「いいね」なんていらない! アウトロー作家・福澤徹三に聞く、自分を取り戻す「Iターン」三か条

公開: 更新: テレ東プラス

「Iターン」とは? 「Uターン」が地方から都市部へ移住した者が再び地方の生まれ故郷に戻ることであるのに対し、出身地とは別の地方に移り住むこと、特に都市部から田舎に移り住むこと。そして「Iターン」とは、「I(=自分)を取り戻す」ことでもある。

7月スタートのドラマ24「Iターン」(毎週金曜 深0時12分放送)は、ムロツヨシ古田新太のW主演で、福澤徹三の同名小説を原作に映像化。45歳のサラリーマンが左遷同然の単身赴任先で、2人のヤクザの組長に翻弄されながらも"I(自分)"を取り戻す姿をコミカルに描く。

この「Iターン」をはじめ、同枠でドラマ化された「侠飯」や、「白日の鴉」「すじぼり」などアウトロー、ホラー、警察ものなど幅広く手がける作家・福澤徹三氏をインタビューした。

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自分を取り戻せ! 「Iターン」のための三か条

周りに流されず、「Iターン(=自分を取り戻す)」ためには、どうすればいいのだろうか。作家デビューするまでに営業、飲食、アパレル、コピーライター、デザイナー、専門学校講師など20種類以上の職業を経験してきた福澤氏に、「Iターン」のための三か条をうかがった。

【その一】まじめに考えすぎるな!

そもそも"まじめ"ってなんだ?
「まじめにコツコツやればなんとかなるっていうのは昭和の価値観だったんですが、終身雇用も年功序列もとっくに崩壊しています。時代はもはや令和で、まじめにコツコツやってもうまくいくとは限らないのは、ぼくを含めた中高年を見ればわかります(笑)

けれども現代は不寛容社会といわれるように、ささいな発言や行動をあげつらう。政治家はおろか、お笑い芸人にまで品行方正であることを要求する。つまりその人物の能力よりも"まじめ"かどうかが評価の基準になっているんです。

"まじめ"には真剣や誠実といった意味がありますが、なにを基準にそれを判断するのか曖昧ですね。ほんとうに真剣で誠実かどうかは本人にしかわからない。あいつはまじめだとか、ふまじめだとかいうのは他人の評価です。他人の評価なんて人それぞれの受け止めかただから、好悪や快不快といった感情的な判断も混じります。だから"まじめ"は狭量になる」

ネット社会に疲れた人、身の回りに目を向けよう
「自分が"まじめ"だと思っている人は自分が正義になりがちで、異なる意見は敵とみなします。みな敵にはなりたくないから、他人の評価を気にします。したがって『いいね!』を欲しがる一方で、炎上を恐れる。メディアも匿名の意見に忖度するから、世の中全体が萎縮してしまう。誰もが"まじめ"に考えすぎて、顔の見えない相手に縛られている。ネット社会に疲れた人はもっと気を楽にして、身の回りに目を向けたほうがいいんじゃないでしょうか」

【その二】会社にしがみつくな!

「会社のために......」はナンセンス
「ぼくが勤めた会社は上場企業を含めて10社以上ありますが、いま残っている会社は1社もない。ぜんぶ潰れる前に辞めましたから、まったくダメージはない。でも当時の上司や同僚たちは、みな不遇な状況に陥りました。彼らは最後まで会社を信じていましたが、首尾よく転職できたのは上層部の人間だけです」

会社のためではなく、自分のためにがんばる
「会社は働く場であって、仲間を作るところじゃない。ひとつの会社にしがみつかないで、そこで培ったスキルを次に生かせばいいんです。もし会社にしがみつく気なら、上司や同僚を抱き込むくらいの強さが欲しい。会社のためではなく、自分のためにがんばるからこそ、やる気も出てくる。そういう意味では他人を気にせず"自己チュー"でいいんじゃないですか」

【その三】他人に期待するな!

他人に期待するから自分が傷つく
「会社に限らず、誰かのためだと思って辛抱するのはストレスが溜まります。誰かのためにがんばっているのに、その誰かが思いどおりにならないと腹が立つ。要するに、他人に期待するから自分が傷つく。結果として、誰それが悪いとか世の中が悪いとか愚痴をいう。ネット上にはそんな声があふれていますが、誰かに同意してもらっても日常生活は変わりません。

他人に期待して傷つくくらいなら、自分の好き勝手に生きてみればいい。ぼくなんか好き勝手に生きてますから、誰のせいにもできない。なにがあろうと、ぜんぶ自分のせいだから気が楽です。だからといって人間はひとりじゃ生きられません。ビジネスにおいてもプライベートにおいても、信頼関係は大事です」

信じるとは賭けることだ
「ただ信じるとは賭けるということです。賭けには、むろん期待がともないます。誰かに期待を裏切られた......すなわち賭けに負けたからといって、その人を怨むのは筋がちがう。自分に見る目がなかったと反省して、懲りずに誰かを信じればいい。無理に他人を変えるより、自分を変えるほうが簡単でしょう。早い話が楽な生きかたを推奨します(笑)

さまざまな経験をしてきたからこその福澤氏の言葉。周囲に流され、勝手に期待し、誰かのせいにするのではなく、自分を信じ、自分で決断し、自分から行動する。それが自分を取り戻す「Iターン」なのだ!

「Iターン」に込めたテーマとドラマ化への思い

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7月スタートのドラマ24「Iターン」(毎週金曜 深0時12分放送)。広告マンとヤクザの二重生活を送ることとなる巻き込まれ型の主人公・狛江光雄をムロツヨシ、義理と人情を重んじる昔かたぎのヤクザの組長・岩切猛を古田新太が演じ、「下衆の愛」(2016年)「獣道」(2017年)の映画監督・内田英治が全話の脚本・監督を務める。今回のドラマ化にあたり、原作者である福澤徹三氏に思いを聞いた。

――まずは、『Iターン』のドラマ化についてのご感想を。

「ぼくの小説はヤクザが出てくるものが多いんです。過去にもテレビドラマのオファーはいくつかあったんですが、いまどき地上波でヤクザは流せないという理由でボツになった。だったら限りなくヤクザに見えるけど、実は違うってキャラならいいだろう(笑)。そう考えて書いたのがテレ東さんでドラマ化していただいた『侠飯』です。

だから『Iターン』のオファーがあったときは、絶対無理だと思いました。『Iターン』はヤクザの組長がメインキャラですからね。ところが予想を裏切ってドラマ化された。さすが時代に忖度しないテレ東さんです(笑)」

――『Iターン』という作品のテーマや、この作品を通じて伝えたかったことは?

「いまの時代は、ぼくが育った昭和のようなおおらかさがない。昭和にくらべて街は清潔だし、人は健康で"まじめ"になったけれど、正論ばかりがまかり通るせいで窮屈じゃないでしょうか。ネットやスマホといったコミュニケーションツールは豊富なのに、人間どうしの生身の触れあいも減りました。小学生が事前にアポをとって遊ぶくらいですから(笑)。そういう現代に、昭和から抜けだしてきたようなヤクザをぶつけてみたのが『Iターン』ですね。

主人公の狛江は平凡なサラリーマンですが、上司からいびられて左遷されます。しかし狛江は、組長の岩切から無理やり企業舎弟にされて人生観が変わっていきます。正義を貫いて破滅するか、悪に手を染めても生き延びるか。そんな選択を迫られて狛江は苦悶しますが、読者には狛江や岩切の活躍を通じて、窮屈な時代の憂さを晴らしていただければと

――狛江役のムロツヨシさん、岩切役の古田新太さんについてはいかがですか?

「おふたりとも個性的ですばらしい演技力をお持ちですから、どんな狛江と岩切が観られるか、すごく楽しみです。ただ地上波ではタブーのヤクザものですから、"まじめ"な視聴者からクレームがくるかも(笑)。出演者のみなさんやテレ東さんに、ご迷惑がかからないか心配です」

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福澤氏はドラマにもカメオ出演!(衣装も自前) これまでにも「侠飯~おとこめし~」など自身の原作ドラマに出演経験があり、ドラマの現場は慣れたもの。撮影の合間もリラックスした雰囲気でスタッフや共演者と談笑。どんな役でどのシーンに登場するかは、第5話の放送をお楽しみに!

【福澤徹三(ふくざわ・てつぞう)】
1962年、福岡県北九州市生まれ。作家。2000年、『幻日』(後に『再生ボタン』と改題)で作家デビュー。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞。ドラマ化された『侠飯』シリーズ、『白日の鴉』、映画化した『東京難民』をはじめ、ホラー小説や怪談実話、アウトロー小説、警察小説まで幅広く執筆。『Iターン』(文春文庫刊)は第3回エキナカ書店大賞受賞、続編となる『Iターン2』(文春文庫刊)も好評発売中。現在、コミカライズ(漫画:大槻閑人)が週刊モーニング/Dモーニングで連載中。

美人ママとのトラブルに部下との禁断の恋!?

7月26日(金)深夜0時12分放送の第3話は? サラリーマンとヤクザの地獄の二重生活を送る狛江光雄(ムロツヨシ)。借金が返せない狛江に岩切(古田新太)がキレる!? 麗香(黒木瞳)を巻き込み、大騒動に!?

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第3話
岩切組への迷惑料500万円の金策に苦戦する狛江(ムロツヨシ)は、岩切(古田新太)に言い訳するが......。岩切は狛江が営業をかけている百貨店の情報を知り、とんでもない提案を持ち掛ける。スナックの謎多き美人ママ・麗香(黒木瞳)も巻き込み、事態は狛江も予想していなかった展開に!? そんな中、竜崎(田中圭)から借金が帳消しになる甘い誘惑が...。悩みが尽きない狛江に部下の美月(鈴木愛理)との禁断の恋の予感......!?

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