夏の定番となっている幽霊やお化け屋敷だが、吉祥寺には霊界をコンセプトにした"ゆうれい居酒屋"があるという。おばけ屋敷のような店内では、幽霊に扮したウエイトレスたちが働いており、オリジナリティあふれる"霊界料理"が楽しめるようだ。
今回は、「あの世に一番近い」と評判の「幽霊居酒屋 吉祥寺 遊麗」を訪れて、その魅力を探ってみた。
霊界へようこそ! 意外と子どもに優しい幽霊たち
吉祥寺駅を出てすぐの裏通りに、お店の看板を発見。ホラー感満載の怖い店を予想していたが、「気軽なゆうれい居酒屋」という文字に胸をなで下ろす。
店の外に設置してある看板にも「気楽にご臨終で〜す!」と書いてあり、ポップな雰囲気だ。その一方で、「ヒュ〜ドロドロドロ♪」という不気味なBGMも流れ、お化け屋敷のような怖さを漂わせている。店の前を通る人たちも気になっているようで、「ちょっと入ってみようよ」「え〜、怖そうじゃん」と言い合うカップルの姿もあった。
外観で気になるのは「本日のお通夜」という文字。これは、もしかして予約客のことだろうか? 疑問を解決するためにも、勇気を振り絞って奥へと進んでみる。
店内へと続く階段は薄暗く、幽霊が出そうなムードが満点。ゆっくり降りて行くと、途中で驚きの演出が!......ネタバレになってしまうので詳細は伏せるが、想定外のことに思わず悲鳴を上げてしまった。
ようやくお店に辿り着いて扉を開けると、「うらめしや〜」と幽霊姿の女性店員・鈴音さんがお出迎え。「チリンチリ〜ン」と明るくお鈴を鳴らしながら、「仏さま、霊界入りで〜す!」と明るく案内してくれる。謎の幽霊言葉(?)に面を食らってしまったが、元気の良い接客に心が和んだ。「幽霊の霊気で冷やしました〜」と渡されたおしぼりを受け取りつつ、店内を見渡してみる。
お経の流れる店内には、ホラー系の雑貨やオブジェが満載。
店内の奥にはリアルな幽霊の人形も。血の飛び散り方が恐ろしい......。
さらに、謎の冷蔵庫も置いてあったが、飲食物は全く入っていなかった。オブジェにしては、不気味すぎる......。
店の雰囲気にも慣れてきて、ようやく一息ついていると、突然上からガイコツが!! 心臓をバクバクさせていると、「ジョージ君です! 仲良くしてくださいね」と鈴音さん。......おひとり様で来ても、まったく退屈させない。いや、させてくれない演出、さすがである。
なお、今回はカウンター席に案内されたが、ほかにもテーブル席やソファ席、さらにはカップル専用の席も用意されているらしい。どんなお客さんが多いのかを聞いてみると、カップルはもちろん、外国人の団体や家族連れも来店するとのことだ。
「皆さん、成仏して霊界にあるこのお店を訪れます。小さなお子さんに『成仏って何?』と聞かれて、親が『死ぬことだよ』と説明すると、『ボク、死んでないもん!』と可愛らしく答えたりしますね。なかには泣いてしまうお子さんもいますが、甦るとき(退店時)にプレゼントをお渡しするので、それでちょっと笑顔になります」
なるほど、どうやら吉祥寺の幽霊たちは、意外と子どもに優しいらしい。
「幽霊の目玉」や「昆虫食」が霊界で人気!?
店の雰囲気は何となく分かったが、果たしてこのお店でどんな風に楽しめばいいのか。店員の鈴音さんに、色々と伺ってみた。
――あの〜、テーブルに手などが置いてあるのですが?
「こちらは初めてですよね? それでは、霊界の掟を説明させていただきます。私たち、幽霊にご用があるときは、仏壇などに置かれているこちらのお鈴を、一度だけチーンと鳴らしてください。そのあと、こちらの幽霊のお手を私たちに見えるよう、高く上げて待っていてください」
▲「スペアリブの火葬焼き」(430円)
――なるほど、独特の呼び方なんですね......。人気のメニューを教えてもらえますか?
「霊界のお料理は、基本的に中身は全部秘密なのですが、一番のオススメがこちらのスペアリブの火葬焼きです」
――火葬焼き?それってどんなメニューなんですか?
「仏様の目の前で火柱がのぼる、豪快な火葬の儀式を行います。火事になるくらい大きな火柱なので、ビックリすると思いますよ。ぜひ心霊画像や心霊動画を撮ってみてくださいね。このスペアリブは閻魔様が秘伝のタレに6時間漬け込んでいるので、味も霊界一です!」
▲「眼球(4食限定)」(460円)
――このグロテスクな目玉って一体!?
「幽霊の目玉を4つくり抜いてお出ししています。お味は、人間界でいうところのチーズ風味のお料理です。眼球の周りにあま〜いベリー風味の血液ソースが滴っています。デザートで頼む人もいれば、前菜で頼む人もいますね」
▲「から傘くん」(420円)
――可愛らしいネーミングの料理もありますね。この「から傘くん」って?
「妖怪の傘おばけを2匹捕まえて揚げたお料理なんですけど、人間界でいうところの、練りもののようなお味を楽しめます。お子さまにも人気で、お供えすると可愛いと言ってくれますね」
――それから、この昆虫食と書いてあるのは一体!?本物ですか?
「はい、全て本物をお出ししています。食用にドライしてあるので、そのまま食べられますよ。度胸試しで注文する人も多いですね」
――食べたことあるんですか?
「もちろん! コガネムシやバッタは、人間界でいうところのダシをとりきった煮干しを、そのまま乾燥させたような味です。ちなみに、メニューに載っていないゲンゴロウ、オケラ、カブトムシもお出しできますよ。それらは噛んだ瞬間に、土のような香りがしますね」
▲「雪女の燃ゆる恋」(770円)
――昆虫の話を聞いて気分がちょっと......。美味しそうなスイーツを教えてください。
「デザートで人気なのは、『雪女の燃ゆる恋』というメニューです。食べる前に恋愛成就の儀式を行っているのですが、雪女さんからもらった恋のエキスを、人間界でいうところのバニラにかけて火を付けます。見た目が綺麗ですし、2〜3人で取り分けられるくらいのボリュームがあってオススメですよ」
――なるほど、炎が綺麗ですね。ちなみにドリンクで人気があるのは?
「オリジナルカクテルがオススメです。私たち幽霊が、仏さま(お客さま)の横でシェイカーを振って、オリジナルカクテルをお作りします。そのときに、私たちがなぜ亡くなったのかを説明しているのですが、その死因がカクテルの味や色に表れています」
――ということは、それぞれの店員さんで、違ったカクテルが楽しめる?
「その通りです! お酒が苦手な人のために、ノンアルコールでも作れますよ。月替わりのオバケカクテルもあるので、死因が分かっても飽きずに楽しめます」
霊界のバースデーケーキは「閻魔さまの脳みそ」!?
――何かのイベントやお祝いのときに来る人も多いのでしょうか?
「そうですね、オフ会などで利用される仏さまもいらっしゃいますし、命日にいらっしゃる方も多いですね」
――命日...ですか?
「人間界でいうところの誕生日を、こちらの霊界では命日と言っております。霊界で命日をお祝いすることもあるのですが、そのときにデザートと一緒にお供えしている(提供している)のが、この『閻魔様の脳みそ』です」
――これは何でできているのですか?
「ですから、『閻魔様の脳みそ』です。本物(?)なので、食べることはできないのですが、一緒に写真撮影することはできます。南無ッター(Twitter)で、その様子をアップしているので、興味があれば覗いてみてください」
――それから、あそこに並んでいるお墓のようなものは一体?
「あちらで、仏さまのお酒のボトルを保管しております。この吉祥寺駅前の一等地でお墓が持てるということで、ご好評をいただいております」
――なるほど、また違った心境でお酒が楽しめそうですね。
「ほかにも、雨が降ってきたらメニューが割引になるなど、人間にやさしいサービスを心がけています。地獄のロシアンルーレットなど、楽しいゲームもあるので、みなさん安心して成仏してくださいね。南無〜♪」
幽霊居酒屋を実際に訪れてみての感想は、「お酒が飲める楽しいお化け屋敷」という印象。幽霊に扮した店員たちの白装束は、ちゃんと左前になっていたりして、ディテールにはしっかりとこだわっているようだ。
オブジェやBGMが恐怖を演出しながらも、笑いのエッセンスを散りばめているので、テーマパークのように楽しむことができる。ドキドキ感を適度に味わいながら、みんなでワイワイお酒を飲むにはいいのではないだろうか。
【取材協力】
幽霊居酒屋 吉祥寺 遊麗
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1-8-11-B1
電話番号:0422-41-0194
[HP]http://www.yurei.jp/
[Twitter]https://twitter.com/yurei2005
[インスタグラム]https://www.instagram.com/explore/locations/218467739/izakaya-yurei/?hl=bn
※この情報は、2019年7月時点のものです。最新情報をご確認の上、お出かけください。