夏バテと自律神経の意外な関係&臭いおならの対処法:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える知的エンターテイメントバラエティ。

今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられた健康相談は、暑さとともにやってくる体の不調「夏バテ」と、他人にはなかなか話しにくい「おなら」に関するお悩みです。同番組のレギュラー・中山久德医師にお答えいただきました。

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激しい温度差、食欲不振...今からはじめる夏バテ対策!

Q:30代・営業職の男性です。毎年夏バテになり、その度に体重が激減。食べるのが面倒くさくなって水分ばかり摂ってしまいます。特に太陽がカンカンに照りつける日などは、体がだるくて何もする気になれないくらいです。夏バテ予防を始めるのに最適な時期・対策はありますか? また、オススメのサプリや料理、食材などがあれば教えてください。

―― いよいよ夏本番、暑さ対策に頭を悩ませている人も多いと思います。

「相談者のように食欲がなく、何をするにも気だるくてしんどいという人が増えてくる時期ですね。夏が暑いのは当たり前のことですが、昨今は30℃後半の異常に高い気温の日も珍しくない。夏場はなるべく涼しい環境にいようとするわけですが、外に出たら30℃後半の高温、屋内に入れば過剰に冷房が効いた20℃台半ばの室温という大きな温度差が実は重要な問題です。

人の体には、体温を一定に保とうとする恒常性機能が働いています。それをコントロールしているのが自律神経系。ただし、自律神経による体温調整が上手く機能するのは気温差が5~7℃くらいまで。それ以上の差になると、体は急には反応できなくなります。外では懸命に汗をかくことで熱を発散させて体温を下げていますが、冷房が効いた場所に入ると、あまりの気温の低下に今度は体を温めて守ろうとする...。これでは自律神経が参ってしまい、体に不調も現れやすくなります」

――たしかに、エアコンの温度が低めに設定されているところでは、寒くなってしまうことも多いです。

「電車の中や施設内など、低い温度になっていること自体をどうにかするのは難しいですよね。温度調節のできるご家庭なら、熱中症にならない程度として27℃くらいを目安に設定しておくと良いでしょう。

ただし、その室温でも5℃高い温度は32℃。夏場に32℃を超える日は比較的多いので、急激な温度変化に体をさらさないためには、冷房の効いたところで涼しすぎると感じたままにしないことが大切です。直接肌に冷気が当たって体を冷やすことがないように、薄手の羽織ものなどで調整するようにしましょう。

また、相談者のように営業職であれば、外で汗をかくことも多くなります。衣服が濡れたままの状態で冷気にさらされると、体は、より一層冷えてしまいます。可能であれば着替えを用意しておくか、速乾性の衣類を着るなどの工夫をするといいと思います」

―― 食欲が落ちてしまうのはなぜでしょう? 相談者の場合、体重もかなり落ちてしまっているようです。

「痩せてしまった原因のひとつとして考えられるのは、多くの水分をいっぺんに摂りすぎて、消化酵素である胃酸が薄まってしまったこと。きちんと食べたとしてもうまく消化できず、栄養の吸収が悪くなります。

もしも消化器官に異常がなくて食欲が落ちているのだとしたら、自律神経のバランスが崩れたことも一因かもしれません。暑いと喉が乾くし、汗をかいた分、水分を摂らなければならないのですが、そんなときは冷たい飲み物を飲んでしまいがちです。さらには、アイスクリームやかき氷のような冷たい食べ物など...。

最初は冷たくて爽やかな感じがするかもしれませんが、そこから食道、胃、腸と巡って体の中を冷やしていきます。すると、自律神経の働きも落ち、腸内環境も悪化してしまうので、胃から先は冷たすぎる刺激が伝わらないようにすることが大切です」

―― 夏バテ対策は、いつ頃から始めると効果的ですか。

「週のうち暑い日が数日ある頃から始めるのがベストでしょう。おすすめなのは、暑いときに"これをしたいな"と思うことをぐっとこらえ、逆の行動をとることです。例えば、冷たいものばかり一気に飲まず、ひと息入れてから温かい飲み物や食べ物を摂って胃や腸の中の温度を上げること。また、シャワー浴で済ませたいところを湯船に浸かるなどです。自律神経を整えるためにもお風呂はぬるめのお湯にゆっくり入りましょう。

また、日中の疲れがたまっていたり遅くまで仕事をしたりすることで、睡眠が十分に取れないのも夏バテには悪影響。睡眠中は温度感覚が低下しますが、体は汗をかきます。熱帯夜はエアコンの温度を体が冷えすぎない程度に設定し、体感温度を下げておきましょう。

食材や栄養素については、ビタミンB群、特に糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が夏バテ予防には有効です。ビタミンB1はエネルギー源の糖質をどんどん燃やしてくれる栄養素で、代表的な食材は豚肉、うなぎなど。ですから、『土用の丑の日』にうなぎを食べるのは理にかなっているんですね。暑いときに熱いものをふうふうしながら食べたり飲んだりしてがっつりと汗をかくのも気持ちが良いものですよ」

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"臭いおなら"を生む原因はドカ食い

Q:40代女性です。恥ずかしくて誰にも相談したことがないのですが、子どもの頃から他の人よりおならがたくさん出る気がします。最近ではにおいにも変化があり、硫黄のような強烈なにおいが出ることもあるので困っています。会社や電車などでは特に気をつけているのですが、おならを我慢するのは体に良くないのでしょうか? また、"良いおなら" と "悪いおなら" を判別する方法はありますか? 食生活などで気をつけること、病院で検査を受けるタイミングなども知りたいです。

―― なかなか相談しにくいお悩みですね。

「便と一緒に出てしまえばいいのですが、そうでないときににおいのきついおならが出てしまうのはお困りかもしれませんね。しかしおならは出るものです。もともと腸管ガスは腸内細菌によっていろいろな変化を受けて発生します。腸管ガスのほとんどは腸管に吸収されてしまいますが、その一部が吸収されずにお尻から出るのがおなら。余分なガスは腸管からどんどん排除しなければいけないものなので、我慢せずに出したほうがよいです。

においの変化については、この方が気にしているような硫黄のにおいは、硫黄を含んだ食材が腸で腐敗したためではないかと思います。硫黄を含んだものを多く取ったときには、"硫黄のような強烈なにおい" がします」

―― 硫黄を含んだ食材とは、どんなものですか。

「香りの強いネギ、ニラ、ニンニクなどのほか、蛋白質にも硫黄が含まれています。蛋白質は大事な栄養素ですが、多く摂ってしまうと硫黄のにおいが強くなります。逆に、おならで連想されやすいイモ類は硫黄が多くなく、食物繊維を多く含んだ穀物。食物繊維も腸内細菌によって分解され、ガスが発生しますが、水素や二酸化炭素がメインのガスなので無臭です。あまり臭いおならと認識することはないでしょう」

―― 女性の場合、便秘気味だったりすることも関係するのでしょうか。

「便秘は良くないですね。普通に食事をして、腸内細菌の中でも善玉菌が働いて出るガスは、多くは無臭の "良いおなら" 。悪玉菌がつくり出すガスは臭いおならで、普段嗅ぎ慣れていない "悪いおなら" です。

腸内で悪玉菌が非常に活発になるのは、悪玉菌の餌になるようなもの――蛋白質もそうですが、一番は脂肪の取りすぎです。本来、蛋白質も脂肪も大腸に運ばれてきたときにはすでに消化されているはずなのですが、そこまでに消化が不十分だと悪玉菌の餌となって腐敗臭を出します。便秘となればそこに長く停滞するのでガスの量も増えるし、腐敗も進んでしまいます」

――食習慣で気をつけることはありますか。また、診察を受けたほうがいいのはどんなときでしょうか。

「ドカ食いは、十分に消化されてないものが大量に小腸から大腸まで運ばれてしまい、"臭いおなら" "悪いおなら" を生む原因になります。また、かき込んでよく噛まないような食べ方をすると、食べ物と一緒に空気も飲み込んでしまい、ガスがたまりやすくなります。食事中ずっと話しながら食べているような人も、その傾向があるので注意するといいですね。

受診のタイミングとしては、いつもと同じ食生活で、においの出る食材を食べているわけではないのに、においや回数に変化が現れたとき。消化器系の病気が隠れているかもしれません。症状が長く続くようであれば医療機関を受診して検査をしてみてください」

―― 中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

※この記事は中山久徳医師の見解に基づいて作成したものです。

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今回お話を伺った中山先生も出演する「主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)。明日7月4日(木)の放送は、行列のできる足の専門外来の名医が緊急警告する、「足の新常識! 危険なアーチくずれ&死を招く危険な頭痛」を特集。
現代人に急増! 足腰の様々な不調の原因となり、将来歩けなくなる危険もある足の異常「アーチくずれ」とは? 後頭部に起こった痛みを放っておいたため、突然死の危険が?! 突然の激しい頭痛は、1~2週間で死に至る事がある病気の前触れ...? を二本立てでご紹介します。

テレ東プラスでは、今後も皆さんが知りたかった健康情報をお届けしていきます。次回OAもお楽しみに!

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