行列店「ぼんご」が伝授! 最高のお米の炊き方と”握らない”ふわふわのおにぎり作り

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

情熱だけでおにぎり店をオープン!

今回訪れたのは、ポーランドの首都・ワルシャワの郊外。ニッポンにご招待することを伝えると、涙を流して喜んでくれたのはカタジーナさん(37歳)。

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カタジーナさんは、築30年以上のアパートに夫のマルチンさん、長女・ナディアちゃん(8歳)、次女・カリーナちゃん(3歳)と4人で暮らしています。家族揃って「ニッポンが大好き」というカタジーナさん一家。私たちがお邪魔した時も、ナディアちゃんは浴衣姿で出迎えてくれました。

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そんなカタジーナさんが虜になっているのが、ニッポンの「おにぎり」。今では世界各地でおにぎり専門店が相次いでオープンしていて、寿司に次ぐブームの兆しも見えています。

「おにぎりは手軽に作れて健康的でしかも美味しい。ニッポンが生んだ最高のファストフードだと思います」と語るカタジーナさんは、2年前、インターネットで知ったおにぎりに一目惚れし、見よう見まねで作り始めたとのこと。この日は、私たちにもおにぎりを作ってくれました。

ベトナム産のコシヒカリをロシア製の炊飯器で炊きます。具は、アジア食材店で買った梅干しにおかか、そして日本酒に一晩漬けてから醤油で味つけした鮭はポーランドでは手に入らない塩鮭の代わりです。こちらがカタジーナさんが作ってくれたおにぎり!

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形も綺麗な三角形で、出来栄えは完璧! 一家の夕食もおにぎり尽くしでした。週に3回はこのメニューだそう。そしてカタジーナさん、おにぎりの素晴らしさをポーランドの人にも知ってほしい...とコツコツ貯めた資金で、1年半前に念願のおにぎり屋さんをオープンしました。

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店頭販売の他、ラーメン店のサイドメニューとして、日本料理店にもおにぎりを納品しています。おにぎりの具材開発にも余念がなく、定番の梅干しや昆布の他、ガーリックエビなど13種類のおにぎりを1つ約280円で提供しています。

そんなカタジーナさんの夢は、ニッポンで人気のおにぎり専門店に行き、お米の炊き方やにぎり方を勉強すること。その技術をポーランドに持ち帰り、「おにぎりの良さをもっと広めたい」と話します。そこで今回は、おにぎりに魅せられたカタジーナさんをニッポンへご招待!

創業60年。毎日行列が絶えない「ぼんご」へ

ニッポンに到着したカタジーナさん、着くやいなやおにぎり専門店「ぼんご」に行きたい、とのこと。「おにぎりは何と言ってもお米が大事だと思うのですが、"ぼんご"のおにぎりはとにかくお米が美味しいと評判で、ずっと食べてみたかったんです」と話します。

早速、東京の豊島区・北大塚にある「ぼんご」へ向かうと、午後2時50分という時間にも関わらず、お店の前には行列が。店内は満席で、お店の外には10人以上が並んでいました。「こんな時間に行列ができるなんて!」と驚くカタジーナさん。

「ぼんご」は1960年創業のおにぎり専門店。お寿司屋さんのようなカウンターから、次々と出来たてのおにぎりがお客さんのもとへ...。

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開店とともにお客さんは後を絶たず、1日の売り上げは1000個以上。お客さんを惹きつけてやまないのが、他では味わえないふわふわのおにぎり。ようやく店内に入ったカタジーナさんを元気な笑顔で迎えてくれたのは、43年女将を務める右近由美子さんです。

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席に着いたカタジーナさんの目がまず向けられたのは、カウンターの中でおにぎりを作る店長・越部努さんの手元でした。

おにぎりを握るのではなく、まな板の上で回転させながら形を整えているだけのようですが、無駄がない動きで、魔法のようにごはんがきれいな三角形に仕上がっていきます。「うち、握らないんで」と笑いながら話す越部さんは元寿司職人。握らないことが「ぼんご」のおにぎりが「ふわふわ」と称される理由だったのです。

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人気の秘密は、食感だけでなく55種類もある豊富なメニュー。不動の人気メニューは、鮭や筋子。
そんな中、カタジーナさんが悩んだ末に選んだのは、まだ食べたことがないじゃこマヨネーズとホッキサラダの2種類。ご飯茶碗1杯分もある大きなおにぎりが2個、おかわり自由のお味噌汁がついたお昼のセットです。

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カタジーナさんは、じっくり味わってから少し心配そうに見ていた右近さんに向かって満足気に頷きます。右近さんもほっとした様子。

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感想を聞くと、「じゃことマヨネーズの後に唐辛子がピリッときくのがいいです」と具の細かな味の変化も味わっていたよう。握っていないふわふわの食感と相まって「完璧です!」とのこと。続けて食べたホッキサラダは、ホッキ貝やイカ、とびっこなどの海鮮をマヨネーズで和えたもの。

「具がたっぷり入っているのにそれに負けないぐらいお米の味がちゃんとします」。ふわふわの食感とたっぷりの具材が絶妙なハーモニーを生み出しています。

「ぼんご」のおにぎりの秘密を伝授!

翌日。開店前の「ぼんご」にやってきたカタジーナさん。今日は右近さんがおにぎりの作り方を教えて下さることに。ポーランド料理すら作ったことがなかったカタジーナさんが情熱だけでおにぎり屋さんを始めたことを知り、右近さんは、「すごい。本当にすごい!」と感心しきり。

【ぼんごのこだわりその1】新潟県岩船産のコシヒカリ
まず右近さんが見せてくれたのはお米。こちらで使っているのは新潟県岩船産のコシヒカリ。岩船産のコシヒカリは、魚沼、佐渡と並ぶコシヒカリ三大銘柄の一つ。一般的なお米と比べると、岩船産は粒が大きく、おにぎりにすると空気がたくさん入って美味しいそう。

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お米を炊く準備にも秘密がありました。お米を水に浸しておく時間は、1時間以上とのこと。しっかり水を吸わせることで芯まで柔らかく、炊き上がりがふっくらするのです。

【ぼんごのこだわりその2】お米は一晩冷蔵庫へ
そしてこの後、大事なひと手間がありました。十分に水に浸したお米の水を切り、一晩冷蔵庫へ。冷やすことによってお米の中のでんぷんが糖分へと変化し、この糖化現象によってお米の甘みが格段に増すんだそう。

おにぎりに入れる具材にもすごい裏技が! 大量の卵が水に浸かっているので何かと思えば、実はこれ、殻のまま冷凍した卵を解凍しているところ。

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通常、卵の黄身はおにぎりに入れられませんが、一晩凍らせた卵は丸く固まった状態で黄身だけ残るので、これを4時間醤油に漬ければ「ぼんご」の人気メニュー「卵黄の醤油漬け」になるのです。卵黄を具材にするための右近さんオリジナルのアイデア!

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【ぼんごのこだわりその3】握らず、3回形を整える程度
続いて、いよいよ握り方を教えてもらいます。握ると言うよりは、形を3回整える程度。右近さんは「ごはんはやっぱり炊きたてが美味しいじゃないですか。1回でも2回でも握った分だけ固くなっていくから、あくまでも握りたくないんですよ」と話します。

【ぼんごのこだわりその4】ご飯は60~70℃に冷ましてから握る
ご飯の温度にもこだわりが...。炊きたてはご飯同士がくっつかないので、しゃもじでかき混ぜながら60~70℃に冷ましてから握るそう。水で濡らした手で、軽くボール状に整えたご飯にくぼみを作って具材を入れ、同量のご飯にくぼみを作って先程の具材入りのご飯の上にのせます。これは具をご飯で圧迫しないための工夫。

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【ぼんごのこだわりその5】海苔は選りすぐりの一級品を使用
次に、「ぼんご」特製の胡麻塩を手に取り、3回形を整えたら海苔で巻き、もう一度形を整えて完成。
海苔も大切で、「ぼんご」では、50年以上お付き合いがある海苔屋さんが選りすぐった一級品を使っています。少し厚めの大きな海苔がおにぎりを包装紙のように包み込み、ふわふわでも崩れないおにぎりになるのです。

カタジーナさんもおにぎり作りに挑戦。飲み込みが早く、ふわっと握るのは見よう見まねで上手に出来ました。さらに右近さんは、おにぎりをふわふわにする練習法を教えてくれました。おしぼりをアルミホイルで包み、握らずに形を整える感覚を覚えていくとのこと。下側の手は何もせず、おにぎりをのせているだけで、決してギュッとすることはないのです。そして出来上がったアルミホイルのおにぎりを右手に添わせるように転がすことで、握らない絶妙な力加減を養います。カタジーナさん、練習を重ねていきます。

翌朝。右近さんの提案で、おにぎりを握るテストをすることに。

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「不合格になったら?」と聞くカタジーナさんに、右近さんは「残る。帰っちゃダメ(笑)」と返します。するとカタジーナさんも、「じゃあ不合格で!」と本音が混じったジョークを。お客さんはお店の従業員の皆さん、果たしてカタジーナさんは、合格することができるのでしょうか?

カタジーナさんは教えられた通り、ふわっと形を整え、具もたっぷり入れて握ります。海苔の巻き方も失敗しませんでしたが、少しだけ端が破れてしまいました。3つのおにぎりが出来上がり、食べてもらうと...。

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右近さんが「美味しいよね」と言うと、審査員の皆さんも笑顔で頷きます。ただやはり、海苔の巻き方には引っかかったようで、「握り方はすごく良いの。あとは海苔の付け方。お金を頂くのは最後の海苔ですから。ごはん粒だらけのおにぎりを"どうぞ"って言われたら、"いや、いいですよ"って言われちゃう」と右近さん。たしかにカタジーナさんのおにぎりにはごはん粒が!

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というわけで卒業試験の結果は「やや合格」。「帰らなきゃいけないんですね...」と残念がるカタジーナさんでした。

別れの時。「短い期間でしたが、たくさんのことを教えて頂き本当にありがとうございました。ここで学んだことを国に帰って活かせるよう、毎日練習に励みます。私に修業のチャンスをくださり本当にありがとうございました」とカタジーナさんが感謝の意を述べると、右近さんからは、ぬか漬け用のぬかとあら塩がプレゼントされます!

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カタジーナさんからはポーランドの陶器とお菓子がプレゼントされ、今度は家族と一緒に来ることを約束し「ぼんご」の皆さんとお別れです。

冷めても美味しいおにぎりの秘訣

続いてカタジーナさんが向かったのは東京の北区・上十条。実はカタジーナさん、自分のお店ではテイクアウトするお客さんが多く、時間が経つとどうしてもおにぎりが固くなって美味しくなくなることを気にしていました。「時間が経っても美味しいおにぎりの作り方が知りたい」とスタッフに相談していたのです。

上十条で訪れたのは、1963年創業の持ち帰りのおにぎり専門店「蒲田屋」。出迎えてくれたのは、二代目店主の添野勝利さん。お母さんのツルヨさんとお店を切り盛りしています。

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焼きおにぎりから天むすまでバラエティ豊かな43種類をすべて110円で提供。早朝6時30分のオープンから客足が途絶えることなく、毎日お昼過ぎにはほぼ売り切れ。なんと1日3000個売れることもあるそうです。

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カタジーナさんは、添野さんおすすめ「なすみそ」と「しそれんこん」など4種類のおにぎりをチョイス。冷めても美味しいおにぎりにかぶりつきます。

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カタジーナさんのおにぎりは、冷めたらパサついてしまうそうですが、このおにぎりは冷めてもモチモチしているとのこと。すると添野さんが、「2時間後に美味しくなるものをイメージして作っています」と教えてくれました。果たしてその秘訣とは?

まずは、炊けたごはんを扇風機を使って冷まします。こうすることで、ごはんの表面の水分を十分に飛ばし、時間が経ってもべちゃつかないおにぎりになります。

またコシヒカリは、混ぜることによって粘りが出て、その粘りがお米の中の水分の蒸発を防ぐので、時間が経ってもモチモチ感が残るそう。添野さんの握り方も、「ぼんご」同様ふんわりとしていました。少し多めに塩をつけ、冷めても塩味が感じられるようにするのも大事なポイント。

午後、カタジーナさんは添野さんと具材の買い出しに...。すると突然「ポテトチップスはどうですかね?」と新しい具材の提案をするカタジーナさん。添野さんも「良いと思います」と同意してくれました。

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ガーリックチップスを手に取るカタジーナさんに、添野さんも「これはいけると思いますよ」と共感し、2袋お買い上げ。これにはカタジーナさんも満足そう。

お店に戻り、早速試作を開始します。まずはポテトチップスを袋の中で細かく砕き、バターと蒲田屋特製出汁醤油をたっぷり混ぜ込んだごはんに加えます。それを見ていたお母さんは、少し不安げな表情。

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これをおにぎりの型に入れ、中にとろけるチーズをたっぷり挟み込み...。

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鉄板で美味しそうな焦げ目がつき、中のチーズが程よく溶けるまで焼いたら完成です! 試食してみると...添野さんは「思ったより美味しいですね」と笑顔。カタジーナさんも美味しそうにほおばります。そして不安げな表情をしていたのツルヨさんも「美味しいです!」とお墨付きをくれました。

ツルヨさんの発案で「ポテチーズ焼」としてお店に出してみることに。カタジーナさんが店頭に立って売っていると、ツルヨさんがよく食べに行っていたというお店のご主人が買ってくれました。

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「バターの味がナイス!グッドテイスト!」と嬉しい感想。その後も売れ行きは好調で、なんと30分で完売。

別れの時。「とても大切な技術を教えていただいて本当にありがとうございました。販売までやらせていただいて本当に幸せな時間でした」と挨拶するカタジーナさんに、添野さんは「ポーランドでもおにぎり文化を広めて下さい」と温かいエールを贈りました。

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コシヒカリの産地で田植えを初体験!

この他にも、「ぼんご」で使っているコシヒカリの産地、新潟県岩船郡・関川村を訪ねたカタジーナさん。米農家の本間正良さん(71歳)がコシヒカリの田んぼを案内してくれます。

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田植えまで体験させてもらったカタジーナさん。

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「もう少し慣れたらここに働きに来たいです」とカタジーナさんが言うと、本間さん一家は「どうぞどうぞ、来て下さい」と心から歓迎してくださいました。

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おにぎりを通してたくさんの出会いがあったカタジーナさん。帰国を前にニッポンの感想を聞くと、「おにぎりを愛する皆さんからたくさんの知識と経験をいただきました。おにぎりは日本人の心だと思います。ポーランドに帰ったらその心を広めたいです」と語ってくれました。

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カタジーナさん、またの来日お待ちしています! そして今回の旅でお世話になったみなさん、本当にありがとうございました!

そして今晩8時放送「世界!ニッポン行きたい人応援団」は...。

21年前、日本の医療を学ぶため、国費留学で岡山県に来日したトルコ人夫婦。しかも、ニッポンで出産をすることになり、幼い娘との慣れないニッポンでの生活は苦労の連続。そんな2人に手を差し伸べてくれたのが、当時住んでいたアパートの大家・井上剛さん、芳代さんご夫妻。「日本でお世話になった大家さんに会ってお礼が言いたい!」というので、大きくなった娘とニッポンへご招待! 大家・井上さんがいる岡山県へ...。

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いよいよ大家・井上さんの妻・芳代さんと17年ぶりの再会。そこには今年96歳になる芳代さんから驚きのサプライズがありました。そしてさらに、来日のもう1つの目的である「娘さんの成人式」も実現します。どうぞお楽しみに!

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