抜け出せないままひたすらなんとなくで...劇作家・ブルー&スカイが赤裸々に語る”甘くない演劇人生”

公開: 更新: テレ東プラス

bishonure_20190730_01.jpg
もしも生まれ変わったら、演劇はやっていなかったかも──。役者で劇作家のブルー&スカイはそうつぶやく。現在好評放送中の大原櫻子主演、ドラマパラビ「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」(毎週水曜深夜1時35分)は、ヒロイン・水野羽衣(大原)がびしょ濡れになるとタイムスリップ! 羽衣が探偵張りに難事件を解決する姿を描いていく。

bishonure_20190730_02.jpg
矢継ぎ早に会話が展開し、ゆるさ満点で描かれる本作は、まさにブルー&スカイの真骨頂。冗談のような物語は、いったいどのようなパーソナリティーによって生まれるのか――。「テレ東プラス」はそのルーツを探るべく、本人を直撃。「いまだに演劇だけでは食べていけない」という生々しいエピソードも飛び出したインタビューの模様を、あますことなく届ける。

bishonure_20190730_03.jpg

企画を聞いた時は、これはどういうことなんだろう...と(笑)

――"水に濡れるとタイムリープする"という発想は、大変ユニークですね。

「"水に濡れると過去に戻って事件を解決する探偵"という企画は、もともとプロデューサーの加藤伸崇さんが思いついたものです。そこから2人でアイデアを出しあって、細かく打ち合わせを重ねていきました」(ブルー&スカイ 以下同)

――企画内容を聞いたときの第一印象は?

「これはどういうことなんだろう...と(笑)。一瞬理解が追いつかず、なんとか追いつくまでに数ヵ月かかりました。コメディですが一応探偵ものです。正直、僕はこれまで、デタラメでバカバカしいものばかり書いていたので、ロジックを求められる内容を作れるのか、という怖さはありました。

自分のメモ帳を読み返したら、『俺に書けるか??』と書いてあって不安な気持ちが表れていたんです(笑)。トリックなんて思いつかないだろうし、ふざけただけの内容を膨らませるならできますけど、放送時間は限られています。際限なければ1回あたり2時間くらいのおバカな話が出来上がってしまうので...(笑)」

――でもその「おバカさ」が、ドラマ抜群な持ち味になっていますよね。

「台本段階ではそこくらいしか考えてなかったんですが、でも実際に出来上がった1〜2話を見てみたら"ああ~これは、大原櫻子さんならではの物語だな"と見方が変わりました。大原さんがとても素敵で、彼女の何気ない表情って、ずーっと見ていられるんですよね。自分が想像で作ったヒロイン像を遥かに超えていく大原さんの素敵さ......あっ、僕、気持ち悪いですかね?」

――...大丈夫です(笑)。映像を見て、特に印象に残ったシーンはありますか?

「冗談みたいな会話の中の、ちょっとしたシリアスなシーンがいいですね。2話で羽衣が女性を平手打ちする場面があったんですけど、"これはいいな"と思いました。僕、作る話はふざけたものが好きなのですが、見る分には岩井俊二さんの作品が大好きなんです。岩井さんっぽい...ってわけじゃないですが、どこか印象に残るシーンでした」

bishonure_20190730_04.jpg▲明日放送の第5話では、ブルー&スカイさんも出演!

最近まで、ラブホで清掃のアルバイトをしていました

――自ら舞台にも立ち、様々な物語を生み出すブルー&スカイさん。そもそも演劇の世界に入ったきっかけは?

「大学で演劇サークルに入っていましたが、その頃"演劇は真面目で重いテーマがあるもの"と捉えていて、それほど思い入れもなかったんです。でも20歳の頃、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが主催する劇団『ナイロン100℃』の舞台を初めて見て驚いた。とにかくデタラメで、すごくカッコよかったんです。"自分もこんな舞台を手がけてみたい"という思いで、そこからは本気で演劇に取り組むようになりました」

――生活が不安定なイメージの強い演劇の世界ですが、親御さんの反対はなかったのでしょうか?

「在学中に劇団を立ち上げて中退してしまったので、ちょっと反対されましたね。でも末っ子だったので、兄と姉がちゃんとした仕事に就いているから...と甘えさせてもらいました(笑)」

――演劇で食べていけるようになったのはいつ頃ですか?

「うーん...まあ、いまだにそれだけでは食べてはいけてないですよね~」

――少し前に話になりますが、ラブホテルの清掃のアルバイトをされていましたよね?

「10年以上、ある番組の構成に関わっていましたが、"劇作家として、同じ仕事をこれだけ長く続けていていいのかな?"という疑問が湧いてきまして...。その仕事を1度辞めて1年間アルバイトを始めました。ただバイトだけだと、やっぱり生活が苦しくて...。半年ぐらい続けましたが、ラブホのバイトはつい1ヵ月前に辞めて、今はまた脚本を書く仕事に戻りました。実は『びしょ濡れ~』は、ラブホのアルバイトを週4回こなしながらの執筆でした。でもこの経験は今作の"探偵事務所がラブホ内にある"という舞台設定に一役買いました(笑)」

――ラブホなど、ある種特別な空間で働いていて、何か感じることはありましたか?

「正直、最初はラブホで働く人ってアレなのかな? と偏見もあったのですが普通の大学生も多いんですよ。女の子も働いていましたね。健全な職場で意外でした。それ以外にも、過去には飲食関係のアルバイトをしていました。台本を書きながら稽古をし、公演の度に休んで...。劇団活動だと収入はゼロなので、大変な時期もありました」

――実は、僕の隣にいる編集アシスタントも脚本家志望で、今学校に通っています。演劇を志す若い人たちにメッセージなどがあれば...。

「(熟考)............特に......ないです」

――ない?(笑)

「まず、言える立場ではないですよね。なんというか、僕も人から何かを教えてもらったことがないし..."よし! 演劇一筋でいくぞ"と志を持ってここまで歩いてきたわけではありません。なんとなく始めてなんとなく続けてきちゃったんです。途中で"これじゃいけないな"と反省するんですけど、抜け出せないままひたすらなんとなくで...。もしまた人生をやり直せるとしたら...ひょっとして、演劇は始めていなかったかも、と思うこともあります。

そんな僕のモチベーションの源は、本番でお客さんの笑い声が聞こえたりしたとき。続けてきてよかったな~と気持ちも上がりますね。自分が書いた台本って、まず稽古場で役者さんたちが読むことになる。そのときに"これ笑えないな"と思われないようなものを書きたいとは心がけています。いつも不安におびえながら(笑)。まずは最初に読む人を笑わせたいな、と」

――素晴らしいメッセージじゃないですか!(笑) ありがとうございます。最後に、ドラマの視聴者に向けてひとこといただけますか?

「デタラメでバカバカしいドラマを目指して書きましたが、キャストの皆さんや監督はじめスタッフの皆さんが作り上げたものを観たら、家族の絆を感じさせる雰囲気があって。特別に"家族モノ"として作っていない分、冗談みたいな物語の中で印象に残るんですよね。主人公の母親は失踪していますが、その理由も最終回で納得いく説明があります。いなくなったお母さんと残された家族をつなぐ、デカめの"オチ"が待っていますので、最後まで見てもらえたら嬉しいですね」

bishonure_20190730_05.jpg
【ブルー&スカイ プロフィール】
1973年、東京都生まれ。O型。「劇団猫ニャー」(後「演劇弁当猫ニャー」)2004年解散まで主宰。現在は劇作家、演出家、放送作家、俳優として活動。

ミュージカル「プレイハウス」(作・演出:根本宗子、出演:GANG PARADE、磯村勇斗、他。 2019年8月25日 (日) 〜2019年9月1日 (日)「東京芸術劇場 プレイハウス」、9月28日(土)「森ノ宮ピロティホール」)に出演。
チケットはコチラから!
http://www.parco-play.com/web/play/playhouse/

そして、7月31日(水)深夜1時35分放送! ドラマパラビ「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」第5話の気になる内容は...。

bishonure_20190730_06.jpg
羽衣がタイムリープの力を覚醒させたきっかけが明らかに!

今から5年前...。羽衣(大原櫻子)が高校2年生の時、銭湯に大量のニラがばらまかれる事件が続いていた。ひょんなことから淳之介(矢本悠馬)が犯人の田所(前原滉)を探し出す。しかしこの男、宝石店で強盗、しかも指名手配の殺人犯だったのだ。田所は、駆けつけた警官をあっさり射殺。淳之介に突き飛ばされ浴槽の中に落ちた羽衣は、タイムリープのチカラが覚醒。過去に戻るが...。
そして今回は、羽衣の父・進吾(大堀こういち)が、依頼解決で大活躍する!?

PICK UP