SNS映えしまくる伝説コンビニ「立山サンダーバード」に学ぶ、SNS時代に世の中を沸かすコツ

公開: 更新: テレ東プラス

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SNSが発達し、世界中の情報が瞬時にあらゆる人・場所へと届く今。そんな時代に、都心から遠く離れた富山の地で、クリエイティビティー溢れる商品や店づくりで、日本中さらには遠く海の向こうの国からも、熱いラブコールを集める「コンビニ」がある。誰もが目にしたことのない不可思議な素材や組み合わせのサンドイッチやおにぎりをつくり続けるコンビニ「立山サンダーバード」だ。開店直後に、近隣に大手コンビニチェーンがオープンしたことをきっかけに、独自の路線を極めた同店。SNS時代に世の中をトリコにする、商品アイデアの作り方やファンづくりのコツなどを、代表代行・伊藤敬吾さんに伺った。

店主のクリエーティビティーに火をつけた、大手コンビニチェーンの侵略

――はじめに、立山サンダーバード誕生の歴史を教えてください。

開店は、世間的にもコンビニが今ほどなかった1996年に遡ります。当時は仕入れ商品を売る、いたって普通のコンビニをやっていました。すると開店して4年くらい経った頃に、近所に大手コンビニチェーンがオープンしたのです。
その少し前から、「我々のような個人経営のコンビニは、オリジナル商品を作って行くべきだ」と父から言われていたので、働きながら学校に通い調理師免許を取得して、店内には厨房を構えて、オリジナルのお弁当などを作りはじめていました。

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大手がやってきた後は、店舗でお客さんを待っているだけでは安定した収入も入ってこないので、近所の作業現場などに向けたお弁当の宅配をメインにやっていました。アルバイトの方などもいなかったので、毎日家族たった3人で朝昼晩のお弁当をつくり、配達に行く毎日でした。しかし時が経つにつれ、注文数も減り、遠方への配達もコストパフォーマンスが悪くなったので、弁当配達も縮小していったんです。

――そんな中、ユニークな商品づくりに挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

2013年頃にはじめたFacebookが転機でした。あるお客さんに「ホームページやブログをやったらどうか?」と勧められ、無料で利用できるFacebookを使い始めました。当時すでにオリジナルのサンドイッチを作っていたのですが、商品を投稿する度に反響があることが嬉しくなり、SNSの反響に後押しされるように、徐々に変わったオリジナル商品が増えていきました。

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それと同時に、お店に来てくださるお客さんも増え、商品やお店への反応がリアルにわかるようになりました。それまでは一般的なコンビニをお手本に、普通のコンビニに置いてありそうなものを仕入れるように努力していたのですが、 「ここの店には変わってるというものが置いてある」という声をきき始めてからは「ちょっと風変わりなものを置いてみよう」と意識し始めました。(笑)

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SNSで自作イラストが話題に。趣味の絵が、店内ポップやオリジナルグッズに進化。

――商品はもちろん、店内の独創的空間デザインも、どこを撮っても"インスタ映え! "ですよね。こちらも伊藤さんのこだわりがあるのでしょうか?

店内のPOPやポスターは、すべて年賀状用のパソコンソフトで作っています。当初は、シックでかっこいいお店に憧れていたのですが、自分の力量では無理だと感じだので、できるだけ賑やかで楽しそうな空間を作りたいと思い、店内を「虹色」で統一しようと思いました。

――ポスターやオリジナルグッズのイラストも、立山サンダーバードらしい中毒性を感じます...! これも伊藤さんのお手製ですか?

はい、完全独学で書いています。3年前くらいに、富山で有名な落差日本一の滝「称名滝」のイラストを書いてFacebookに投稿したら、大きい反響があって、また調子に乗ってしまい...。そこから少しずつ書き始めて、今や自分のイラストのポストカードやバッグ・帽子などまで売るようになってしまいました。

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――とても多才な店主・伊藤さんですが、開店以来20年以上「家族経営」にこだわられているとお聞きしました。ご家族それぞれの役割分担について教えてください。

お店の経営は、僕が中心でやっています。父は、開店と閉店を担当です。毎日お店に泊まっているので、営業開始の早朝5時にお店を開けるために、4時頃起床して、おにぎり作ってくれています。日中は、店の外で畑作業をするなど自由に過ごしています。

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母は何かを担当してもらうというより、縁の下力持ち的な存在です。しいて言えば、新商品の試食担当ですね。

日常に「これ挟めるかな?」の視点を。立山サンダーバードに学ぶ、SNS時代の新商品のつくり方

――発売するたびに、SNSを沸かせるユニークなおにぎりやサンドイッチといったオリジナル商品。新商品が誕生するまでのフローを教えてください!

新しい商品アイデアは、常に考えるようにしています。テレビを見たり、スーパーなどに行く時に、食材を見る際には「これ挟めないかな?」という視点で世界を見るようにしています。その際「サンドイッチ→おにぎり→昆布じめ」の順番で、食材を当てはめて考えていくと、どれかしらにフィットすることが多いです。とはいえ、サンドイッチが一番柔軟性が高いので、脳内でまずサンドイッチに挟んでみるようにしています。

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その他にも、問屋さんのから紹介された食材や特売商品を、まずもらってから考えるというパターンでアイデアを発想することもあります。

――商品化を決める試食のプロセスについても教えてください。

伊藤家では、朝ごはんが試食会の場です。父は少し味覚が異なるので、試食会には参加せず、母と僕でしています。(笑)商品化の最終決定権は母にあり、どうしても発売したくても、母がダメと言ったら商品化は諦めます。母は、どんなに面白かったり、新しい組み合わせでも、「本当に美味しいか」をシビアに判断します。

自分の中ではいいアイデアで、どうしても商品化したいときは、母に認めてもらうために複数回アレンジすることもありますが、一回ですっと合格が出るものが結果的にいい商品になっている気がします。

「ことば」が売りを左右する! 立山サンダーバードが考える商品名の重要性

――商品はもちろん、商品名やPOPに書かれた商品説明文にもこだわりを感じます。人の目を引く「言葉」を考えるためのコツを教えてください。

立山サンダーバードには、二つの価格帯(290円・470円)のサンドイッチがあります。おにぎりもサンドイッチも、素材がそのまま商品名になっているパターンが多いのですが、470円のサンドイッチは、高価なだけに目を引いてもらわねばと思い、商品名や説明文を工夫しています。

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――商品名が売れ行きを左右することもありそうですよね。

はい。絶対美味しいはずなのに売れない商品があると、意地でも売るために商品名を変えてみることもあります。たとえば、「もちチョコクリーム」という求肥・チョコ・クリームを挟んだサンドイッチがなかなか売れなかったので、ターゲットである女性を意識して、層になっていた求肥を表現した「ミルフィーユもち」に改名すると、一気に人気が出ました。

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以前、ブラックサンダーと苺ソースを使ったサンドイッチ「赤いイナズマ」を開発した時に、SMAPの曲と同じ名前の「青いイナズマ」も作ってみようと、ブルーベリーソース入れたバージョンも試してみたのですが、味がいまいちだったので撤退しました。「言葉」ももちろんですが、商品名と中身(商品)の両立が一番重要ですね。

――「きのこたけのこチョコ」など、市販の商品名をダイレクトに使っているものもありますが、この辺りの権利関係は問題ないのでしょうか...?

某チョコレートメーカーの社員さんがお客さんとしていらした時に、商品名をそのまま使うことについて尋ねると、「試作の段階からいろいろな申請などが必要」と聞いてから、少しビビってしまい、ダイレクトな名前は避けるようにしています。(笑)

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たとえばアポロチョコレートを使ったサンドイッチの場合、アポロといえば宇宙船ということから、商品名を「月へ行こう!」にすることで逃げ道を作っています。

「美味しそうは、恐ろしい。」安全すぎる商品は作らない店主のポリシー

――絶妙なネーミング、さすがです!(笑)そんな立山サンダーバードさんの開発中の新作があれば教えてください。

今年の春は三食団子と桜餅が入ったサンドイッチ「春が来た!」を販売するなど、毎シーズンその季節らしいものを作っており、夏っぽい商品を試作中です。

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「夏といえばスイカだ!」と思ったものの、あまりにも水分が多く難しく、代わりにパイナップルに変更予定です。「パインアップル」とかけて、「パイン」と「アップル」を使ったサンドイッチを作ろうとしているのですが、想像する味が安全すぎて、逆に手が出せないという状況です。(笑)

――地域の人や、SNS上の遠く離れた地の人に愛され続けるためのコツを教えてください。

地域の人には、開店から20年以上経つので、飽きられないように新商品を作り続けることが大事だと思います。

SNSでは、きれいな写真と簡潔な紹介文で、工夫しすぎない投稿を意識しています。また投稿する商品も、売っている商品をあまねく紹介するのではなく、立山サンダーバードらしさを感じる商品だけを選りすぐりで紹介するようにしています。投稿する商品のバランスも意識して、おにぎりの投稿ばかりが連続することなどを避けるようにしています。

<店舗情報>
「立山サンダーバード」
住所:〒930-1377 富山県中新川郡立山町横江6-1
電話番号:076-483-3331
営業時間:5:00〜20:00(夏季) 6:00〜20:00(冬季)
定休日:無休
URL:https://www.facebook.com/tateyama.thunderbird/

※この情報は、2019年7月時点のものです。最新情報をご確認の上、お出かけください。

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