「”悪”に疑問を投げかけ、エンターテインメントとして見せたい」自由の森学園×上出遼平プロデューサースペシャル対談

公開: 更新: テレ東プラス

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吉岡秀隆星野源ら、数々の著名人を輩出してきた「自由の森学園高等学校」(埼玉県・飯能市)。「競争原理に頼らない」「テストや校則がない」というユニークな教育法で、表面的な部分のみマスコミに取り上げられがちな学園だが、授業のカリキュラムや寮生活は「授業を作る」「クラスを作る」をテーマに、積極的な意味での"自由を作る営み"が行われている。

今回は、学園のプログラムの一環として、自由の森学園の生徒6人がテレビ東京を訪問。「過去放送された『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(ゴールデンスペシャルは7月15日月曜 夜9時放送)を見て衝撃を受けた。番組を手掛ける上出遼平プロデューサーに会ってみたいと思った」と語る蒲池響子さん(高校3年)が熱いメッセージを上出Pに送り、対談が実現した。

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そもそも「ハイパーハードボイルドグルメリポート」とは、ムショ帰りの人やカルト教団など、ヤバイ奴らのヤバイ飯をリポートし、ヤバイ世界のリアルを見るグルメ番組。その予想を裏切る結末に、様々なことを考えさせられる視聴者が続出。ギャラクシー賞月間賞も受賞した問題作だ。

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そこで「テレ東プラス」では、上出Pが高校生たちに贈った"上出イズム"をあますことなくお届け。「普段はまったくテレビを見ない!(笑)」と語る高校生たちに、上出Pは今、何を語るのか...。

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人間はもっと複雑...優しさも狂気も存在する

1.どんなにカッコ悪いこともいいことも、経験はすべて今につながる
「学生時代は人に言えないような良くないことも沢山してきたけど、その時の経験がすべて今につながっている。もちろん自分が誰かに迷惑をかけたことはしっかり反省しなければいけないけれど、自分が悪いことを経験してきたからこそ、"悪"ととらえられがちな人々の背景や奥底にある事情に思いを巡らせてしまう。そんな思いが番組作りにつながっているのかもしれない。学生時代に没頭した『パンク』という態度も非行も全部今につながっている。どんなにカッコ悪いことをしてしまっても、それも全部経験。経験していないことは感じられない、描けない」(上出P 以下同)

2.何をやっている時が楽しい? それをしっかり分析できるかどうか
「写真を撮る、知らない世界をのぞき見するとか何でもいいよね。楽しい! 最高! と感じることができれば何でもいいと思う。僕らの業界だったらそれが異常なほうがいいよね(笑)。そのためには、若いうちにいろんな世界を見たほうがいい。それはつまりいろんな"自分"を見ることと同じなんだけれど。得意なことがわかってきたら、次第にその中で自分がどうすればいいか...役割がわかってくる。この社会に自分が何を与えられるかがわかってくる。"やりたいこと"を追い求めるのはとても大切だけど、それだけでは仕事にはならない。自分の"やりたいこと"と"できること"を見極めて、それが社会の要請(今ある要請であれ、将来の要請であれ)にいくらかでも応えられればそれが仕事になるんじゃないかな」

3.誘いは断らない
「僕は相当軽い人間(笑)。だから誘いは絶対に断らないし、"会いたい!"と言われたら、できる限り世界中どこへでも飛んでいきます。そのための時間やお金は決して惜しまない。楽しくなかったら一回きりにしたらいい」

4."悪"に疑問を投げかけ、エンターテインメントとして見せたい
「僕がテレビの世界に入って8年経ちました。この8年間で、テレビが持っている可能性を知り、テレビづくりのスキルの一部を学び、自分が"テレビ"という道具を使って何ができるかを考えた。その一つがこの「ハイパーハードボイルド~」。僕たちが持っている"人目を惹く映像づくり"のスキルで、蓋をされた社会の暗部を映し出す。そして、その暗闇の中にしかない何かを、そっと取り出して視聴者に差し出す。バラエティ、グルメと謳っておいて"実は違うよ!"というところを目指しています。どこかに"正しい!"と思われていることを壊したいという思いがある。壮絶な人生を乗り越えてきた人たちの"生きるエネルギーの強さ"を伝えたい」

5.「明日死ぬかもしれない...」一瞬一瞬を丁寧に生きる
「その瞬間を一生懸命丁寧に生きることをした方がいいんじゃないかなと思う。それはあくまでも「今が楽しければそれでいい」という刹那主義ではなくて。先々のことまで考えて今を大切に生きるということ。遊びも勉強もすべてが本気! 本気だったら、どんな遊びからでも学びがある」

6.人間はもっと複雑...優しさも狂気も存在する
「今のテレビ業界は、こういう部分が描かれにくくなっている。相変わらず"わかりやすさ至上主義"みたいなところがあるけど、時代は変わってきている。 "わかりづらいものをわかりづらいまま見せたほうがいいのでは?"と感じている。視聴者の皆さんをもっと信じたほうがいいと思う」

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上出Pに積極的に質問を投げかけ、時には自分の悩みを相談したり、思想を主張したりと、身の濃い1時間半となった今回のスペシャル対談。学生たちのプレゼンテーションやコミュニケーション能力が問われるようになって久しい現代だが、様々な経験をしてきた「自由の森学園」の生徒からは、活力に満ちあふれている様子が見てとれた。

そこで対談後、企画者である蒲池響子さんと青木瑞樹さんを直撃取材! 感想を聞いた。

"これってナニ? バラエティなの? めちゃくちゃ考えさせられるじゃん"と衝撃を受けました

Hyper_hard_boiled_Gourmet_20190713_06_1.jpg※右・蒲池響子さん、左・青木瑞樹さん(写真部部長・光安匠くん撮影)

――まず、今回の対談の感想から聞かせてください。

蒲池「上出さんはものすごく自由で、枠に囚われていない。ルールが沢山あるテレビ業界で、どうすり抜けて自分の芯を通すか...学ばせて頂きました。こんな番組にすれば、こういう角度の人からも注目してもらえるんじゃないか、など、独自のスゴイ目線がいろんなところに及んでいるなとわかって、それがとても面白かったです」

青木「私は、蒲池さんの企画に乗っかっただけなんですけど(笑)、"もうすぐ高校を卒業するし、どうやって生きていけばいいんだろう...ぶっ飛んだことをしたいけど、勇気も度胸もあんまりない"そう悩んでいるときに、ちょうどこの話があって、今日の上出さんのお話にはすごく共感しました」

――そもそも、「ハイパーハードボイルド~」との出会いは、どんなものだったのでしょう。

蒲池「TVer(広告付き無料配信サービス)でたまたま流れてきたのを見てみたら、"これはヤバイ!"と思ったんです(笑)。"これってナニ? バラエティなの? めちゃくちゃ考えさせられるじゃん"という感じで衝撃を受けて...。"テレビ局には、こんなやり方で伝えるスゴイ人がいるんだ、会ってみたい!"と思ってインタビュー記事など調べたら、上出さんの思想がさらに深くて、さらに会いたい気持ちが強まりました」

青木「私は将来、生物に関わる仕事に就きたいと思っています。今回蒲池さんに教えてもらって『ハイパー~』を見ましたが、"生きる=食べること"というテーマが胸にすごく刺さって、私の価値観とどことなく合致するところがあったので、自分でも驚きました」

――上出Pとの対談を終えて、自分の中で新たな発見はありましたか?

青木「夢も目標もなくていいんだと思いました。"なんとなくこれがやりたい"という感じで生きていけばいいんだな...と。"この仕事をするためにこの学校に行きます"とか、どこかでそういうレールを敷かなくちゃいけないと思っていましたが、"もっと行き当たりばったりでいいのかもしれない"と気持ちが楽になりました」

蒲池「目標や夢はまだないけど、一瞬一瞬を丁寧に生きることが大事なんだと気づかされました。そうしていくうちに、自然と自分ができることや社会から見た自分の位置づけがわかるようになるのかな? と。"立派なことがしたい"とか、変に気負わなくていいんだと感じました」

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――今日の対談を拝見して、皆さん主張する力と、積極的な姿勢が素晴らしいなと感じました。「自由の森学園」は、授業のプログラムでも話し合いを重視し、"自由を作る"というかけがえのない経験をさせてくれる学校です。改めて、学園の魅力はどこにあると思いますか?

青木「沢山あります! 特に魅力的だなと思うのは、先生も生徒たちも、みんながいい面と悪い面を全部さらけ出してくれるところ。その上で、私たちに考える機会を与えてくれるので、とても恵まれているなと感じます。勉強勉強で考える暇もない学校はきっと多い。考える力が養われたからこそ、"勉強をするのは自分のためなんだ"と結びつけることができました。"こういう目的があるので、こういう人たちと交流したいです"と提案すれば、先生方が"力を貸してあげるよ!"とやりたいことを応援してくれるし、努力を認めてくれる学校だと思います。

提示される学びではなく、学びが広くいろんなところに転がっているので、"みんな、学びを拾っていって~(笑)"という感じもすごくいい。あとはとにかく自然が豊かなので、生物が好きな私にとって最高の環境です」

――入学して、"ここが変わった!"と思うことはありますか?

蒲池「様々なカリキュラムを通して、"なんでこうなんだろう"という疑問が持てるようになりました。例えば問題ひとつ解くにしても、その公式がなぜそうなるのか...考えを深めていくと、思わぬところに結びついていったり...。提示されたことをそのままやるのではなく、もっと企画段階から関わりたいとか、根本に思考が向くようになったかな? と思います」

そんな蒲地さん、青木さんもハマった! 上出プロデューサーが担当する「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート~ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯~』(7月15日月曜 夜9時放送)。2017年深夜にこっそり放送すると、たちまち「ヤバすぎる」と大きな話題に。あれよあれよとギャラクシー賞まで受賞した番組が、長い沈黙を経て堂々ゴールデンで復活。MC・小籔一豊がゲストに有吉弘行を迎え、豪華3カ国の2時間スペシャルをおくる。

ケニアのゴミ山で肺を病みながら暮らす青年や、南米ボリビアの"人食い山"と呼ばれる鉱山で命をかけて働く炭鉱夫、ブルガリアのドナウ川でのキャビアのためチョウザメを狙う密漁者というディープな人々を徹底取材! 彼らが今日、何を食うのか...ド迫力映像と共にリポートする。※番組初の試みとして、ディレクター陣による副音声の生放送も実施。

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◆アフリカ・ケニアではナイロビの巨大なゴミ山に潜入。周囲をスラム街で囲われるこのゴミ山は犯罪の温床になっており、殺人事件が頻発する。3000人以上がこのゴミ山でゴミを拾って生活の糧を得ており、そのほとんどは周囲のスラムから通っている者たちだ。しかしほんの数人だけ、このゴミ山の奥地、まさにゴミのど真ん中に暮らしている者がいるという。一体誰がどんな暮らしをしているのか、そして何を食うのか。

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◆南米・ボリビアではこれまでに800万人以上が命を落としたといわれる銀鉱山に潜入。落盤や窒息性ガスの事故で一カ月に平均4人が亡くなるというこの鉱山で、今なお大勢の男たちが洞穴に潜り一獲千金を狙ってハンマーを振っている。事故には遭わずとも、彼らの肺は粉じんで侵され、寿命はみるみる縮んでいく。彼らはどうして命を危険にさらしてまで金を稼ごうとするのか、そして彼らは、何を食うのか。

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◆東南ヨーロッパ・ブルガリアには、かの有名な大河ドナウ川が流れる。実はこの川はヨーロッパ唯一のチョウザメ生息域であり、良質なキャビアの産地である。しかし、乱獲によって今や絶滅の危機に瀕しており、現在チョウザメ漁は禁止されている。にもかかわらず、ドナウ川沿いのある村では、漁師の大部分がチョウザメの密漁に手を染めているという。今回は密漁を終えて岸に戻ってくる漁師を直撃。彼らは何を食い、何を思うのか。

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https://www.paravi.jp/title/24596

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