それはそうです(笑)。進学校なのに勉強は二の次、朝から晩まで野球ばかりしていたんだから」

──そこから発奮されて...。

「そうですね。受験勉強に取り組んだのは夏の県予選が終わった高校3年の秋からでしたが、現役で慶應の門をくぐることができました。『無理だ』『ダメだ』と否定されると、俄然燃える。これは昔から変わらない私の性分(笑)。残念ながら、入部して1年も経たないうちに右肘を複雑骨折したため、神宮球場のバッターボックスに立つという夢は早々に潰えることになるんですけど、司法試験に挑戦すると決めた後も頑張り通せたのは野球のおかげ。

司法試験の合格率2%前後の時代に、"なぜこんな無謀なことにチャレンジしてるのだろう?"と思うこともありました。"短期間の集中勉強で慶應に合格できたのだから、司法試験もいけるだろう"という甘えもありましたね。でも、ここで跳ね返されたら一生後悔する気がしたんです。3回目の挑戦で合格した時は、本当に嬉しかった。そして司法試験に合格した後、企業再建の第一人者・清水直先生の著書『臨終倒産法 企業再建・整理の現場から』(金融財政事情研究会刊)を読み、感銘を受けたことで、再建弁護士を目指そうと決意しました」

──その本にはどんなことが書かれていたのでしょう。

「『企業再建は"マス"で救う仕事だ』が清水先生の信条。つまり、同じ限りある人生の中で1人救えるのか、100人救えるのか? 弁護士の仕事は、通常1人の問題を請け負います。これに対して『企業再建』は、従業員はもとより、取引先、その家族など100人以上を救うことができる。私たちの命=弁護士人生には限りがありますから、"同じ24時間であれば、できるだけ多くの人を助けたい!"、そう強く思ったんです」

破産寸前の会社の社長が自殺するというケースも少なくない

──「リーガル・ハート」で橋爪功さんが演じる米倉は清水先生がモデル。村松先生をモデルとした主人公・村越の師匠にあたります。村越を演じるのは、反町隆史さん。ドラマをご覧になった感想はいかがでしたか?

「感動しました。当事者がこう言うのも何ですが、思わず泣いてしまいましたね(笑)。色んなドラマがありますが、出演者、脚本家、監督、スタッフの皆さんが真摯に作られている。弁護士...とりわけ若い弁護士には、教材として見てもらいたいと思えるドラマでした。美化されていない、決してスーパーマンではない弁護士の姿が描かれている点が非常に良かった。いわゆる"原作者も太鼓判"というやつです。私の役が反町さんというのも嬉しかったですね(笑)」

──ドラマでは、村越がジオラマを作りながら考えを巡らせる場面も登場しますね。

「体力的にも精神的にもキツい仕事なので、私も趣味のプラモデル作りで気分転換しています。何かある度に村越のように没頭しています」

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──反町さんは「村松先生のご著書に、大学まで野球をやっていたと書かれていたんですね(中略)。部活で学んだ、"できないと言わない""物事を途中で投げ出さない""決してあきらめない"という信念がある方なんじゃないかな、と勝手ながら共感しています」とおっしゃっていました※反町さんのインタビューはコチラ!

「そうですね。弁護士という仕事は(相談)相手と向き合うことが大事ですから、最後の最後まで寄り添わなければいけないし、途中であきらめてはいけない。『難しいから止めました』『できません』では許されないのです。そのためには気力と体力が必要。反町さんがおっしゃるように、野球で培ったものが大きいと思います。

最初のうちはまさに"言うが易し、行うは難し"でしたが、何とか乗り越えられたのは、そういう信念があったからこそ。悔しいことやツラいこと、若くして亡くなった娘のこと...(※著書に詳しく)。その後も色々ありましたが、"まだツーアウト。9回裏まで何が起きるかわからない"。常々そう思ってやってきました。反町さんも今回、膨大なセリフ量である上に、難しい専門用語だらけの中、心が折れそうになったと思いますが、『できません』とは言わずにやっておられるのは、彼の役者魂なんだろうなと想像します」

──先生とお話をしていると何か大きなパワーを感じます。村松先生の原動力とは何でしょう?

「40年間、持ち続けているモットーは、"困っている人がいればまず駆け付けて、寄り添う"ということ。そうじゃないと、依頼者が死んでしまう場合もあります。破産寸前の会社の社長は、自分を追い込み、自殺するというケースが少なくありません。現にオフィスに「遺書」が届いたこともあります。

そしてとにかく"話を聞く""決して裏切らない"。困りに困った末に頼ってきた人を何としてでも護り抜くという、その強い使命感が私を突き動かしているのだと思います。"For Others(すべては他者のために)"。それが弁護士の役目だと思っています」

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【村松謙一プロフィール】

弁護士。1954年静岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。81年司法研修所入所(35期)、83年東京弁護士会登録、清水直法律事務所入所。90年に村松謙一法律事務所開設。2000年「光麗法律事務所」に改名。これまでに関わった主な「再建型」の法的事件に、鈴屋、カネテツデリカフーズ、長崎屋、マイカル、佐藤工業、多田建設、月光荘、石岡カントリー倶楽部、落合楼などがある。その他、東京佐川急便、病院等「私的再建型」案件を多数手がける。07年と09年のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」出演が大きな反響を呼んだ。著書多数。

そして気になる、今晩10時放送!(BSテレ東は8月9日金曜夜9時) ドラマBiz「リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~」第3話の内容は...。

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今回の依頼者は老舗呉服店『なみの』の社長・波野公介(須田邦裕)。急死した兄に代わり社長に就任したが、資金繰りが崖っぷち状態に。しかも救いの神と思っていた宅磨譲司(徳重聡)に"乗っ取り屋"疑惑が浮上。状況的に簡単には辞めさせられず、困り果てた公介は、村越誠一(反町隆史)のもとに駆け込んできたのだ。だが宅磨は、公介の姉・愛子(堀内敬子)と結婚の約束をした上、兄が残した保険金3億円を奪うべく動き出していて...。

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